« 卒論のテーマに「ゆめぴりか」 | トップページ | 札幌の土用干しは9月の初め »

2010年9月22日 (水)

お米のブランド認知とブランド力の持続

卒論のテーマに『ゆめぴりか』」の補遺的な記事です。

商品のブランド力とは、生産者が時間をかけて作りこみ、消費者が時間をかけて納得した、その商品の持つさまざまな附加価値の総体のことで、だから消費者はその附加価値に対してお金を余分に支払うことをあたりまえだと考えます。つまり、ブランド力の差とは取引の世界では、価格の差のことだということになります。

その商品や商品名が広く認知されていることは、ブランドの前提ではありますが、それだけでブランド力が高いとはいえないし、その商品が廉価で使い易いので他の競合商品よりも量的に多く購入されているからといってブランド力が強いわけではありません。

日本各地の代表的なお米のブランド認知や価格(ブランド力の代替指標)に関する2005年の調査と2010年の調査の結果を見比べてみます。2005年の調査の2010年版があるといいのですが見あたらないので、趣旨と時期の違った2つの調査結果を、牽強付会にならないように、対比してみようと思います。ブランドの構築や維持には時間がかかるし、同時に農産物ブランドのライフタイムという要素もあるので、5年間は、その推移を眺めるには適当な時間の幅かもしれません。

2005年の調査は、日経流通新聞(当時)が都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)の20~60代の男女5000人にインターネットでアンケート調査したもの(「生鮮ブランド勝ち組ランキング2005」、回答者数は1944人で5000人の38.9%)で、対象は日本各地の農産物・畜産物・水産物です。日経流通新聞が各都道府県の農林水産部署のデータやバイヤー情報であらかじめ選んだ125のブランドに対してそれを「食べたことがある」なら3ポイント、「また食べたい、今後食べたい」ものは2ポイント、「食べたことはないが名前は知っている」なら1ポイントとし、1944人の合計値をポイント数として農産・畜産・水産の区分なく多い順に並べたもの。重複がなければ最大ポイントは、「3ポイント * 1944人 = 5832ポイント」 なので、これを100としてそれに対する相対値を求め、それをブランド認知度とすると、お米に関しては以下のようになります。

人気は100品目中の何番? お米のブランド ポイント数 消費者のブランド認知で見た人気度(最大認知ポイント5832に対する相対位置) <2005年>
11 魚沼産コシヒカリ 5,583 96
12 秋田産あきたこまち 5,284 91
28 新潟産コシヒカリ 3,999 69
33 宮城産ササニシキ 3,534 61
37 北海道産きらら397 3,171 54
43 宮城産ひとめぼれ 3,016 52
50 岩手産ひとめぼれ 2,404 41
53 山形産ササニシキ 2,328 40
56 山形産はえぬき 2,181 37
67 富山産コシヒカリ 1,802 31
70 茨城産コシヒカリ 1,626 28
81 千葉産コシヒカリ 1,281 22
82 栃木産コシヒカリ 1,272 22
88 福島産ミルキークイーン 1,139 20
93 滋賀産コシヒカリ 1,006 17
96 青森産つがるロマン 970 17

次は、「卒論のテーマに『ゆめぴりか』」でも参照しましたが、2009年産米の2010年5月の価格データ(10kg袋入り白米の卸売価格と小売価格、農水省調べ)です。ここでも実際の取引価格だけでなく、最も値段の高い魚沼産コシヒカリの小売価格を100とした場合の上述のお米の相対価格を追加しました。価格の高さがブランドの強さだとすると、先ほどの認知度と同じように、その相対位置がわかります。

2009年産米の、2010年5月の卸・小売価格 (農水省調べ)
(価格は10kg精米、包装代、税込み)
産地銘柄 卸売価格(円) 小売価格(円) 魚沼産コシヒカリの小売価格を100とした場合のそれぞれの小売価格(=ブランド力)
北海道きらら397 \3,221 \3,620 52
北海道ななつぼし \3,253 \3,506 50
青森つがるロマン \3,308 \3,490 50
岩手ひとめぼれ \3,466 \4,125 59
宮城ひとめぼれ \3,567 \4,141 60
宮城ササニシキ \3,612 \4,344 62
秋田あきたこまち \3,568 \4,124 59
山形はえぬき \3,369 \3,789 55
福島コシヒカリ(会津) \3,699 \4,706 68
福島ひとめぼれ \3,424 \3,944 57
茨城コシヒカリ \3,447 \3,989 57
栃木コシヒカリ \3,474 \3,895 56
千葉コシヒカリ \3,527 \3,957 57
新潟コシヒカリ(一般) \4,009 \4,864 70
新潟コシヒカリ(魚沼) \5,522 \6,952 100
富山コシヒカリ \3,701 \4,385 63
福井コシヒカリ \3,496 \4,104 59
福井ハナエチゼン \3,288 \3,731 54
長野コシヒカリ \3,654 \4,663 67
滋賀コシヒカリ \3,403 \3,941 57
島根コシヒカリ \3,603 \4,229 61

冗長ですが、2005年調査に登場のブランドに限って両方をまとめると以下のようになります。

お米のブランド 消費者のブランド認知で見た人気度 (最大認知ポイントに対する相対位置) <日経流通:2005年1月> 価格で見たお米の人気度 (魚沼産コシヒカリの価格を100とした場合の相対価格) <農水省:2010年5月>
魚沼産コシヒカリ 96 100
秋田産あきたこまち 91 59
新潟産コシヒカリ 69 70
宮城産ササニシキ 61 62
北海道産きらら397 54 52
宮城産ひとめぼれ 52 60
岩手産ひとめぼれ 41 59
山形産ササニシキ 40 データなし
山形産はえぬき 37 55
富山産コシヒカリ 31 63
茨城産コシヒカリ 28 57
千葉産コシヒカリ 22 57
栃木産コシヒカリ 22 56
福島産ミルキークイーン 20 データなし
滋賀産コシヒカリ 17 57
青森産つがるロマン 17 50

性格の違った2つの指標ですが、これらを5年前のブランド力指標と現在のブランド力指標とおおまかに考えたら、魚沼をはじめとする新潟のコシヒカリは高いブランド力が維持されており、その他の地域のコシヒカリのブランド力もフォロワーとして全体的に上昇してきて、そして同時にお互いの間で差がつき始めている状態です。ひとめぼれのブランド力も上昇しましたが、ササニシキには翳りが見えます。あきたこまちも5年前の強さを維持していないようです。きらら397のブランド力はいくぶん低い辺りを安定的に推移しているといえそうです。また、山形のはえぬきは食味試験の評価と価格が相関していない、つまりブランド力不足の少し気の毒な例。

コシヒカリの高いブランド力は例外的ともいえるほど長い間、つまり30年以上も持続していますが、一般にある特定の米の品種が高いブランド力を維持できる期間は10年から15年くらいとも考えられるので、医薬品ではありませんが品種開発期間の長さや立ち上がり期の不安定さを考えると、農産物は特定の企業の企業ブランドではなくて多くの農家や農業法人をメンバーとする地域ブランドなので、結構リスキーなビジネスということにもなります。

ということがあるので、立ち上がりの時期には、高いブランド力構築の前提である定量的な品質維持のための我慢と投資回収期間をできるだけ短くしたいという思いがぶつかり合いますが、その折り合いはブランドの目標をどこに置くのか、つまり、もう一つの地産地消米の発売なのか、それとも魚沼産コシヒカリとのトップブランド争いなのかで、決まってきます。「ゆめぴりか」を将来の競合銘柄・競合ブランドと考えてその動向を気にしている人たちは、「ゆめぴりか」戦略の揺らぎを見て、にんまりとしているかもしれません。

□□□

人気ブログランキングへ

|

« 卒論のテーマに「ゆめぴりか」 | トップページ | 札幌の土用干しは9月の初め »

米と麦」カテゴリの記事

経営とマーケティング」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1317632/36838854

この記事へのトラックバック一覧です: お米のブランド認知とブランド力の持続:

« 卒論のテーマに「ゆめぴりか」 | トップページ | 札幌の土用干しは9月の初め »