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2010年9月29日 (水)

難しい農業用語

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「話のついでに云えば、お役人の乱発する珍奇な漢語で一等苦しめられたのは百姓である。田畑が圃場(ほじょう)、根つきが活着(かっちゃく)、桑をやるのが給桑(きゅうそう)・・(略)・・・なにがおもしろくてこのように面妖な漢語を押し付けるのか。いかめしい漢語を鞭がわりにしておどしつければ、百姓は何でもはいはいとお役人の言うことをきく、とでも思っているのだろうか。おかげで本邦でもっとも索漠として味気ない字面の書物は『農業六法』ということになってしまった。」(井上ひさし「自家製・文章読本」)

明治以降の翻訳語には、翻訳者の漢籍の教養が自ずと滲み出しているようなのもあり、僕などにはとてもできないことなので感心することしきりですが、たとえばPhilosophyを哲学としたのは哲理の学のいいで、智を愛するという意味での愛智学と訳すよりは、僕には好ましい。しかし、一部は伝統的な語を援用しながら、一部はその漢字と別の漢字を無理やり組み合わせたようなものもあり、たとえば圃場などという用語はそのひとつだと考えています。

「自家製・文章読本」に出てきた圃場(ほじょう)という熟語の圃(ほ)は、漢和辞典を参照すると「囲いの中を平らにして苗を栽培する菜園。畑。」とあり、長い時間を乗り越えてきた「圃」を使った熟語としては「田圃(でんぽ)」(田畑のこと)や「農圃」(のうほ)があり、難しいけれども「圃場」よりはわかりやすい。

圃場の同意語は、あるいは翻訳前の用語は、英語だとFieldだと思います。野原という意味の単語ですし、田畑という意味ももちます。Fieldという言葉が生まれた国には、まあ「田んぼ」はないので、「(穀物)畑」ということになりますが、たとえば米国だと、ケヴィン・コスナーの主演したフィールド・オブ・ドリームズという野球映画に出てくるトウモロコシ畑を思い浮かべます。日本の農業関係の学者にとっては、圃場(ほじょう)とは農業実験を行うための学内の広い畑のことのようです。

以前、別の記事で「付加価値農産物である野菜の栽培や畜産は仕事の場として若い女性をひきつけるほど農業のイメージを高め、基礎農産物である米の生産は逆に農協のイメージと重なって農業のイメージを押し下げているような感じで、2つの違った農業のイメージ形成力が僕たちの回りで交錯しています」と書きましたが、野菜栽培や畜産の好きな「アグリギャル」はこういう難しい用語にどう対応しているのでしょうか、少し気になります。しかし、そういうややこしい用語は、別のもっとわかりやすい言葉に置き換えることによって、意外にあっけらかんと無視しているのかもしれません。もしそうなら、それはそれですごいことです。こういうところから、もっと普通の農業用語が生まれてくるといいのですが。

自家製 文章読本 (新潮文庫)

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著者:井上 ひさし

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