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2010年12月30日 (木)

ジャガイモとオランダ人、あるいは世界の4大主食(その3)

さて、オランダです。

ジャガイモという日本語の名称はジャガタライモから来ていますが、ジャガタラとはジャカルタつまりインドネシアの都市の名前で、インドネシアはオランダのかつての植民地です。スペインが、原産地が南米アンデスからメキシコのジャガイモをインカ帝国からヨーロッパに持ち込んだように、当時からスペインと並んで世界交易の得意なオランダがジャガイモを交易の途中で手に入れて本国に持ち帰り、ついでに日本(長崎)にも持ってきて、その後、オランダでジャガイモが本格的な生産されるようになったのでしょう。

ところで、長崎はジャガイモ栽培の盛んな土地で、日本でのジャガイモ生産量は北海道が圧倒的に多いのですが、長崎県は北海道にに続いて2番目(農林水産省)。

OECD諸国の中で穀物自給率の非常に低い国の代表が、オランダと日本と韓国で、その穀物自給率はそれぞれ、16%、28%、30%です(農林水産省試算 2007年)。同じ資料によれば、フランスの穀物自給率は164%、米国は150%、ドイツは102%、英国は92%、最近財政面で話題のギリシャは71%。OECD加盟国ではありませんが、同様に中国が2007年時点では102%、またインドは105%。

オランダは農業が盛んで農産物輸出も多い国ですが(「韓国のFTAにおけるコメの位置(その1)」)、その農業国たるオランダでなぜこれほど穀物自給率の低いのか(あるいは、低い状態をなぜそのまま放置しておくのか)けっこう不思議でした。小麦がわずかしか採れず、また畜産の盛んな国としては家畜飼料用の穀物も輸入することになるので、オランダで穀物自給率が低いのは当然としても、主食系の付加価値の低い基礎農産物の生産はあきらめて、生産は畜産や野菜栽培などの付加価値の高い農産物に集中し、その結果、チーズやタバコ、牛肉・鶏肉・豚肉、ビール、トマトやマッシュルームなどを輸出するというのは、工業的なロジックに近いのでわかりやすいのですが、そう理解しようとすると、なにかすっきりしないもの、一部のボタンを掛け違えているような違和感が残ります。

しかし、日本人にとって米(コメ)や小麦(パン、ラーメン、うどん、パスタ)が主食であるように、オランダ人にとってイモ(オランダの場合はジャガイモ)が主食であるのなら話は別で、全体のバランスがすっきりとします。全体のバランスとは、基礎農産物と付加価値農産物バランスのことです。言葉を換えれば、穀物自給率を軸にみた場合の主食自給率とはまったくちがった主食自給率の光景が見えてきます。

さきほど、ジャガイモはオランダで2番目に生産量の多い農産物だと書きましたが、特定農産物をいっぱい作る国がそれをいっぱい食べる国ではないこともまれにあります。たとえば米国(アメリカ)は米(コメ)の生産と輸出は好きですが、コメを食べることには熱心ではありません。オランダ人はジャガイモを主食としていっぱい食べるのか。

オランダ政府観光局のブログ(日本語)を拝見すると、「ジャガイモとオランダ人」(2007年6月11日)というタイトルの記事があり、そこから関連部分を引用します。(以下の『・・・』の部分)

『画家フィンセント・ファン・ゴッホの初期の傑作「馬鈴薯(じゃがいも)を食べる人々」に描かれているように、オランダの庶民にとって、じゃがいもは長年主食のひとつでした。

最新の調査によるとオランダ人の半数はいまでも、じゃがいもが美味しく栄養価の高い自分たちにとってベーシックな食品と認識しています。

統計ではじゃがいもが食卓に上る回数は平均週4回。オランダ人1人のじゃがいも消費量は80キロだそうです!そしてそのうち30キロは・・・、フライドポテトだそうです。オランダのレストランでメインコースの付け合わせとしても出されるプライドポテトですが、しばしばその量がメインの魚や肉より多くてびっくりします。』

年間80㎏のジャガイモ消費量がどんなものか、日本人の米(コメ)や小麦の年間消費量と比較してみます。

日本人は、2008年では1人当たり1年間で59㎏のコメを食べています。我々はパンやうどんやラーメンも好きなので小麦の年間消費量も調べるとこちらは1人当たり31㎏。それから、肉じゃがやサトイモの煮っ転がしやふかしイモやポテトサラダなどのイモ類の消費量は20kg なので、3つを合わせると、主食系農産物(およびイモ類)の1人当たりの年間消費量は110㎏ということになります(農林水産省)。

オランダでは当然のことながら小麦粉パンやパンケーキも食べるので、炊いたご飯やパンやパスタやラーメンが日本人にとって主食であるように、80㎏のジャガイモと30㎏の小麦粉(合わせて110㎏)が彼らの主食だと想定することにとくに無理はなさそうです。

とすると、つまり、その想定がさほど間違いでないとすると、オランダでは穀物は自給できないかもしれないが、その代わりとしてジャガイモという主食系の基礎農産物はしっかりと自給しており、ついでに抜け目なくその主食系農産物も輸出もしているという実態が見えてきます。(冷凍ジャガイモの年間輸出金額は1150億円。<FAOSTAT 2008、1ドル=85円>)

「ジャガイモとオランダ人、あるいは世界の4大主食」の終わり

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