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2010年11月 5日 (金)

農地の集約化・大規模化で収穫逓増?(その3)

米に関して、作付規模(つまり農地面積)とお米の生産費との関連データが一番よくまとまっているのは、農林水産省の「農業経営統計調査」(米の生産費)ですが(平成21年産米データが公表されたばかりで、以下の「表A」)、これを眺めていると、お米の生産費は作付面積が0.5ha未満の小規模なところから3.0ha~5.0ha まで、作付規模の階段ごとにきれいに減少していますが、5.0ha から 15.0haの間はあまり規模の経済効果は働かず、しかし、15.0ha 以上になるとまた費用の減少が見られます。しかし階段の高さが途中から大きくなり、また最後の階段も「15.0ha以上」と大きなひとくくりになっていて、こういう違う階段の高さの混在した表記方法は、実際と違った印象を与えることがあるので、農林水産省発表の数字をそのまま利用しながら書式を以下のように加工します(「表B」)。

【註】小規模農家の生産費もきちんと計算するため、生産費は、10a(10アール)単位、つまり0.1ha単位のものとなっています。10a (= 0.1ha) は正方形だと一辺が約32メートルの農地です。

1. 作付規模の階段の高さを、1ha以上は1ha刻みとする。例えば、5.0ha ~ 10.0ha は、5.0ha ~ 6.0ha、 6.0ha ~ 7.0ha・・・とし、それぞれ平均的に生産費が減少しているものとする。

2. 15.0ha以上がひとまとめになっていてこれもわかりにくいので、最大作付面積を40.0haとし、これもこれが実態を反映しているかどうかは不明だが、1ha刻みで生産費が平均的に低下すると考えて計算する。最大値を40.0haとしたのは、北海道の平均値が19.3haなので、その倍(40.0ha)を最大とするのはとくに乱暴な議論ではないと思うからです。

「表A」 

_h21a_2

「表B」

_h21b_2

以下は「表B」をグラフにしたものです。

_h21small_2

さて、最初の感覚的な仮説数字を思い出しながら、上の表やグラフを眺めたいのですが、表Bの数字や折れ線グラフを見ていて気づくことは、

1. 作付面積が0.5haから3haに増加するにしたがって、生産費(ここでの生産費は、利子や地代も入った全算入生産費と呼ばれるもので、一般的な会計用語を使えば支払利息などの営業外費用も入れた費用のこと)が目に見えて減少している
2. しかし、3haを超えるあたりで減少幅が急に緩やかになり、5haあたりで頭打ちの状態になる。この記事の(その1)(その2)で参照したタイの3.6haという数字を思い出す。
3. そして7~8haあたりで、カーブは横に寝てしまう。
4. 10haを超える規模では、費用が平均的に減少するような計算をしたので、どこかに変曲点があるのかもしれないが、それはわからない。
5. 7~8ha以上は「労多くして功少なし」状態になるともいえる。

北海道の1戸当たりの平均耕地面積は19.3ha で、これは稲作地や畑作地の平均値ですが、北海道の米の予想収穫量は、たとえば平成21年産米(10月15日現在)では59万トンで全国1位。(2位が新潟で57万トン、全国の予想収穫量は824万トン)

これは作っている米の持つ価格力にもよりますが、そういう大きな農地をもつ北海道の稲作農家が、生産費の逓減(つまり農地の大規模化による収穫逓増)を享受して大いに儲かっているとは思われません。

こういう点に関しては農業経済と農業技術の両方に精通した専門家の分析を期待したいのですが、そうした専門家のおひとりが、「農業経営の企業化をめぐる政策動向と現実」と題する資料の中で、稲作の規模の経済性について以下のような示唆に富んだ指摘をされています。

『2.企業化が困難であることの背景
■ ・・略・・
■ 企業経営の優位性を発揮できる技術が存在しない 
 □ 稲作では、水田大区画化により零細経営が排除されるも、10ha以上では明瞭な規模の経済性は認めがたい』

(柳村俊介・北海道大学農学部教授「農業経営の企業化をめぐる政策動向と現実」(北海道大学経済学研究科セミナー<農業再生~ビジネスの新しいデザイン~>2010/07/22)の講演資料より)

くりかえしになりますが、集約化や大規模化を好む方たちの発言は「農業の場合、耕作面積と生産性とはほぼ比例しており、大規模化すれば確実に生産性が上がります」という直線的なものか、あるいは「国内の生産力を増強するためには・・・大規模化、集約化、複合経営といった農地の効率的利用により国内農業の競争力強化を図ることが必要である」といった断定的なものが多いようです。

『(日本の)中耕(除草)農業は、より湿潤な地帯に発達したために』、(米国の)『休閑農業のように栽培面積をひろげて労働を粗放化するよりも、栽培面積をそのままにして労働を集約化したほうが、かえって収量が多い。』という35年前の飯沼二郎氏の主張は平成21年産米の「表B」のグラフと適合的です。

飯沼氏の考えや「表B」、そしてタイの1戸当たり平均耕地面積なども勝手に参照すれば、集約化・大規模化なるものの適正値は、日本の風土環境では、3haと5haの間のどこかにあるのかもしれません。

(「農地の集約化・大規模化で収穫逓増?」の終わり)

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