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2010年4月23日 (金)

火山灰と日本の穀物自給率

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しっかりとした定量的な分析や今後の厳密な影響予測は専門家の手にゆだねるとして、今回のアイスランド南部の火山爆発による火山灰が、かりに寒い夏などの異常気象をヨーロッパやロシアを含むヨーロッパ近隣諸国に引き起こした場合、どんな悪影響が今年の穀物生産や穀物在庫に出るのかを、僕なりに考えてみたいと思いました。その結果、日本で現在進行中のお米プロジェクト(米粉を活用した食材・食品の開発やお米給食、飼料米などの増産などの諸活動をここではそう総称します)にどういう定性的なプラスあるいはマイナスの影響が出るかその一部だけでも個人的に手がかりをつかんでおこうというわけです。ヨーロッパやロシアなどに冷夏などが発生せず、したがって穀物生産に変化がない場合は、この議論は、コンピュータの記憶域ではありませんが、”RESET CLEAR” です。

先月末、つまり今回の火山噴火の前に発表された「海外食糧需給レポート2009」(農林水産省)によれば、2009年実績を踏まえた上での2010年の穀物需給の見込みは以下のように要約されています。(これは、米国農務省など諸機関のデータを援用しているので、世界のほぼ共通した見方だと考えていいと思います。)

『2009/10年度の世界の穀物等の需給は、穀物、油糧種子ともに生産量が消費量を上回り、期末在庫量が増加。
小麦: 生産量は、昨年を下回るものの2年連続で消費量を上回り、需給は緩和。
とうもろこし: 主産国の米国では史上最高の単収、生産量。一方、バイオエタノール原料用等の需要の増加により需給は引き締まる。
米: インドの干ばつやフィリピンの台風による減産から需給は引き締まる。
大豆: 米国、アルゼンチン、ブラジルともに生育期の好天のため、史上最高の生産量となり、需給は緩和。』

ヨーロッパやロシアやヨーロッパ近隣諸国で生産量の多い穀物は何かを確認するために、世界の生産量上位20カ国を小麦とトウモロコシと大豆に関して取り出し、その中に含まれる当該地域国の生産量合計と上位20カ国の総生産量を比べてみると(FAOSTAT 2007)、結果は小麦が33.1%、トウモロコシが6.7%、大豆が1.0%。したがって、ここでの議論は小麦だけを対象とします。(ちなみに、分母を上位20カ国の生産量とすると、トウモロコシは米国と中国とブラジルの上位3カ国合計で76.2%、大豆は米国とブラジルとアルゼンチンの上位3カ国合計で81.9%を占めます。)

念のために小麦の生産量上位20カ国を並べると、「中国、インド、米国、ロシア、フランス、パキスタン、ドイツ、カナダ、トルコ、アルゼンチン、カザフスタン、イラン、ウクライナ、英国、オーストラリア、ポーランド、エジプト、イタリア、スペイン、ウズベキスタン」の順番です。

EU(27カ国)とロシアとウクライナの今年の小麦生産量予測は、それぞれ1億3830万トンと6170万トンと2050万トン、合計は2億2050万トン。世界全体の小麦生産量予測が6億7610万トンなので、その生産量割合は32.6%。(「海外食糧需給レポート2009」より)

こういう生産状況と消費動向を勘案すると、世界の小麦の期末在庫量は1億9560万トン、期末在庫率は30.4%と想定されています。つまり、小麦の供給が停止するといった緊急事態になっても3.6ヶ月分くらいの消費量は世界のどこかに在庫されているということです。なお、FAO(国連食糧農業機関)では世界の穀物全体の安全在庫水準の下限を17~18%(2か月分少々)としているので、その比率を小麦に当てはめると、小麦は、在庫率で12.4~13.4%、月数に直すと1.5か月分くらいの安全在庫水準を超えた余裕を持っています。

もし、寒い夏・冷たい夏といった事態が生じた場合に小麦の生産量にどんな悪影響があるのか。過去の調査データはいろいろとあるのでしょうが、身近なデータを使用します。2009年(平成21年)の北海道産小麦の収穫量は、7月中旬以降の冷たい長雨などの影響で、予定収穫数量の約70%にとどまりました。つまり、収穫量が予定に対して30%程度減少するというのは天候不順の場合には異常な数値ではないということなので、その比率を使ってみます。

かりに、アイスランド火山灰の影響が寒い夏や冷たい夏をもたらして、EU(27カ国)とロシアとウクライナの小麦予定収穫量を30%減らしたらどうなるか。減少幅は、2億2050万トンの30%なので、6615万トン。その場合、世界の小麦期末在庫率は30.4%から20.1%へと10ポイントあまり下落し、FAOガイドラインの安全在庫水準下限である17~18%に結構接近します。2011年に収穫量がもとに戻れば問題はないのですが、こういう状況になると、その状況を利用して稼ごうとする投機筋の人たちが、通常は現われるので、小麦価格がどれだけ急な角度かはわかりませんが上昇トレンドに変化するだろうと思います。2008年に穀物価格が急騰しましたが、2007年から2008年にかけて穀物の平均期末在庫率は17%をわずかに割り込んでいました。

さて、こうなった場合の日本への影響です。2008年ほどではないにせよ、小麦関連食材・食品は小麦価格上昇による利益圧迫などの悪影響を受けるでしょうが、「お米プロジェクト」には総じて順風だと思われます。この記事の最初にお米プロジェクトとは、米粉を活用した食材・食品の開発やお米給食、飼料米などの増産などの現在進行中の諸活動の総称だと書きましたが、その進行速度が加速されるかもしれません。日本の中期の穀物自給率向上には有利に働きそうです。

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