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2010年3月 6日 (土)

いただいたコメントへの返事

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僕のブログ記事「酒粕(さけかす)」に対して以下のコメントをいただきました。

『新世紀のビッグブラザーへ blog
続 日本の輸入の真の姿
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10473954586.html#cbox
浅川芳裕氏の「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」(講談社)の本の紹介と共にいろいろと書いてます。
そちらにコメントを戴けると幸甚です。
投稿: 宮田 | 2010年3月 5日 (金) 17時48分』

コメントをいただきありがとうございました。酒粕に関するコメント内容ではないので、僕の返事は「酒粕(さけかす)」へのコメント欄ではなく、別のブログ記事の形でお伝えしたいと思います。

申し訳ないですが、手元にその本もないしまたそれに丁寧に目を通す時間もないので、これはその本全体に関するコメントや感想ではありません。最初にそれをお断りしておきます。ただし、貴コメントで言及されておられるブログ、およびこの書物についてお書きになっている他のブログ(この本のタイトルで検索したら最初のページの上半分に現われる2~3のもの)で引用されているこの書物の2種類のデータについては感想を述べさせていただきます。わざわざ引用されているので引用者は「意味のある重要なデータ」だと考えているという理解です。そういうデータや数字は原著書で確認してからにするのが礼儀だと思いますが、今は出来ないので、そのままそうしたブログから借用(コピー&ペースト)します。

そのデータがそれぞれのブログでなぜ引用されているかについては当該ブログをご参照ください。

最初のデータは、
『携帯の方のために数字を並べると(左から、輸入額(億ドル)、国民一人当たり輸入額(ドル)、食糧輸入対GDP比率(%))、
1位:アメリカ 747 247 0.54%  
2位:ドイツ 703 855 2.12% 
3位:イギリス 535 886 1.91%  
4位:日本 460 360 1.05%  
5位:フランス 445 721 1.72% 
新世紀のビッグブラザーへ blog)』。

もうひとつは、
ネギ生産高は世界第1位だそうです。ほうれん草は第3位、ミカンは4位。キャベツは5位。イチゴは6位。(芋仁随想録)』です。

食料自給率や穀物自給率という数字の意味は、その国の国民が自国の食料や穀物でどこまで飢えをしのげるかです。各国でよく使われるのは、日本でよく使われる(カロリーベースの)食料自給率ではなく、穀物自給率で、つまりその国のヒトや家畜の食べる穀物の国内自給率のことです。データがとりやすく、国別に比較がしやすいというのがそれがよく使われる理由のひとつです。カロリーベースの食料自給率という指標は、調査対象として食べもの(食材)のあらゆる部分(コメ、畜産物、油脂類、小麦、トウモロコシ、砂糖類、魚介類、野菜、大豆、果実、その他)をカバーするのでデータの収集が大変で、そういう意味であまり人気がありません。しかし、僕は、カロリーベースの食料自給率は、この数十年でとても欧米化され、冷蔵庫に不要食材や不要食品のあふれているような場面を含む日本の食料事情の総体を見るためには、結果としては、よく考えられた指標だと考えており、この2つの指標を同時に見ることによって、僕たちは日本の食の状況をより客観的に把握できると思っています。

不満ではあるけれども生き延びるのに必要な食べものというものについて、まず考えてみます。

人間にとって基本的な食べものは穀物で、生存のためにはこれがいちばんの基礎となります。だから、人類は地域別に「地産地消」穀物を育ててきました。アジアの地産地消穀物がコメ(ご飯)であり、中東からヨーロッパの地産地消穀物が小麦(パン)であり、南北アメリカの地産地消穀物がトウモロコシ(パン)です。これにあと、たんぱく質と塩でもあればまあなんとか生きていける。ヒトも穀物を食べるし、家畜も牧草と穀物飼料があれば生きていける。その家畜は牛乳やチーズを生み出し、そしてヒトの食べる肉となる。穀物自給率が重要視されるもうひとつのより大切な理由がこれです。

日本人は、「ご飯(コメ)と魚と味噌汁と漬物、そして日本酒」があればなんとか生きていけるし(肉がないと嫌だという方もいらっしゃると思いますが、そこは少々我慢していただいて)、ヨーロッパのある国では「パン(小麦)とジャガイモ、ハムと酢キャベツ、そしてビール」があれば不満ではあるけれど飢えはしのげるし、ヨーロッパの別の国では、「パン(小麦)にフィッシュアンドチップス、そしてビター」があればまあなんとかなるし、アジアのある国では、「ご飯(コメ)と魚の煮物とそのスープと、地の酒」があれば生活していけます。

最初のデータ(農産物輸入額と農産物輸入対GDP比率)に行く前に、世界の穀物自給率を確認します。OECD諸国と人口が1億人以上の37カ国を対象にしたデータですが(2003年)、オーストラリアを先頭に、100%以上の穀物自給率を持っている国は、フランス、カナダ、ハンガリー、米国、スウェーデン、フィンランド、パキスタン、デンマーク、スロバキア、ドイツ。中国と英国とロシアが99%台。日本と韓国は27~28%でそれぞれ34位と33位。

さて、農産物(引用された2007年のデータもそうだと思いますが、ここでの農産物は畜産物も含んだ農産物のことです)の輸入額ですが、農業に力を入れている国も多いので、農産物の輸入額と輸出額の両方を同時に眺めた方がより正確な状況がつかめると思います。引用されていた5カ国について、その両方を併記し、ネット(差額)としての農産物輸入額と対GDP比率を比べてみます(2006年)。

農産物自給率という点でひどい状態なのが、この5カ国のなかでは、日本とイギリス。とくに日本は輸出のほとんどない全くの農産物輸入国です。

輸入額と輸出額の単位:億ドル 農産物輸入額(2006) 農産物輸出額(2006) ネット輸入額(輸入額-輸出額)(2006) ネット輸入額対GDP比率(2006)    
アメリカ 676 714 -38 -0.03%  輸出国  
ドイツ 577 474 103 0.36%  純輸入は少ない
イギリス 458 196 262 1.91%  輸入国  
日本 423 20 403 0.92%  全くの輸入国
フランス 373 504 -131 -0.58%  輸出国  
             

  (註)2006年の状況を主要品目別に見ると、日本は「小麦も
     トウモロコシも大豆も肉類」も主要輸入国だが、アメリカ、ドイツ、    
     イギリス、フランスは「肉類」の主要輸入国ではあっても穀物の    
     輸入国ではないか、あるいは輸入はわずか(ただし、ドイツは    
     「大豆」の輸入が第4位、日本の大豆輸入は第2位)    

次に、『ネギ生産高は世界第1位だそうです。ほうれん草は第3位、ミカンは4位。キャベツは5位。イチゴは6位。(芋仁随想録)』についてですが、ここでの趣旨はこのデータをどう解釈するかということです。

ひとつの解釈は、「日本の農産物生産も捨てたものじゃない。日本は農業大国だよ。」で、それはそれでひとつの事実です。

もうひとつの解釈は「日本の食糧事情は依然として危ない。穀物自給率、食料自給率は低いままなのでこのままではやばい。」というものです。

さきほど『人間にとって基本的な食べものは穀物で、生存のためにはこれがいちばんの基礎となります。だから、人類は地域別に「地産地消」穀物を育ててきました。・・・(中略)・・・日本人は、「ご飯(コメ)と魚と味噌汁と漬物、そして日本酒」があればなんとか生きていけるし(肉がないと嫌だという方もいらっしゃると思いますが、そこは少々我慢していただいて)、ヨーロッパのある国では「パン(小麦)とジャガイモ、ハムと酢キャベツ、そしてビール」があれば不満ではあるけれど飢えはしのげるし・・・』と書きましたが、「ネギとほうれん草とミカンとキャベツとイチゴ」はヒトにとっても家畜にとっても主食ではなく、副食ないしおやつ的食材なので、これらをおなかいっぱい食べても、カロリーのあるものを食べて生きるという食の基本欲求は満たせません。カロリーベースの食料自給率という指標の意味はここにあります。

仮に、ネギとほうれん草とキャベツがあれば俺は生きて見せるという豪の方がいらしたとして、生でそのまま食べてもおいしくないでしょうから、塩をかけたり、塩でゆでたり、植物油でいためたり、味付けに醤油や味噌を絡めたりすると思います。塩はスーパーなどの売れ筋はほとんどが輸入品(輸入原塩にミネラルなどを日本で添加したもの)だし、醤油や味噌の原料の大豆もその自給率は5.5%でほとんどが輸入されています。

僕たちは、コメのご飯も、小麦で作ったパンもうどんもパスタも、肉も野菜も食べますが、小麦は消費量の87%が輸入だし、牛や豚や鶏のエサ(飼料)の大部分は輸入された穀物(たとえばトウモロコシ)ないしは輸入された穀物から作られたもの(たとえば大豆の油かす)です。

野菜や果物は、穀物に比べて値段も高いので、それらに注目した生産額表示だと日本はそれなりの農業大国になるかもしれません。しかし、コメを除く穀物や家畜の肉や鶏の卵、そして油脂類(炒め物やフライやトンカツの植物油)の自給率は低く、それから最近は魚介類も自給率が60%くらいなので、いわゆる主食系の食材を中心に見ると日本が農業大国とは僕にはとても思えません。あいかわらず「やばい」状況がそばに潜んでいます。高級車や高級家電や高級鉄鋼版といった金額的な付加価値の高い製品を開発・生産する工業製品のめざす方向と付加価値野菜や付加価値果物の生産がめざす方向は重なるかもしれませんが、基礎的な熱量のある食べものをできるだけ自前で確保するということが目的の穀物自給率・食料自給率上昇とはめざす方向が異なっているようです。日本の農業全般の課題領域は「食料・農業・農村」という表現にうまく要約されていますが、課題の解決のためには両方の視座で物事を進めることが必要なので、とても厄介であろうことは理解しているつもりです。

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