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2010年10月 1日 (金)

秋の日本酒でご機嫌

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米(こめ)はその生育には東アジアのような高温で多湿な環境が向いていますが、収穫後の保存という段階になると、高温・多湿を嫌うというワガママなところのある穀物です。

去年の米は、備蓄分を別にすれば、今年の米が収穫されるころくらいには残りも段々と少なくなってきて、だから、涼しい秋風のころには収穫されたばかりの今年の米を食べ始めるというのが米の生産と消費の循環です。

米は年単位で常に新しいものに置き換わるということですが、1年間は食べ続けるので、すぐに食べない分は籾殻(もみがら)のままで、ワガママな米の嫌いな高温・湿気・酸化を避けて風通しがよくて暗くて涼しい場所、つまり米蔵というか、いわゆる冷暗所に保存しておくことになります。今の一般家庭では、昔と違って風通しがよくて涼しくて暗い場所などはあまりないので、米の味を優先させるには玄米や精米したてを少しずつ買って、それを密閉容器に入れて冷蔵庫で保管するしか方法がないのかもしれません。

日本酒のうまさに気づいたのは去年の終わりから今年の初めにかけてですが(「日本酒再発見」)、米が原料となっている日本酒もその基本の性質は米と同じで、葡萄で作られた醸造酒などとは違い、一部の例外を除けば、その寿命は1年です。従って、1年のうちのどのあたりでその日本酒を製品として出荷したら最もおいしいのかを、四季をよく知っている酒好きな日本人なら当然のことながら考え始めます。

冬場に仕込んで春先にしぼられた新酒は確かにうまいものですが、その季節に全部を飲んでしまうわけにはいかないし、酒によっては春頃では味がまだ荒っぽいのもあるかもしれません。

しかし、高温多湿な夏を涼しい酒蔵でやり過ごさせてやれば、そのあとには涼しい秋がやってきます。その間に、酒が徐々にきれいに熟成され、そして秋の日本酒の完成です。日本酒は普通は、桶に貯蔵する前と出荷のために瓶詰め(樽詰め)する時にそれぞれ火入れという温和な加熱殺菌処理を行いますが、モノの本によれば、秋の日本酒は出荷時に火入れを行わないので、「ひや」(日本酒は燗をしてないのが『ひや』、桜の下の一升瓶の『ひや酒』は常温)のまま「おろす」(出荷容器に移す)ので、秋の気温のひんやりもからめて、「ひやおろし」と呼ばれるようになったそうです。

季節にちなんだ食べものの具体的な呼び名や印象が、あるカテゴリーの商品の総称になることがあります。北海道では秋に獲れる白鮭(秋に産卵のために生まれ故郷の川をめざして帰ってきた鮭を漁師は沿岸定置網で獲るが、その鮭)を秋味(あきあじ)と呼んでいます(だから、春に、つまり「秋をはずれた季節」に獲れるおいしい白鮭は「時知らず」という名前)。

これは僕の勝手な想像ですが、秋の日本酒もこの伝で、「ひや」「おろし」という作業工程の名がいつの頃か秋に出荷される日本酒の総称になり、これだけだと業界内用語にとどまっていて広がりがないので、またいつの頃かどこかの商売上手が「ひやおろし」というカテゴリーでブランド・マーケティングしたのかもしれません。

秋に向かって熟成の進んでまろやかになった日本酒は「秋上がり」と呼ばれていますが、「秋上がり」が一升瓶などに詰められてお酒売り場に並ぶと、一部の酒瓶のラベルなどにはそう書いてあるように、「ひやおろし」となるということのようです。なにはともあれ、秋の日本酒もおいしい。

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