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2010年11月 4日 (木)

農地の集約化・大規模化で収穫逓増?(その2)

農地を集約化し大規模化すると収穫逓増が実現され生産性が上がるというのは、日本の風土や農業環境を考えた場合、正しいのでしょうか?かりに正しいとして、また、集約化や大規模化が政治的・経済的に(結果を得るのにお金がかかりすぎるのは経済的とはいわない、という意味)可能だとして、日本では、つまり東アジアの端に位置し高温多湿で狭く山が多くて平野部の少ないという風土条件や農業環境、農業技術の進歩などを勘案した場合に日本では、どの程度の集約化や・大規模化が適当なのでしょうか。

集約化や大規模化を好む方たちの発言は「農業の場合、耕作面積と生産性とはほぼ比例しており、大規模化すれば確実に生産性が上がります」という宗教的な宣託の趣をもったものか、あるいは「国内の生産力を増強するためには・・・大規模化、集約化、複合経営といった農地の効率的利用により国内農業の競争力強化を図ることが必要である」といった断定的のものが多いようです。

日本の現在の農家1戸当たりの平均耕地面積は前述のように1.8haですが、米国との比較、ドイツやフランスといった農業国でもある欧米先進国との比較から、識者は、こんなに狭い農地を分け合うだけで大規模化の努力もせず日本の農業従事者はバカではないのかというだけで、日本の条件にあった適正規模のヒントの提示や提案というものには関心が薄いようですし、高温多湿で国土面積が狭い、しかし日本とはコメの種類が違うとはいえ稲作が盛んでコメの輸出国でもあるタイのような国との比較にも興味がないようです。

さてここで集約化・大規模化が進んでいないと識者が嘆く「日本の現在の農家1戸当たりの平均耕地面積1.8ha」を「北海道」と「(北海道を除く)都府県平均」とに分けて比べてみるとどういう光景が見えてくるでしょうか。

(1-1) 北海道の農家1戸当たりの平均耕地面積は、19.3ha
(1-2) 北海道の主業農家率は、75.0%

(2-1) (北海道を除く)都府県の農家1戸当たりの平均耕地面積は、1.4ha
(2-2) (北海道を除く)都府県の主業農家率は、19.9%

ここで、主業農家というのは「主たる業として農業を営んでいる農家」ということで、その意味は「所得の半分以上を農業で稼ぎ、おじいちゃんとおばあちゃんでも農業はできるのですが、それでは不安なので、65歳未満の農業従事者がいる(年に60日以上働く)農家」ということになっています(農水省の定義)。

北海道大学(もともと札幌農学校)キャンパスの北の一角に19世紀末の欧米風(というかその当時の米国東部風)の大きな酪農家用モデル農場(札幌農学校第2農場、Model Barn)が移設されて残っており、その広い庭を散歩すると100年以上前の先端酪農家の雰囲気が味わえます。これは、酪農場の例ですが、北海道の畑作地の広がりや低木の森林は西ヨーロッパを感じさせます。上川から旭川、深川、滝川、砂川、岩見沢と水にかかわる地名の連続する一帯は巨大な稲作地帯です。北海道の畑の区画や牧草地の区画、田んぼの畔(あぜ)の区画などを見ていると、北海道の農家1戸当たりの平均耕地面積が、日本における実質上の上限値だと想定しても間違いではないような気がします。

しかし北海道以外は、一部の広くて豊かな米作地帯を別にすれば、山と里山と河川と限られた平野の都府県なので、大きな1戸当たりの耕地面積は、かりに政治経済的なしがらみがないとしても、望むべくもなさそうです。これは両国の地理条件や風土条件などの違いを勘案しない全く感覚的な印象ですが、労働集約的な稲作国であるタイの3.6ha(1戸当たりの農耕地面積の平均)が、あるいは集約化や大規模化の上限値として参考になるかもしれません。

(【参考】我が家が有機玄米を定期購入している新潟県のさる農家(農業生産法人)の作付規模は有機栽培米と特別栽培米を合わせて約22haで、さきほどの「実質上の上限値」近辺の数字です。)

さきほど主業農家という用語が出てきましたが、生産額に占める主業農家の割合を米と野菜と酪農で比べてみると以下のようになります。

米 : 38%
野菜: 82%
酪農: 95%

数字の意味は、野菜などはまだ趣味の農家やパートタイム農家などもいるかもしれないが、野菜や酪農は基本的にプロの農家、農業や畜産業の専門家・専業農家の世界、一方、米はプロの専業農家以外に、様々なタイプの農家がコメ作りに参画しているということです。

「2005年農林業センサス」からのデータです。水田農家、つまり生産量が多いか少ないか、ビジネスとしてやっているのか、あるいは趣味や自家消費分栽培やその他の目的でやっているのかは別にして、米となんらかのかかわりを持っている農家や農業法人が農業経営体全体に対してどれくらいの割合なのかを、農家(経営体)の数で比較してみると水田農家の割合は「83%」です。

付加価値農産物である野菜の栽培や畜産は仕事の場として若い女性をひきつけるほど農業のイメージを高め、基礎農産物である米の生産は逆に米価下落などのニュースと重なって農業のイメージを押し下げているような感じで、2つの違った農業のイメージ形成力が僕たちの回りで交錯していますが、「83%」という数字をみると、日本の農業と米とのかかわりあいの深さと広さが実感できます。

ということで、日本における「農地の集約化・大規模化が収穫逓増?」の状況を、「お米」を材料にして調べてみたいと思います。

(その3に続く)

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