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2010年3月19日 (金)

白書用語の私的な整理

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すこしだけ、農業関連の用語というか考え方の交通整理です。

農林水産省の白書は「食料・農業・農村白書」(農林水産省 編)という名前で、どなたが考えたのか知りませんが「食料・農業・農村」と課題領域を並列に配置したところが僕は気に入っています。ないものねだりをすると、その中ではビジネスの匂いが希薄なので、ビジネスという視点を加えて僕自身のために簡単にまとめ直してみようと思います。

以前目を通した本やごく最近読んだ本の面白かった表現を借用、といっても正確な引用ではなく、この表現形式自体のチョサクケンがどなたにあるのかわかりませんが、ともかく以下に引用風に羅列してみると、

『「農家」栄えて、「農業」滅ぶ』
『「農協」栄えて、「農業」滅ぶ』
『「消費者」栄えて、「農業」滅ぶ』
『「農林水産省」栄えて、「農業」滅ぶ』
『「食料自給率」栄えて、「農業」滅ぶ』

となります。このアフォリズム風の表現は、それぞれに面白くそれぞれに正鵠(せいこく)を得ているので、それぞれにそのまま引きずられるとますます全体像が見えなくなります。

まず、農業を基本農業と付加価値農業に分け、これにビジネスという言葉を付け加えると、農業ビジネスは、基本農業ビジネスと付加価値農業ビジネスに分かれます。

基本農業ビジネスは、ざっくりとまとめると、「コメ」を軸とした農業ビジネスで、他の産業にたとえたらガスや電気といった公共ビジネスです。食糧安全保障や穀物自給率・食料自給率といった議論がほとんどゆがみなしに妥当する領域です。ガスや電気事業は私企業によって運営されていますが公共料金というものがあり、また政府規制や政府支援・政府補助も受けます。農村(農業)の多面的機能は、国土インフラとして、ここに入ります。

もうひとつは、付加価値農業ビジネスで、これは他の産業と同じで、より多くの付加価値(売上と利益)を求めることが目的で、したがってより多くの付加価値を生み出す、差別化特性のある農産物の開発と生産と販売に努力します。付加価値「野菜」や付加価値のある「果物」、つまりアスパラガス、トマト、メロン、イチゴなどがこの領域の典型的な商品で、ここに農家直販の「おいしい無農薬玄米」などを付け加えることもできます。

この2つに白書の「食料」と「農業」と「農村」をマッピングしてみると以下のようになります。

基本農業ビジネス: 「食料」(コメなどの穀物生産と畜産)、「農村」(このなかには【1】農村における多面的機能、つまり国土保全や水源の涵養や自然環境の保全などと、【2】SOHOとしての農業、つまり大規模家庭菜園的な農業を営む農家が含まれる、ただし【2】は多面的機能への貢献が明らかな場合)

付加価値農業ビジネス: 「農業」(農業は農産物を商品とした事業・ビジネスという意味での農業であり、個人事業であるか集落営農であるか農業法人・農業生産法人であるかは問わない)

付加価値農業ビジネスから基本農業ビジネスを見たら、利害が一致しているわけではない農林水産省と農協がセットになって日本の農業を停滞させている集団に見え、逆の側から見れば、付加価値農業ビジネスは、日本の食料基盤や農村の将来について配慮のない連中、利益が出ているうちはいいが利益が出なくなれば農業や農地をあっさりと捨ててしまう連中ということになっているようです。

日本の「農業全体」を考えるときには、この両方をでこぼこと同時に追い求めることが日本らしい(日本ユニークともいえますが)農業だと考えています。うまくいけば、近隣にコメまで輸出できるようになるかもしれませんし、似たような環境を持つ他の国の参考になるかもしれません。

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