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2010年8月31日 (火)

穀物自給率がとても低い国の「農産物」輸出(その2)

OECD諸国の中で穀物自給率の非常に低い国の代表が、オランダと日本と韓国で、その穀物自給率はそれぞれ、16%、28%、30%となっています(農林水産省試算 2007年)。ちなみに、同じ資料によれば、フランスの穀物自給率は164%、米国は150%、英国は92%、最近別の方面で話題のギリシャは71%。OECD加盟国ではありませんが、同様に中国が2007年時点では102%、またインドは105%。

その穀物自給率のワースト3に近いオランダと日本と韓国の農産物輸入額と農産物輸出額をみると(FAOSTAT 2007年)、3国の違いが鮮明になってきます。オランダは農産物輸出国(輸出額が輸入額よりも多いという意味)ですが、日本と韓国は輸入国(輸入額が輸出額よりも大きいという意味)です。

       穀物自給率  農産物輸入額  農産物輸出額
オランダ    16%      396億ドル    676億ドル
日本       28%      460億ドル     23億ドル
韓国       30%      149億ドル     26億ドル

農水省や韓国メディアの数字とFAOの数字は、FAOの数字が小さくて一致しませんが、3カ国を見比べるためにFAOの数字(2007年が最新)やFAOの農産物分類をそのまま使います。

さて、輸入農産物と輸出農産物の内容・種類についてです。

米や麦や大豆やトウモロコシのような穀類や豆類、牛肉や鶏肉やチーズのような畜産物や酪農物、トマトやリンゴやイチゴやバナナなどの野菜や果物は僕たちのジョーシキにはまったく違和感のない「農(畜)産物」ですが、FAO(国連食糧農業機関)の定義はもっと広くて、素材としての農産物・畜産物以外に、これも農産物かといった驚きを与えてくれる加工食品や嗜好品も農産物の主要部分です。たとえば、ビール、たとえばタバコ、たとえば菓子類、あるいはカップ麺のような即席麺。素材が農産物でそして食べる物なので、農(畜)産物に分類する以外に説得力のある分類の基準がないのだと思います。で、ちょっと驚いたあと、納得。

各国の農産物の輸入額や輸出額はそういった広い定義で計算されています。輸出入統計の対象になる農産物とは、したがって食べもの全体とプラスα(アルファ)だということになります。タバコなどは一般には食べるものではないのですが、もともとは畑の農産物なので、つまりプラスαの一部です。

以下は当該3国の輸入農産物ベスト9(金額ベース)と輸出農産物ベスト9(金額ベース)です。(韓国は輸出の10番目に唐辛子が登場するのでベスト10まで)

◇ オランダ
◇ 輸入農産物ベスト9   ◇輸出農産物ベスト9
 1.大豆             1.タバコ
 2.大豆粕(かす)       2.チーズ
 3.ココア豆           3.その他の加工食品
 4.小麦             4.ビール
 5.ワイン             5.牛肉
 6.その他の加工食品    6.鶏肉
 7.トウモロコシ        7.家畜用飼草・飼料
 8.牛肉             8.トマト
 9.ヤシ油            9.冷凍ジャガイモ

(註)その他の加工食品とは「スープ、ケチャップ、ソース、酢、具入りパスタ、調味料や香辛料など・・」を指します。日本の場合だと、具入りパスタは「即席麺やカップ麺など」ですし、調味料は、「醤油など」となります。

◇ 日本
◇ 輸入農産物ベスト9     ◇輸出農産物ベスト9
 1.トウモロコシ        1.その他の加工食品(即席麺や醤油)
 2.豚肉             2.タバコ
 3.タバコ             3.菓子類
 4.牛肉             4.ノンアルコール飲料(お茶など)
 5.天然ゴム           5.リンゴ
 6.大豆             6.豚革
 7.小麦             7.小麦粉(即席麺用小麦粉再輸出?)
 8.ワイン             8.日本酒
 9.その他の加工食品    9.家畜用飼草・飼料

◇ 韓国
◇ 輸入農産物ベスト10    ◇輸出農産物ベスト10
 1.トウモロコシ        1.その他の加工食品
 2.豚肉             2.タバコ
 3.小麦             3.砂糖(精製)
 4.天然ゴム           4.蒸留酒・スピリッツ類
 5.牛肉             5.菓子類
 6.その他の加工食品     6.インスタントコーヒー
 7.大豆粕(かす)       7.砂糖菓子類
 8.砂糖(精製前)       8.ノンアルコール飲料
 9.大豆              9.保存野菜(ビン・缶・塩蔵)
 10.牛革            10.胡椒・唐辛子

各国の輸入品にはいかにも農産物というのが多いですが、輸出品はオランダを除き、農産物らしくないともいえる加工食品やお酒が目立ちます。

オランダは、いつの頃かに、穀物という基礎農産物を捨てて(十分な穀物栽培が無理なので諦めて)酪農品・畜産物と、トマトやピーマン・パプリカといった附加価値野菜に集中するという意思決定をしたのでしょう。穀物自給率16%という基盤の上で危い(あやうい)バランスをとるということになりますが(2003年の穀物自給率は25%だったので9%の大幅な下落)、韓国もあるいは似たような方向で今後を模索中なのかもしれません。韓国はお米の生産国(自給国)なので、韓米FTAで韓国のお米にどういう影響が出るのか非常に関心のあるところです。

日本は、瑞穂の国という1500年にわたるお米の生産基盤があるので、穀物に関してはオランダよりもはるかに有利です。この優位性は、マクロの競合優位性と考えてもさしつかえないと思いますが、これを活かし続けない手はない。

これを日本型と名づけると、日本型とはお米以外も含む伝統的な基礎農産物の自給率を高めながら、同時に品質ですっきりと差別化された附加価値農産物でじわりと輸出を考えるということです。基礎農産物の生産維持には、穀物自給率の高い欧米諸国と同レベルの補助金・補償金(という名の税金)を使うことを是とし、「農業の生産性を高めるには競争が必要だ」といった一般論が繰り返すような不必要な競争にさらすべきではない。僕はそう考えています。

附加価値農産物の中には、おいしい果物や高級野菜だけでなく、お金持ち中国人向けの高級ジャポニカ米も含みますが、ある農業者がその商品である農産物を差別化するということは、当然、競合をしっかりと想定しているわけで、農業には競争原理がないという一般的な主張は少なくとも後者には妥当しません。この15年の競合を生き残ってきた新世代の地酒も広い意味で後者の一部です。

これは観光シーズンないしその前後の札幌の話ですが、デパートのたいていは地下1階か地下2階にある果物売り場に、時間があるなら1時間くらい立っていると興味深い光景が見られます。北京語や広東語を大声で話す家族連れや旅行グループが次から次とやってきては、どんどんと果物を買っていきます。実際に買う時にはレジ前で英語のやりとりが聞こえてきたりもします。滞在中のホテルで食べるのでしょう。なかにはイートインのコンビニと勘違いしているのかその場でかじりついている人たちもいます。こんな高価な、と思うようなものにも躊躇なし。ご一行様が立ち去って一息ついている売り場の女性やレジ係りの女の子に聞くと、「どうも、みんな、安くておいしいと言っているようです。次の日にまたいらっしゃる方もいます」。ある程度裕福な中国人旅行者が持つ「日本の果物に対する需要」の光景のひとつです。

<「穀物自給率がとても低い国の『農産物』輸出」の終わり>

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