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2010年10月27日 (水)

TPPと学習効果

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カラスの学習効果にはちょっと驚くべきものがあります。実際は実証データがなかったのかもしれませんが、カラスが苦手だとされていた黄色いものに対しても、見かけ倒しで危険性がないとすぐに気が付いて仲間の「共有知」としてしまったのか、今のカラスは黄色いものに近づくことに何のためらいもないようです。ただ覆ってある程度の黄色いゴミ用ネットなどは平気でつついて、その中の黄色いゴミ袋から堂々と残飯をつまんでいる光景を見かけます。

「TPP」(Trans-Pacific Partnership あるいは Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) <環太平洋戦略的経済連携協定> を推し進める理由としてグローバリゼーションとか自由化とか開国とかいう言葉を好んで使う人たちもいらっしゃるようです。別の説得力のある理由があるとまだわかりやすいのですが、それはどうも見えてきません。今までもさんざん輸出してきた日本の工業製品の輸出がこれ(おもには関税撤廃)によって有意に増加するとは思われません。逆に、日本の農業に対する今後の悪影響の面ばかりが目につきます。

【参考】: 2010年の日本の名目GDPは477兆円ですが、内閣府はTPP参加によりGDPが2兆円~3兆円増加すると試算しており、また、農林水産省はTPP参加によって2008年度に8兆5000億円あった国内農産物の生産額の約半分の4兆円が減少、関連産業含めるとGDP喪失額は8兆円と試算。ちなみに経済産業省の試算するGDP押し上げ効果は、内閣府試算の2兆円~3兆円とは違って、10兆円。

TPPは工業品や農業品などの物品の貿易以外に、金融などのサービス、基準認証、人の移動なども対象とした複数国間の拡大EPA (Economic Partnership Agreement) <経済連携協定>ですが、物品に関しては関税がまず例外なしに撤廃されるし、金融分野のサービスなどもその範囲なので、日本への農畜産物の輸出や金融サービスの日本へのさらなる浸透で短期・長期の利益を見込んでいる国があるのは当然のことです。

日本は、少し前に、金融のグローバリゼーションや金融の自由化・金融の規制緩和でひどい目に遭いました。TPPでグローバリゼーションの推進と主張している人たちにはその学習効果が及んでいないようです。

ある国にとって都合のいい枠組みや行動様式や考え方を、その国のその時の権勢を使って他の国や地域に押し付けることをグローバリゼーションと意図的に呼べば、それを標準的なものと錯覚してしまうナイーブな国が出てくることがあるので、押し付ける側の国にとってはとても都合のいい表現です。

しかし、グローバリゼーション様式なるものが、その様式の作成国にとって都合が悪くなると、それを押し付けられた他の国や他の地域の事情など全くお構いなく、さっさとその様式を折りたたんで引っ込めてしまうという習性を見てしまうと、グローバリセーションやそれと同義語的に重なる部分の多い自由化や自由貿易や規制緩和という言葉に隠れている政治的な意味合いがはっきりしてくるし、そうした用語で夢を見ることの危険性がわかってきます。

わかりやすい例は、企業の財務内容の評価制度としての時価会計。日本の金融界と金融界に依存していたその周りの企業群は、この制度変更の影響で、おんぼろ資産や負の資産をいっぱい抱えた会社ということになり、トーサンやバイシューやカシシブリなどで苦労させられました。しかし、この制度の言いだしっぺであり、この制度を自国以外に推進することに関してはいわば圧力団体であったさる国が金融危機で似たような状況に陥ると、その国は手のひらを返したようにさっさと時価会計を放棄し、つまり、わかりやすく翻訳すれば「生きのびるための粉飾決算のすすめ」といった趣旨のガイドラインを突然発表し、危機の表層的な回避を図りました。もっとも、奥ではとりあえず覆い隠した問題からあいかわらず煙が立ちのぼっていますが。

「消費税10%」発言も唐突でしたが、今回の唐突な「TPP」の参加発言を見ると、また似たような妥協というか間違いを、今度は顕在的なターゲットが農業という基礎産業、ひそかなターゲットが金融サービスという構図で、くりかえしつつあるのかなとイライラしてきます。日本ではこうした方面の学習効果を高い授業料と引き換えに獲得したはずなのに、なぜか共有されていない様子です。一方、日本を取引対象とする他の国では、日本についての学習効果が以前から上手に蓄積されているようです。

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