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2011年3月23日 (水)

域外移動

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物理的に日本という住む土地・住む場所がなくなった時に、はたして日本人は海外で生きていけるかというのが小松左京の「日本沈没」のひそかな問いかけだったと記憶しています。40年近く前に発売された新書版の本です。再読しようにも現物がそばにないので確かめようがありませんが、今回の東北と関東の地震と津波で、そのことを思い出しました。

以前、北海道から出たがらない若者についての記事を地元の新聞(のインターネット版)で読んだことがあります。北海道の若者の外に出たがらない、北海道に残りたいという気質が、若い労働人口を蓄積し、それが結果として自動車部品メーカーやコールセンターの優秀な人材供給につながったという話です。

僕は散髪は配偶者と同じお店(つまり、オヤジのやっている理容店ではなく、美容室)のお世話になっていて、お店の従業員である20歳台前半の男の子や女の子といろいろと雑談するのを楽しみにしています。彼らに聞いても、たとえば引っ越して原宿や青山の美容室に勤めるといった指向性はほとんど持っていない。 東京は観光旅行や買い物の場所かもしれませんが、働く場所ではないとのことです。

香港に住んでいた中国人の知人の話です。1990年代に香港に出張した折に何度か一緒に働く機会があったのですが、香港が中国に返還される前にその知人の一家は、両親と兄家族がカナダに、本人家族は米国に、弟家族はオーストラリアにとバラバラな地域に移住していきました。カナダも英語圏とすると、英語圏という共通項はあり、また華僑のネットワークがすでに整った場所には違いないのですが、家族がそれぞれの単位で異なった地域へ住むという家族全体での危険分散を考えた移住だと思います。どこかの国が悲惨な状況になっても他の国が安定していればなんとかお互いに助け合える。

地盤が沈下して以前の生計の立て方・暮らし方ができなくなった方や、とくに福島の原子力発電所の近くに住んでおられた方々は、住み慣れた場所をはなれて別の場所で暮らすという「域外移動」を余儀なくされています。

域外移動が必要な事態が起こるかもしれないということを日々の生活の中で織り込み済みの場合は前もって備えをしてあるかもしれませんが、それが急な事態でまた原子力発電所に関係する場合には、ことはそれほど簡単ではありません。

原発は全国各地の比較的過疎な海沿いの町に17カ所(54原子炉)分散配置されており、原子力発電所から30キロメートル以上の「相当に」安全な場所へ急に域外移動しようとしても、日本で住む場所は限られてきます。太平洋に面した本州最北部の核燃料再処理工場(試運転中)での事故の可能性を考慮すると、安全な候補地は極端に少なくなります。

短期の避難ならまだしも、それが長期の移住ということになると、そういうことができるのは安全な場所に親切な親戚がある、懐にけっこうな余裕がある、仕事が場所を選ばない種類のものであるといった条件を満たす一部の人たちに限られます。

僕は、水力発電や火力発電のような原子力以外の方式や素材による発電を好みますが、その理由は、火力や水力の場合はトラブルが起こったところでその範囲は限定的であり、原子力発電で出る放射性廃棄物の処理にともなう不確実さやわかりにくさとは縁がないからです。不確実さやわかりにくさという言葉を使ったのは、放射性廃棄物(核のゴミ)の安全な処理方法が、集団的な無意識を装って、先送りされていると思われるからです。現在のところ核のゴミの安全な処理方法はないのだが、そのうち誰かがとても安全な解決策・封じ込め策を思いつくだろう。その時まで、関係者はみんなで「しかと」。

石油やガスや石炭などの化石原料の追加使用による大気中のCO2の増加などはそれに比べるとたいしたことではない。IPCC報告などとは違って、大気中のCO2濃度は、人間の排出するCO2からはわずかな影響しか受けないというのが最近の調査分析結果である。火力発電で原油やガスが不足するなら、日本での埋蔵量は非常に少ないようですしほとんどの炭鉱を埋めてしまったのですが、もっと石炭に依存してもよい。

化石原料の埋蔵量には限りがあり、このままエネルギー消費が増加していくと残された期間はそう長くはありません。しかし、石炭などへの依存度を高めながらその期間を延長し、その間に、水力や火力の代替方式ということになっている原子力を置き換える別の安全な代替方式(石油やガスに近い生産効率を持つ方式や素材)を実用化する以外に方法はなさそうです。

その代替方式に賛成するかどうかの切り分け視点は、その方式の全体的な効率と、それからそれによって安心なコメや野菜や魚や水が維持できるものであるかどうか。つまり、原子力は水力や火力をかりに量的には代替できたとしても、質的には代替できません。

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