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2010年6月16日 (水)

魅力的な農家(その2)

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この段階で難しいのは、2重の意味で直接販売と市場開拓です。営業担当者がいるわけではないので生産作業をしながら営業・マーケティングのための時間を作ることが最初の難しさです。「二兎追うものは一兎をも得ず」になる危険性も高いので、生産物の流通・販売はどこかに委託して生産だけに集中する農家もおおぜいいます。ですから、奥さんが営業・マーケティングの担当に転身する場合もあるし、ウェブサイトを作ってそれに営業・マーケティング機能をまかせる場合もあります。そうすれば、体はきついですが夜にはそのための時間を都合できます。しかしその作業は集中と専門知識を必要とするので、収支が合えば、そのために人を雇うことになるかもしれません。もう一つの難しさは、農産物の付加価値が明確で洗練されていてそれに見合った値札を商品につけてある場合は、そしてそれは当然のビジネス戦略ですが、その価値に対して喜んで財布の紐を開くお客はかならずしも近所にいるとは限らないということです。つまり簡単に「地産地消」というわけにはいかないのです。

当該お米農家は、そのお米農家の作っているような付加価値米を歓迎する(つまり品質を評価してその対価を支払う)人たちの割合は日本人の10%程度と考えているようです。

この数字は、僕がときどき参照する「農産物消費者の4類型」(福岡都市科学研究所、2003年)の数字と符合します。その消費者類型によると、「農業や農産物の価値がわかり、その価値にお金を支払う人たち」の割合は5.4%、「(価値の理解は5.4%層にはかなわないけれども)食の安全性に強い関心を持ち、そのことにたいしてお金を支払う人たち」の割合は16.5%、両方を合計すれば21.9%。残りは、上品にいえば、「農産物の付加価値に対して追加支払いなどしたくないという人たちと、食べものに全く関心のない人たち」です。上品でなくいえば「食べものの選択基準は値段の安さにつきると考えている人たちと、食べものなど口に入れば何でもよいと考えている人たち」です。保守的に考えて「5.4%」と「16.5%の半分」が農産物の付加価値評価層だとすると、13.7%なので約10%です。

こういう人たちが歩いていける範囲や車ですぐの場所におおぜいいるといいのですが、そういうことは普通はないので、だから、ターゲット顧客セグメントは明確だとしても、個々の顧客は地理的に分散することが多くなります。そうなると、市場開拓・地域開拓や流通チャネルの開拓には現地に出向くことが不可欠ですが、受注・販売作業の中心は、顧客の年齢構成を考えると、ウェブやインターネットや紙媒体の通信販売を通したものになり、またマーケティングもそれに応じたものになります。

両方の農家のマーケティングで僕がお気に入りなのは、ひとつは、リピーター顧客に定期的に届く手づくりのダイレクトメールです。紙媒体の送料は安くはないしコピーや封筒詰めなどにも手数がかかって大変ですが、内容は時節の挨拶、商品案内と季節ごとの食べもの通信的な記事を組み合わせたものなので、届けばかならず眼を通すことにしています。もうひとつは、ブログで、野菜農家の場合はご主人の手によるビジネスや生活の報告とエッセー風の雑感、お米農家の場合は販促担当従業員による日々の農作業紹介が中心です。

両方の農家とも、商品が口コミで評判を呼んで食べもの関連の雑誌媒体に取り上げられることも多いようです。さもありなん。

(「魅力的な農家」の終わり)

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