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2010年10月12日 (火)

最初から60%?

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新聞記事によれば、新基準による「ゆめぴりか」がスーパーや米穀店に並べられるのは10月の15日頃からだそうです。旧基準(タンパク質含有量が6.8%以下というもともとの基準)を満たした「ゆめぴりか」は今年(2010年)の総収穫量の3%程度で昨年よりも少ないのでまだ食べる機会のない人たちも多く、だから、昨年の9月末から10月上旬の状況と違い、2010年産「ゆめぴりか」の実際の味に関する消費者の記事や評価や評判がほとんど見あたらないのだろうと思われます。見あたるのは、新聞記事やその周辺の、客観というか引用情報ばかりで、残念ながら消費者の「自分の舌」が出てきません。

今回の一連の動きは「ゆめぴりか」のブランド戦略上はあまり好ましくないのですが、ホクレン農業協同組合連合会の「ゆめぴりか」責任者の立場に立って、つまり彼の行動と心理をニュースや報道された記事を参考にしながら、シミュレーション風になぞってみると以下のようになりそうです(*** 1.から9.***まで)。「ブランド戦略上好ましくない」というのは、「ゆめぴりか」を「新潟コシヒカリ以上の全国ブランドのお米」にするという戦略にとっては好ましくないということで、「ゆめぴりか」は北海道の地産地消米として生き残ればよいという別の立場にとっては好ましくないということではありません。

***

1. 予想以上に暑い夏である。昨年は長雨と冷夏で認定基準をクリアしたのはごくわずかだったが、今年は昨年と違って暑いので大丈夫だろう。
2. 暑さが予想以上である。専門家の意見を聞いたり、実際に農家の聞き取り調査をしてみても、暑すぎてタンパク質含有率6.8%以下の「ゆめぴりか」が少なくなる可能性が高い。
3. サンプル調査の結果は、たんぱく質含有率の平均値は7.7%である。この値は冷夏の昨年と同じくらいで、たんぱく質含有率が正規分布しているとすると、6.8%以下の「ゆめぴりか」は昨年を下回るかもしれない。
4. ブランド戦略に不都合が生じるが、ホクレンの政策上2年続けて不幸な「ゆめぴりか」農家を作るわけにはいかない。つまり、できるだけ多くの「ゆめぴりか」農家を救済する必要がある。基準値を7.9%あたりに設定すれば平均値が7.7%だから、生産された「ゆめぴりか」の60%程度が「認定ゆめぴりか」となる。
5. 基準値変更には理由が必要だが、暑さのせいでアミロース値が低くなったのでタンパク質含有率が基準値を超えても味に問題はないというストーリーを作る。アミロース値が低くなったので味がよくなるということ自体は嘘ではない。
6. この基準はもし来年の天候が今年と大幅に変わったら使えないが、その時はその時でまた新しい基準値を考えるか、最初の6.8%以下という基準を大幅に緩和した新基準を、今までの基準は暫定値だったということにして、来年以降向けに用意する。この新基準は天候の如何にかかわらず、生産量の60%程度は確実に含まれるような数値に設定する。味との兼ね合いはその都度考える。
7. とくに今年の基準値緩和には何か客観的な裏付けが必要なので、市民・消費者参加型の「食味テスト」イベントを開催し、基準値を超えた「ゆめぴりか」もおいしいということにする。食味テストの結果については漠然と触れるが、「食味テストの詳細」については公表しない。
8. マスコミなどに7.9%以下を「ゆめぴりか」とすることを発表する。ただ、「救済ゆめぴりか」に味のばらつきが大きいと評判が悪くなるので、6.9%以上7.9%以下の「救済ゆめぴりか」は「救済ゆめぴりか」同士でばらつきのないようにブレンドし、平均的な味にする。去年は「ゆめぴりか」と「おぼろづき」をブレンドしたが、まあ、それと似たような緊急事態対応策である。長期的なブランド戦略については今のところじっくりと考える余裕がない。
9. 以上

***

以下は、10月10日の「どうしんウェブ 北海道新聞」からの引用です。(『・・・』部分、なお<>内は北海道新聞本紙を参照した補足情報)

『ホクレンは9日、道産ブランド米の新品種「ゆめぴりか」の本年産米を、15日ごろに全道のスーパーや米穀店などで発売すると発表した。<タンパク質含有率7.9%以下の>出荷量は冷夏で極端な品薄となった昨年の14倍の約1万4千トンとなる見込み。このうち道内販売分は1万トン<道外販売分は4千トンで11月から>。期待の新品種は、デビュー2年目でようやく多くの家庭の食卓に上ることになりそうだ。

今年の「ゆめぴりか」は約2万3千トンの収穫が見込まれているが<タンパク質含有量8.0%以上は9千トン>、猛暑の影響で、タンパク質含有率の独自基準(6・8%以下)に合うコメは全体の5%以下にとどまり、昨年の約1千トンより少ない700トン弱となる見通しだ。

ただ、今年は値が低いほど粘り気を生むアミロース(でんぷんの一種)の含有率が通常より低く、食味が良いのが特徴。ホクレンが9月22日に行った食味試験では、タンパク値で4区分したうち「6・8%以下」「6・9%~7・4%」「7・5%~7・9%」の3区分のコメは、新潟産の「コシヒカリ」を上回る評価を得た。』

つまり、タンパク質含有率が「7.9%以下のゆめぴりか」、「新基準によるゆめぴりか」は収穫量全体の60.9%ということになります。きれいな数字です。また、「新基準によるゆめぴりか」北海道内での販売予定比率は71.4%で、2010年米に関してはやっとそれなりの量の出荷が始まったばかりということもあるので地産地消の割合が高くなっています。

ともあれ、北海道大学を会場とした食味試験の評価に全国の消費者の舌が同意すればいいのですが、食味試験参加者のうち、北海道出身の人の割合がどのくらいか、東北や関東、関西からの参加者はどの程度含まれていたのか、どれくらいの割合の食味試験参加者が、それぞれの区分の「ゆめぴりか」を「新潟コシヒカリ」よりもおいしいと評価したのか、また評価点数といった点ではどの程度「新潟コシヒカリ」よりもおいしかったのかがよくわかりません。僕の舌は、2010年の「ゆめぴりか」に関しては、多くの評価試験参加者の舌とは違っているような気がしていますが、味の評価には個人の好みの差があるので、それはさておき。(別記事の「さっそく、『ゆめぴりか』」と「短期自家製ブレンド米」をご覧ください。)

じっくりと「ゆめぴりか」をブランド化していくために、最初の基準の6.8%にこだわり、もう1年生産者に我慢してもらい、消費者にもその姿勢を訴求するという方法はあります。ただし、来年(2011年)も同じこと(標準品質の基準外への逸脱)が起きると、これはもう全国ブランドの「ゆめぴりか」という戦略の継続は無理なのでそれはきっぱりとあきらめて、地産地消米に方向転換するか、新商品開発計画の中止を宣言するか。

以下は、今年をどう耐えるか、どう我慢するかのひとつの選択肢になったかもしれません。

「ゆめぴりか」としてそのブランドと高い価格を享受できるのは6.8%以下のものだけに限定。ただし、7.9%以下の1万4000トン全部に対しては、60㎏(1俵)あたり2000円を支給します。つまり、「6.8%を超えたが7.9%以下のゆめぴりか」に対しては戦略米生産協力金として、また「6.8%以下のゆめぴりか」に対しては戦略米品質報奨金として、不公平感なく一律に2000円を支給すると決定すると、出費総額は4億6700万円になります。8.0%以上の「ゆめぴりか」に対しては協力金等は支給しません。ホクレンにこうした戦略関連、ないし広義のマーケティング関連の予算総額がどれだけあるかわかりませんが、「ゆめぴりか」がホクレンにとってとても戦略的な農産物なら他の活動への出費をその分抑え込めば5億円くらいは捻出できると思います。それくらいのサイズの財布はお持ちでしょうから。

ウェブに公開されている平成21年度の損益計算書を拝見すると、ホクレンは巨大な商社なので、平成21年度の売上(取扱高)は1兆4734億円、事業管理費(広義のマーケティング関連の費用はここに含まれる)が221億円(取扱高の1.5%)、経常利益が61億円(取扱高の0.4%)。テレビコマーシャルなどもけっこう打っているのでいくぶん乱暴に優先順位を変更する気になれば5億円の捻出は難しい数字ではないと思われます。

「ゆめぴりか」は、今、中途半端な状況に置かれています。

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