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2011年3月31日 (木)

迷ったら基本データ(世界の気温とCO2)

現在の風潮(最近のはやり言葉でいえば風評)は、僕たちが石油や天然ガスや石炭などの化石燃料を燃やして発生させているCO2が地球の温暖化の主な原因で、だから京都議定書が作られ、CO2の排出権売買が制度化され、そして電力はクリーンな原子力発電ということになっています。

今回のような原子力発電所の事故があり、放射性物質による人や野菜や空気や土や海の汚染はどうもクリーンとはいえないので、クリーンでない原子力発電が本当に必要なのか見直してみるかということになります。

そういう場合に考えることは2つ。

(1)原子力依存をやめて(段階的に少なくして)石油や天然ガスや石炭に頼る度合いをとりあえず大きくしたら、化石燃料の燃焼によるCO2は増加するが、そのことによって地球は本当に温暖化するのか。

(2)石油や天然ガスや石炭の今後の「可採年数」(採掘可能年数)の見積もりは資源の市場価格や採掘技術で変化しますが、それを「BP統計2010」の数字を借りて以下のように想定すると、あと20~30年くらいで化石燃料と同じ程度に効率的な「代替エネルギー」を実用化しないと、どうもあとがない。石油や石炭を裏で食いつぶす(大量消費する)ようなエネルギーは、表層の効率や部分効率がよさそうに見えても代替エネルギーとは呼ばない。しかし、残念ながら、僕にはどういう代替エネルギーが有力なのかはわからない。

原油(石油) :  46年
天然ガス    :  63年
石炭       : 119年

(2)については今はわからないので、(1)についてのみ考えることにします。

◇ ◇ ◇

気温のような基礎データも、それが世界全体の平均値であったり平年気温との差であったりする場合には途中で加工・編集されるので、たとえば札幌・大通り公園でそよ風が通り過ぎる正午の気温といった個人の皮膚感覚で確かめられるものとは性質が違っていますが、公的機関が発表した基礎データ(解釈ではない)は正しいと考えて先に進みます。

下のグラフは気象庁のホームページにある過去120年の世界全体の平均気温です。正確には各年の平均気温と平年値(1971年~2000年の30年間の平均値)との差を描いたものです。赤い直線が傾向値を示しており(傾向線を引くというのは一つの解釈ですが)、世界の平均気温は120年という範囲では徐々に上昇しているようです。

つまり、過去120年に関しては、世界はゆっくりと温暖化してきたといえそうです。

_web_2

米国のキーリング(Keeling)という気象学者が、1955年から1988年にわたって、世界の気温と世界のCO2濃度の関係をグラフ化していますが、そのグラフ(以下)をじーっと眺めてみると、確かそうなことは、

Keeling_co2_2
        

   ↑気温変化とCO2濃度変化の関係(キーリング 1989)↑
     <根本順吉「超異常気象」所収、矢印は根本氏>

◇両者にはわりにきれいな相関がある。
◇気温がCO2濃度の先行指標になっている。つまり気温が上がると1年くらいたってCO2濃度が上がり、気温が下がると1年くらいたってCO2濃度が下がることが多い。その逆(CO2濃度が上昇したので気温が上がった)ではなさそうである。

さて、中国やインドなどでCO2排出量が急増し始めるのは以下のグラフでわかるように1990年代に入ってから、その他の国々での排出量の増加は21世紀になって顕著になります(世界のCO2排出量の推移 <日本エネルギー経済研究所>)。人間経済によるCO2排出量と世界の気温との関連に興味があるので、ここでは1980年から現在までの世界の気温の変化(平年値に対する差分:各年が平年値よりも何℃くらい暖かいか寒いか)をすぐ下に並べてみます。

 

Co219702007web_3

   ↑世界のCO2排出量の推移(日本エネルギー経済研究所)↑

1980_2010web_2
                     

                                 ↑ 気象庁↑

この2つのグラフから読み取れることは、

(1)1980年から2000年くらいまでは世界の気温と世界のCO2排出量との間に相関があるようだ。
(2)しかし、2001年から2010年にかけては、気温はほとんど変化していないと僕の目には映るが、CO2排出量は大きく増加している。

OECDでは、排出権売買などに必要なデータということもあるのか、あるいは市民の啓蒙用なのか、世界全体と各国別のCO2排出量 (CO2 emissions from fuel combustion) をホームページで公開しており、そのデータ(とりあえず手に入るのは2001年から2008年まで)と上述の気象庁の気温変化データを重ねあわせると、以下のようなグラフが同じような感じで作れます。

Co2web_2

人間が化石燃料を燃やして排出するCO2が、世界の温暖化の主な原因なら、人間によるCO2排出はこの10年間(ここでは2001年から2008年まで)は毎年継続して増加し続けているので「各年の年平均気温と平年値との差」が少しずつ拡大していくのが自然です。

しかし、観察できる事実は、

◇2001年から2008年までの世界全体のCO2排出量は、毎年継続して増えているが、2001年の236億7500万トンと2008年の293億8100万トンを比べると、増加割合は24%である。
◇2001年から2008年までの世界の平均気温はわずかに下がったともいえるし、ほぼ同じくらいであるともいえる。
◇少なくともこの8年に関しては、化石燃料から排出されるCO2の増加と世界の気温は、CO2排出量が相当に増加しても気温は上昇しないという意味において、ほとんど無関係であるらしい。

つまり、いくつかの基礎データを見くらべてみると、

◇いままでのところ、過去120年くらいでは、気温の上昇と地球上のCO2の量の増加とが相関している。なんらかの原因でCO2が増えたから気温が上昇したのか、なんらかの原因で気温が上昇したのでCO2が増えたのかはわからないが、気温上昇がきっかけになってCO2が上昇しているように見える。

◇地球でCO2が増える原因には「自然現象によるもの」と「人間の経済活動のなかで化石原料(燃料)を燃やすことによるCO2の増加」の二つが考えられるが、少なくとも過去10年(1998年くらいから2008年にかけての10年)は、人によるCO2の排出量が相当に増加しても、気温には変化が見られない。つまり、CO2が増加する原因は自然現象によるものが圧倒的に強くて、人間の経済活動による影響はわずかなものであるようだ。だとすると、気温が上がったので、CO2が増えたという「気温の上昇→CO2の増加」という指摘も納得できる。

◇ ◇ ◇

原子力発電を減らして、化石燃料発電を増やしても、地球温暖化に影響はなさそうです。より慎重な表現をすると、原子力発電を減らし化石燃料発電を増やしても、それくらいでは地球温暖化などできません。わずかに影響があるかもしれないが、自然現象によるものとくらべるとその影響力はわずかです(ある専門家は3.3%と計算)。実際のところ、21世紀の最初の10年では、ほとんどその影響が見られません。だとすれば、化石燃料発電にとりあえずさっと比重を移し替え、その間に、プロセスの一部を石油や石炭にできるだけ依存しない効率の良い代替エネルギーを発見・開発したいものです。原子力関連の国家予算はそのまま名前を変えて、核廃棄物の超長期の処理に必要なお金を除いて、原子力以外の代替エネルギー開発にふりむけたらどうかなと思っています。

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