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2010年11月30日 (火)

農産物の生産量に対する貿易量の割合

農産物は自国で生産され自国で消費される割合が非常に多い品目ですが、つまり国レベルでの地産地消が基本となっている品目ですが、日本をはじめいろいろな国が農産物を輸入しており、また米国やオランダのように農産物の輸出に熱心な国もあります。工業製品はターゲット市場の相当部分を国外に想定した貿易依存の強い品目ですが、これらと比較した場合に、農産物の貿易額はどれほどなのかを確かめてみたいと思いました。

同時に、基礎農産物である穀物類に関して、その生産量に対する貿易量の割合を再確認したいと思います。

◇ ◇ ◇

輸出されるものは途中でなくならない限り輸入されるので、輸出と輸入のタイムラグなどを無視して輸出額=貿易額と考えると、2008年の世界の貿易額は15兆6440億ドルです。2008年の平均為替レートは1ドル=103円くらいですが、ここでは、最近の為替レート(1ドル=80~84円)よりは円安の1ドル=90円で円換算してみると、1408兆円となります。

貿易品目というか輸出入製品や商品を、大きく5つ(その他を入れて6つ)に分類すると

*原油や鉄鋼などの原燃料・金属製品
*医薬品やプラスチックなどの化学製品
*繊維や衣料品などの繊維製品
*穀物や魚介類や加工食品や油脂などの農産物
*家電・IT機器や自動車、産業機械などの機器・機械類
*その他(統計誤差を含む)

となりますが、それぞれのカテゴリーの貿易額が貿易額全体に占める割合は、(財)国際貿易投資研究所ホームページの統計データを参照すると、2008年では

*原油や鉄鋼などの原燃料・金属製品 (26.2%)
*医薬品やプラスチックなどの化学製品 (12.8%)
*繊維や衣料品などの繊維製品 (4.1%)
*穀物や魚介類や加工食品や油脂などの農産物 (7.2%)
*家電・IT機器や自動車、産業機械などの機器・機械類 (38.5%)
*その他(統計誤差を含む) (11.2%)

で、これはわれわれの日常の仕事や生活やニュースなどから類推できることですが、薄型テレビやビデオやコンピュータや自動車やそれらを作る工作機械や産業機械などの貿易額が貿易総額の40%近くを占めています。

念のために(いくぶん冗長ですが)、家電やIT分野、そして自動車分野の代表的な日本企業、およびごく一部の米国ハイテク企業の海外売上比率を見てみると、40%という数字が個別企業というミクロのレベルでも了解できます。以下は、各社のホームページや財務諸表、会社四季報、ニュース記事などを参考にした当該各社の2008年度の海外売上比率です。(海外売上には、日本ないし本国からの輸出と現地生産経由の海外売上が含まれるので輸出金額とは同じではありませんが、ここでの利用目的には、その違いはさしつかえありません。)

--------------------------------------------------------
□三洋      64.6%
□シャープ    53.5%
□ソニー     79.8%
□東芝      51.7%
□NEC      26.1%
□パナソニック  49.9%
□日立      42.0%
□富士通     36.0%
□三菱電機   33.6%
◇IBM       64.6%
◇HP        68.8%
--------------------------------------------------------
□任天堂     87.5%
--------------------------------------------------------
□トヨタ      74.0%
□ホンダ     86.0%
□スズキ     68.0%
--------------------------------------------------------

農産物の貿易額は貿易総額の7.21%ですが、その内訳は以下のようになります。

穀物         0.63%
魚介類       0.46%
加工食品      2.71%
油脂類       1.00%
その他の食料品 1.41%
(農産物合計   7.21%)

◇ ◇ ◇

そもそも、工業製品と違って、農産物は保存が利かないということもあって伝統的に自国消費が基本で、農産物の「生産量に対する貿易量の割合」は多くありません。つまり、広い意味で地産地消品目です。ワインやウイスキーや缶詰のような長期保存が効くものや乾燥パスタやカップヌードルのような比較的長持ちするものを除けば、生鮮食品よりは保存の利きやすい穀物でも、世界の生産量に占める貿易量の比率が2007年と2008年では、小麦が17~18%、トウモロコシを主とする粗粒(そりゅう)穀物だと11%、そしてお米はその比率が一番少なくて5~6%です。《【註】粗粒穀物とは、トウモロコシ、こうりゃん、大麦、えん麦、ライ麦、粟(あわ)、雑穀(ざっこく) のこと》

貿易比率が少ないということは、生産量に比べて国際市場の規模が小さいため、穀物などの国際価格はわずかな需給の変化で大きく変動することになるし、そういう仕掛けも比較的簡単です。

_nov2010

(データソース:農林水産省、価格推移は2000年1月~2010年11月中旬)

株にも国債にも魅力がない状態で、流動性が過剰で行き所のなくなった資金が、最近は、金(ゴールド)も飽和状態なので、穀物先物市場にじわじわと流れ込んで、じわじわと穀物価格を押し上げているようです。もともと穀物市場は気候変動などのリスクヘッジのために先物取引が長い歴史を持っています。日本ではコメの先物取引が1730年には大阪で整備されましたが、整備された先物取引市場としては世界で最初のものだったようです。

チューリップという華やかな花があり、オランダやトルコがその産地として有名です。17世紀前半(日本でコメの先物取引が整備されるほぼ100年前の、江戸時代初め)のオランダでは4年間ほど「チューリップ投機(チューリップ・バブル)」が発生し、特別な種類だと球根1個の値段が(現在の価格に換算すると)4000万円くらいにまで達したそうです。

穀物自給率が日本よりもはるかに低いオランダ(日本とオランダの穀物自給率はそれぞれ28%と16%でOECD諸国の中では最も低いグループ、農林水産省試算 2007年)は、タバコ、チーズやビール、トマトやチューリップのような付加価値農産物の生産と輸出が得意な国ですが、そういう指向性を見ると、「チューリップ投機のDNA」はオランダ人の中に生き続けているのだろうと思われます。

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