ブランドが壊れるのは速い
報道記事によれば、内閣府の食品安全委員会は、日本で現在設定してある食品中の放射性物質の基準値が、国際基準に比べて厳しいので、健康に被害が出ない範囲で緩めるように答申し、その方向で調整が進むそうです。
また、民主党の幹事長も、「農産物の出荷停止や摂取制限の目安となる放射性物質の基準値について、『少し厳格さを求めすぎている』と述べ、風評被害を招かないためにも見直しが必要との認識を示した」「『心配ないものは心配ないときちっと言えることが必要だ。科学的な厳格さを求めすぎれば風評被害になる』と指摘した」そうです。(朝日新聞)
そういうことになると、これは農産物・畜産物・海産物・加工食品全般に適用されるのでしょうから、放射性物質に関する日本の食べ物の基準値は世界では「並」「普通」ということになります。
日本は、「世界での並の基準・通常の水準を超えた高いレベルの品質」が丁寧に作りこまれた各種製品の生産国であるという認識が世界で浸透しており、これを「ジャパン・ブランド」と呼んでさしつかえないと思いますが、農産物や畜産物、加工食品も同じで、だから、最近は中国でも、食の嗜好性・指向性の変化にともなって、日本の生鮮食材や加工食品がプレミアム食材・プレミアム食品として購入され消費されています。
今の基準を厳しすぎる暫定基準と呼び、それを並みの水準に引き下げることは一つの考え方ではあるし、限定された地理空間と限定された時間幅では、あるいは効果を発揮するかもしれません。「霞が関の『野菜たっぷり弁当』」という記事で書いたような提案が、本気で官庁街の霞が関周辺で同時に実施されたら、とても有効だと思います。
しかし、これがその場しのぎ対策・緊急対策としてはうまくいったとしても、これをなし崩し的に定常的なものにしてしまうと、「その場しのぎ効果」は「日本が今まで構築してきたブランドイメージの維持」とのトレードオフになります。こういう付け焼刃をやっているとせっかくのジャパン・ブランドに傷がつきます。いったん信頼を欠いたブランドが壊れるのは速いものです。
リスクを回避しようとする賢明な消費者は、そうした泥縄式のやりかたに愛想をつかして独自の食材購入基準を持ち続けるかもしれませんし、またこれは、BSE問題が解決されていないにもかかわらず日本への牛肉輸出をゴリ押ししている米国を非常に喜ばせることにもなりかねません。
彼らにとっては、これで確実な突破口が見えてきたことになります。「心配ないものは心配ないときちっと言えることが必要だ。日本の検査基準に科学的な根拠があるとは思わないが、かりにそうだとしても、科学的な厳格さを求めすぎれば日本はグローバルな風評被害を引き起こしていることになる。放射線物質でそうしたように、日本の基準を国際基準程度に緩和してはどうか」と大きな声で指摘することでしょう。
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