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2010年11月15日 (月)

韓国のFTAにおけるコメの位置(その2)

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韓国と欧州連合(EU)が、交渉開始から3年半ほど経過した2010年10月6日に、自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)に正式に署名したそうです。暫定発効は2011年7月1日なので、遅くとも来年6月までに、韓国は韓国国会で、EUは欧州議会で批准に同意してもらう必要があります。

韓国は、すでに、農畜産物の輸出競争力の非常に強い米国とも2007年4月にFTAを締結していますが、両国とも議会の批准ができておらず、現在は未発効状態です。

この韓国のFTAの方向は、国の将来を製造業(工業)に託して農業を捨てた、捨てたという言葉が強すぎるなら工業のために農業を犠牲にしたと解釈できそうです。「国際分業論」や「比較生産費説」の極端な形での採用ともいえます。

以前、「穀物自給率がとても低い国の『農産物』輸出(その2)」の中で「オランダは、いつの頃かに、穀物という基礎農産物を捨てて(十分な穀物栽培が無理なので諦めて)酪農品・畜産物と、トマトやピーマン・パプリカといった附加価値野菜に集中するという意思決定をしたのでしょう。穀物自給率16%(2007年)という基盤の上で危い(あやうい)バランスをとるということになりますが(2003年の穀物自給率は25%だったので9%の大幅な下落)、韓国もあるいは似たような方向で今後を模索中なのかもしれません。韓国はお米の生産国(自給国)なので、韓米FTAで韓国のお米にどういう影響が出るのか非常に関心のあるところです。」と書きましたが、この機会に、韓米FTAの分野別の合意結果と合わせてその概要を農産物を軸にざっと眺め返してみました。

農産物に関しては、肉などの畜産物も含め、期間の長短はあるけれど、ともかく関税をなくす方向で、「韓米」と「韓EU」の違いは、唐辛子・ニンニク・タマネギや高麗人参・温州ミカンなどの伝統的な香辛料や食材の扱いが違うこと(「韓EU」の方がゆるやかで現行関税維持)くらいです。

次はコメに関してですが、EUでコメを作って食べるのはリゾットの好きなイタリア人くらいなので(種類はジャバニカ米)、コメの生産と輸出が歴史的に好きな米国とのFTAとは違って、ほとんど影響はないのだけれど、念のために確かめてみると、

米国とのFTA
◆コメおよびコメ関連製品は関税譲許対象から除外
 ◆追加開放なく譲許対象から完全に除外

EUとのFTA
◆コメおよびコメ関連製品は関税譲許対象から除外

と、ぎりぎりのところは守っています。つまり、コメに関しては相手がどこであれ、自由化をしない、コメは自由化の対象外ということで、韓国はこの姿勢は貫くつもりのようです。ただし、両方とも議会の批准待ちで、まだ発効していません。

「韓米FTA」は2007年4月の署名から3年半が経過しましたが、両国大統領が相変わらず協議中の様子なので、あるいは米国から韓国に対して自動車の関税撤廃時期や牛肉輸出条件の緩和とあわせて、コメの自由化圧力がかかっているのかもしれません。(ただし、このあたりの詳細は不明。)

なお、韓国・外交通商部の資料では、韓米FTAが韓国にとって米国市場で短期的に有利に作用する(短期的に市場シェアの拡大が期待できる)工業製品として以下のようなものを挙げてあります。(括弧)内の国は各製品の競合国。

乗用車 (日本)
LCDモニター(中国、日本)
ビデオカメラ(日本)
TVカメラ (日本)
オーディオアンプ(中国)
金属切削加工機械(日本)
ポリスチレン(メキシコ)
イヤホン (中国)
エポキシ樹脂(カナダ)
カラーTV (メキシコ)

“EU-South Korea Free Trade Agreement: A Quick Reading Guide” (Oct 2010) というEU発行の案内書の農産物に関する箇所には、EUにとってはワインやウイスキー、チーズや豚肉の韓国への輸出が増えるのでこのFTAに期待してくださいという記述があります。

ここで、「自国で必要とする穀物の自給率の少ない先進国」の代表例である「日本と韓国とオランダ」の政策というか戦略の方向性の違いに戻ります。

オランダは家庭用品・電器・化学などの工業も盛んですが、農畜産業や食品業も盛んな国で、しかし、穀物自給はほとんどあきらめ、つまり穀物はほとんど輸入依存です。そのかわり、チーズ、牛肉・豚肉、ビール、トマトとパプリカ、それからタバコを大量に輸出しており、鉄や電子部品を輸入し車やハイテク機器を輸出するといった工業モデルに近い農産物生産モデルを確立したようです。

韓国は、上述のように、米国やEUとのFTA(自由貿易協定 Free Trade Agreement)に熱心な国ですが、その動きを乱暴にまとめると、国の将来を製造業(工業)に託し、ごく一部のコメという領域を除いては農畜産業を犠牲にするといった構造の産業ポートフォリオを採用を決定しました。なお、韓国政府が、米国やEUとのFTAで悪影響を受ける国内農業などへの支援策に使うことになっている金額は、10年間で10兆円くらいです。(支援金額はFTA全体で119兆ウォン、韓米FTA関連の追加農業支援が20.4兆ウォンなので全部で139.4兆ウォン。これを現行為替レート<100ウォン=7.42円>で円換算すると約10兆3000億円。)

日本は、別に、どこかをまねる必要はなくて、実行がしんどくても他の国がマネをしてみたくなるような日本型モデルを作ればいいと思いますが、その骨子は、製造業と農業を、GDP比率ではなく、お互いが持つ意義という意味で両者をバランスよく維持すること、また農業においては、コメや大豆のような基礎農産物と、果物や高級野菜や有機栽培米のような付加価値農産物の両建てを保持し、そのバランスを崩すようなルールには距離を置き続けた方がいいと考えています。基礎農産物は、換言すれば、社会インフラや社会ユーティリティーに関する事業だし、高付加価値農産物は高利潤追求事業ということなので、現在もいくぶんかはそうしていますが、外部コスト政策などで対応の方法はあると思います。

<「韓国のFTAにおけるコメの位置」の終わり>

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