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2010年1月14日 (木)

塩の値段

1260円と210円。商品展示棚のまん中より上の方、僕が視線を少し落としてちょうどいいあたりにその2つの商品が隣通しに並んでいました。両方とも容量は500グラム、ほぼ同じ大きさの袋詰めパッケージで、2つとも種類は粗塩(あらしお)。料理によく使う種類の塩です。売り場の担当者が、消費者の教育目的で隣通しに並べたのか、面白がってそういう配置にしたのか。高い方の値段は安い方のちょうど6倍です。

そのお店の棚に並べてある同じ500グラムパッケージで、もっとも高いのは1470円。これは土佐の海水を天日だけで塩に結晶させたもの。一番安いと思われるのが、いわゆる食塩とか精製塩とかいわれるもので、食塩だと500グラムが75円、精製塩だと1キログラムで132円(500グラムに換算すると66円)です。値段に20倍の開きがあります。

以前、塩が伝統的な製法によって塩であった長い歴史のあと、1971年から1997年まで塩化ナトリウム(純度の非常に高いものだけ)が塩だという不思議なあるいは消費者にとっては不幸な30数年を経由して、やっと、僕が成人するまでの間慣れ親しんでいた塩も塩として復活してきました。だから、最近の塩のパッケージを見ると、必ず「原材料名」や「栄養(成分)」が表示されていますし、ものによっては製造工程も記載されています。現在は、大まかに分けると、日本の伝統的な製法のもの、塩化ナトリウムを塩と称するもの、ハイブリッドなものの3種類が共存しています。

ここで、「伝統的な製法」とは日本の海水を天日で結晶させるか平釜で煮詰めたもので、マグネシウムやカルシウムやカリウムのようなミネラルが自然に混じっています。従って、塩から甘みや旨みや苦味が伝わってきます。2番目の「塩化ナトリウムを塩と称するもの」とは、かつて一世を風靡した旧専売公社の食卓塩で化学プラント工場で海水から塩化ナトリウムだけを高純度で抽出したもので、ただ塩辛い。3番目の「ハイブリッド型」は、輸入原塩(高純度の塩化ナトリウム)に日本であとで上記ミネラル類を添加して成分調整したもの。ここ10年くらいで、塩とはナトリウム以外にマグネシウムやカルシウムやカリウムのようなミネラル類を含んだものという風に消費者の意識が変わってきたのでそれに後付け対応したものです。だから、栄養(成分)表示と値札だけを見つめていると、ミネラル類がいっぱい入っているのに安いなあ、きっと優れものに違いないという評価を下すかもしれません。しかし、伝統的なものの成分表示に親しんでいると、妙に旨みに関連したミネラルだけが多すぎるような人為的な操作の匂いのする商品を嗅ぎわけることはできると思います。

以下に、参考までに、伝統的な製法でつくられたいくつかの塩の原材料やミネラル構成をまとめてみました。

A

1970年以降に生まれた人は、親がよほど塩や味噌や醤油に気をつけていたような場合を除き、ただ塩辛いだけの「塩化ナトリウム塩」を塩だと思って育ってきたことになります。

そういう背景がわかると、なぜ塩の値段に20倍もの開きがあるのか納得できます。

塩の値段も、付加価値を持った商品に消費者がどれだけプレミアム(追加料金)を支払う覚悟があるのか、そういう付加価値商品をどれだけサポート(買い支え)するのかという「わがままな消費者」で触れたテーマのちょっとした変奏です。

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