米粉アプリケーション
一時期、台北(台湾)に出張する機会が年に2回程度あって、それが数年間続きました。その数年間の最初の頃は、台北の主要市街道路は小型オートバイの天国で、それが次第に中古の4輪乗用車に置き換わり、次に真新しい日本製セダンが目立ちはじめ、最後の辺りは、お決まりの大型高級ドイツ車の登場です。台湾が世界のハイテク製品製造基地へと変貌を遂げつつある時期でした。その後、同じような道路上の光景が上海や北京でも繰り返されました。
台北では仕事がらみでない時の昼食には焼きビーフンをよく食べました。汁物仕立てのビーフンは好みではなく、注文するのはもっぱら野菜やエビなどと一緒に炒めた焼きビーフンです。
中国の食文化では米(うるち米)をつかったヌードルは「粉」、小麦粉を使ったヌードルは「麺」なので、ビーフン(米粉)は麺類の一種ではありません。生産量や消費量の多寡は別にして、麺と粉はそれぞれ独立したヌードルです。中国人は食いしん坊なので、福建省や海をはさんだ向かい側の台湾で「米粉」文化を育てたのか、中国の一般的なうるち米は炊いてもそれほどおいしくないので「米粉」加工食品が一部の地域で必要だったのか、いろいろと勝手な想像が働きます。
一方、日本のお米は炊けばそのままでおいしいので、お米を使った主食系加工食品というのが、小麦とは違って、発達してこなかったのかもしれません。僕たちがいわゆるご飯として食べる「うるち米」からお餅用の「もち米」にまたがって考えても、準主食だとお餅(もち米)、おやつ系だと団子(だんご:うるち米ともち米)や煎餅(せんべい:うるち米ともち米)くらいしか思いつきません。
小麦粉を使った主食となることのできる食べものは、ヨーロッパ系のパンやインド系のパン、中華系の麺やイタリア系のパスタ、日本だとうどん、素麺(そうめん)そしてラーメン(ラーメンは独自の日本食)など多岐にわたります。現在、米粉の活用ということで、米粉(の入った)パン、米粉で作った麺やパスタやピザ、米粉を使ったスウィーツなどの商品や試作品がどんどん開発されていて、それはそれで穀物自給率を高めるためのうれしい動きですが、大きなカテゴリーとしてはやはり小麦粉製品の「代替品」です。
米粉の入ったパンにはそれなりに魅力的な味と食感と雰囲気があります(「日本風味のパン」)。あるところからいただいた米粉麺(タピオカ入り)を、先日、配偶者が利尻昆布と鰹節のダシでうどん仕立てにしたのを食べましたが、腰のあるつるっとした食感で面白い味でした。料理の過程をそばで眺めていたのですが、茹(ゆ)でるときに、小麦粉系の麺と違って、鍋の底にとろんと沈んでしまってお湯がにごる感じがあり、これは米粉のせいなのかそれともタピオカが原因なのかよくわかりませんが、確か団子(だんご)はふわっと浮き上がってきたところをすくい取ったという子どもの頃の記憶があるので、タピオカが「つるっ」とした食感と同時に、湯の中での麺全体の動きを「どろっ」としたものにしてしまったのかもしれません。水にさらすとすっきりとした茹で麺にもどりました。
基本製品や基本素材(たとえばWindows)を駆使して出来上がった応用製品を俗にアプリケーション(たとえば会計ソフト)と呼び、ソフトウェアの世界ではとくにおなじみの用語です。米粉中心の、小麦粉の置き換えでないような主食的なアプリケーション食品にどんなものがあるのかをぼんやりと考えていますが、ぼんやりと夢想しているだけでは候補は見えてきません。大人の舌が喜ぶような上品なものがひらめくといいのですが。
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