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2010年5月11日 (火)

食のアンケートとその解釈

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アンケートというのはたいていそういう傾向を示すと思いますが、その傾向とはとくに家庭での食べ物や食事に関する一般的な調査の場合に顕著な様子です。そういう傾向とは「たてまえ」や「そうすべき、そうあるべき」と考えていることに丸をつけてしまう心理の傾斜のことです。「べき」に丸をつけるので、答えは当然、「毎日の実態」からは、他者の眼を意識したより格好のいい方向に乖離(かいり)することになります。だから、アンケート結果だけに基づくと意識と実態が奇妙に組み合わさった家庭像が浮かび上がることもありそうです。

ベテラン調査専門家の意見に耳を傾けると、「生活者がアンケートやインタビューに回答する『言っていること』と実際に生活場面で『やっていること』との間には無視できないほどの乖離があり、それが年々大きくなってきているという事実がある。『日頃どうしているか』『どう思っているか』を尋ねたら、『日頃どうすべきだと考えているか』『日頃どうすべきだと思っているか』の建前を回答されてしまうと考えた方がいいだろう。」(岩村暢子著「変わる家族 変わる食卓」)。

あるいは「私たちは1週間(食卓調査の)データをとるが、前半3日目くらいまでは、眉に唾しながら見る。なぜなら、長年調査をしてきて、1週間の前半と後半では大きな差があることを知っているからだ。同じ主婦の作る食卓とは思えないこともある。」(岩村暢子著「家族の勝手でしょ!」)つまり、1日や2日ではなく1週間続けて調査をすると、調査期間の前半は「べき」料理と「べき」食卓が登場しますが、後半は疲れてきて地が出るので、そこから初めて「日々の実態」を反映した料理と食卓の光景が見えてくるということのようです。

アンケート調査はたいていは一過性、その場限りのことが多いので、「実態」と「たてまえ」が混在し、したがって現実にはない不思議な食卓や家計のプロフィールできあがることも多いと思いますが、定期的に同じ調査を継続する場合は「たてまえ」ないしは「べき」は価値の方向なので定性的な傾向変化は捉えられます。

「-東京近郊の子どもを持つ母親400人に聞く- 食生活の実態と“食”への意識」と題された主婦意識調査報告者が農林中央金庫から発表されています(農林中央金庫ホームページ)。説明に「首都圏の子どもを持つ30~50代の主婦400名を対象に実施した、家庭における「食」の実態・意識調査です」とあり、調査対象が上記の「家族の勝手でしょ!」と地域的にも年齢的にも重なるので興味を持ちました。(当該調査の調査期間は2010年2月~3月で、同じ調査が2003年に最初に実施されているので今回は2回目)

調査内容は「食生活の実態」「“食”に関する意識」「“食育”に関する意識と実態」「“日本の農業”に関する意識と実態」の4つから構成されています。

「実態」に関する質問には正直に回答し、「意識」に関する質問には「たてまえ」「べき」で答えていると考えて、特性のはっきりしている項目や共有度の高い(おおぜいの主婦がそうだと思う)項目を中心に全体を眺めた場合にどんな平均的な主婦像(大雑把に平均年齢40歳台前半)が浮かんでくるか興味があります。こういうやり方は現実をいくぶん戯画化することになりますが、そこはご容赦ください。

◆ 『生鮮食品』や『加工食品』を選ぶときには75%~80%の主婦が『賞味期限・消費期限』を非常に気にしていますが、『生鮮食品』購入時は『原産地』にはそれなりに気をつけているものの(61%の主婦)、価格に対する配慮が高い主婦の方が多く(62%)、『加工食品』購入時にも、『添加物』や『材料の原産地』については価格ほどは気にしていないようです(価格を気にする主婦の割合は51%、添加物と材料の原産地を気にする主婦はそれぞれ43%と36%)(一応「実態」を表しているようですが、こういう項目には「たてまえ」「べき」が当然忍び込みます。どれだけ「たてまえ」「べき」に傾斜しているかはここだけではわかりません。)。

◆ しかし、食に関する「意識」アンケートでは、95%の主婦が『食の安全』に関心があり、食の安全の具体的な側面としては『食品添加物』に84%の方が、『輸入食品』に73%の方が関心を持っています(「意識」「たてまえ」)。

◆ 『だし』や『ドレッシング』など味の基礎部分は市販品を『購入』(「実態」)。そして、自分で作ることの多い料理は『みそ汁』『きんぴらごぼう』『おにぎり』など(「実態」)。つまり『みそ汁』の『だし』はほかの誰かの作った出来合いのものを利用、ということになります。『我が家の味』として自慢できる料理のトップが『餃子』(「実態」)。皮から作っているのでしょうか?僕の家庭でもときどき餃子を作りますが、たいていは水餃子で、海鮮材料と相性がいいのがその理由ですが、どんな種類の『我が家の味』の『餃子』なのか興味が湧きます。

◆ 70%の主婦が、購入して使い切れなかったり食べ残したりして、食材や食品を捨てており(「実態」)、そしてほぼ全員が『もったいない』と感じています(「意識」「たてまえ」)。ある食関係の本に「永久凍土と化した冷凍庫」という一節がありましたが、そういう不良在庫のいっぱい詰まった冷蔵庫の状況を思い浮かべてしまいます。

◆ 『出来合いの惣菜』は80%の人が『すぐ食べられて便利』なので購入すると答えています(「実態」)。これは80%の主婦が『出来合いの惣菜』を買っているということではないのですが、上記の捨てる実態を考慮すると、そう考えてもおかしくないのかもしれません。

◆ 農林水産省の発表する日本の『食料自給率』(カロリーベース)は40%ですが、これを知っている主婦は4人に1人、つまり4人に3人はこのことをよく知らない。しかし、その同じ主婦の多くが、望ましい『食料自給率』として『3分の2くらい』を選択しているのは、こういうことは他でもよく見かけますが、やはり奇妙な光景です。

福岡都市科学研究所の「農産物消費者の4類型」(「福岡市民の食生活に関するアンケート」2003年)によれば、「分裂型消費者層」、つまり「意識と行動が分離しており、アンケート調査等では「食の安全が一番」「地産地消が大切」と答えるが、実際の消費行動ではスーパーの外国産特売品に飛びつく層」が全体の半数以上を占めています。

この調査の第1回目が実施されたのが上記の「4類型」と同じ2003年、それ以降に食の安全に関する国内外の事件があったので、2003年の結果と2010年の結果を比べてみると、安全面重視のシフトが当然見られますが、「言っていること」と「やっていること」との距離はあいかわらず大きいようです。

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