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2010年6月 2日 (水)

草をとる、水をまく

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我が家ではもっぱら玄米食なので、農薬を使っていないお米農家から玄米を買っていますが、その農家では、我が家が買い求めるものよりも25%ほど高い値段で有機アイガモ農法のお米も作っています。アイガモ農法米は、人気商品ですぐに売り切れる様子です。

アイガモ農法は、田んぼにアイガモを放して、除草剤や殺虫剤を使うかわりにアイガモに草取りや虫取りをやってもらう方法ですが、アイガモは泳ぎながら水田をかき回すので、その結果、水田内に酸素が補給され、また水がにごって水温が上昇するので「中耕」(ちゅうこう)の役割も果たしているようです。(註:中耕とは、「固くなった畝(うね)の間の土壌を細かく砕くこと。除草のほか通気性,透水性の増大による根の発育促進,水分保持などの作用がある。3~4週間に1度くらい行うのが普通で,古くは鍬(くわ),万能(まんのう),水田では雁爪(がんづめ),田打車によって行ったが,現在はカルチベーター,小型ハンドトラクターを用いることが多い。」<kotobank.jpより>)

今は鬼籍に入られている農業経済学者の飯沼二郎の著作に「風土と農業」「日本農業の再発見-歴史と風土から」という今から35~40年ほど前に出版された本があります。風土の乾燥状況に応じて、世界の風土を「乾燥」と「湿潤」に分け、西アジアや北アフリカ、インドのパンジャブ地方や中国の華北地方などの乾燥地域の「小麦栽培」を中心とした農業を「保水農業」、東南アジアや東アジアのような湿潤地域の「稲作」を中心とした農業を「除草農業」と分類しています。風土と農業の生態論といった意味ではとても刺激的な分類です。梅棹忠夫の「文明の生態史観」という、東洋と西洋といった慣習的な切り口とは違った新しい座標軸で世界の歴史を捉えようとした本が出版されたのがその数年前なので、この農業に関する二つの本もそういう空気を共有していたのかもしれません。

保水農業が行われるのは乾燥地帯なので基本的に雑草は生えません。従って種を播いたらあとは収穫まで水を与え続ける農業で、広い土地での大規模農業が可能です。一方、除草農業の典型例が稲作で、稲作は除草処理が中心的な業務となります。水田という環境は陸生の雑草がはびこるのを妨げますが、水生のものについては細かい除去作業が必要になってきます。だから、農業の大規模化には保水農業よりも不向きです。「除草農業」は東南アジアや東アジア以外には南欧や旧ソ連南部に見られるようですが、東南アジアや東アジアのような夏の時期の栽培が可能な地域の「除草農業」は、「中耕」という途中の土壌の手入れが不可欠なので、さらに細かく「『中耕』除草農業」と命名されています。

同じお米でも、インドやタイや華南地方と日本とでは栽培方法や種類に結構な違いがありますが、アイガモ農法は、飯沼氏の分類によるところの「『中耕』除草農業」のユニークな実施例ということになりそうです。

文明の生態史観 (中公文庫)

文明の生態史観 (中公文庫)

著者:梅棹 忠夫

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