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2011年4月26日 (火)

原子力発電のコストは安い?(その2)

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「水力発電のコストが違いすぎるのだが、それ以外は、まあ、そういうことか」ではそれ以上は先に進まないので、このような比較や分析を、たとえば有価証券報告書のような上場企業の第三者への公表データや官公庁の公表データといったオープンなデータだけを使いながら、もっと細かく、そしてもっとマクロに推し進めた資料はないかと捜してみると、どうもぴったりのものが、「内閣府 第48回原子力委員会定例会議」(平成22年9月7日)の配布資料にありました。その資料のタイトルは「原子力政策大綱見直しの必要について-費用論から見た問題提起-」(立命館大学・大島堅一教授)です。

その資料では、公表データだけを使いながら、電源別のコストが長期間にわたり把握されており、また、損益計算書上の製造原価(売上原価)というランニングコストだけでなく、発電所建設に関する政府補助金や、原子力発電特有のバックエンドコスト(使用済み核燃料の処理費用や放射性廃棄物の処理費用、あるいは安全に廃炉にするための費用など)なども視野におさめられています。

「原子力政策大綱見直しの必要について-費用論から見た問題提起-」は内閣府の公開資料なのでその一部を引用させてもらって話を進めます。

まず、電源ごとの発電単価(発電コスト)ですが、これは電力各社の有価証券報告書総覧から作成したもので、以下のようになっています(資料の7ページ)。

__

表の中に「揚水(ようすい)」とか「原子力+揚水」という表現が出てきます。揚水発電(ようすいはつでん)という用語は、最初は耳慣れないのですが、次のような意味です。

原子力発電所は昼も夜も一定量の電気を生産し続けないと安定して安全に働かないので、たいていは夜間電力の処理が問題になり、つまり夜は消費してくれる人が減って電気が余ってしまうのだがそれをなんとか使わないといけないという問題が発生し、そうなると内部で夜に電気を消費してくれる見えざる消費者を作り出すしかありません。それが揚水発電所です。

原子力発電の安定運用を支援することが揚水発電の基本の目的ですが、その方式は水力発電なので水力発電の一部という分類も可能です。その場合は「水力発電」=「一般水力発電」+「揚水発電」となります。

水力発電は高い所から落ちてくる水の力を利用して発電するというものですが、そのためには水が高いところにないといけない。だから、夜に原子力発電所で余った電気を使って水を低い場所から高い場所に移し、午後などの電力需要が大きくなる時間帯にその水を流して水力発電に使うというものです。だから、揚水発電所は、たいていの場合、原子力発電所とペアでつくられます(原子力発電所以外では、定常出力の必要な非常に大型の火力発電所向けにも用意される)。揚水発電所には、緊急時の電力供給という機能もありますが、原子力発電所を助けるための、喩えは悪いですが、地面に穴を掘ってまた埋め直すようなモチベーションの上がらない作業に近い機能を担っているといえるかもしれません。

だから、揚水(ようすい)発電に関する建設費用や運用費用は、原子力発電の付帯設備費用・付帯運営費用となります。つまり、「広義の原子力発電」=「狭義の原子力発電」+「揚水発電」ということです。

次に、エネルギー関係というか発電関係の費用の構造に進みたいのですが、その構造は以下のようになっています(資料の4ページ)。

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この資料が対象としていないのは、「事故に伴う被害と被害補償費用」(上の図の④)で、これは現在、東京電力が福島原子力発電所の事故にともなって頭を抱えている問題です。

そういう費用や補助金の追加処理をしたあとで、再び電源別の発電コストに戻ると以下のように風景が変化します。(資料の15ページ)

___3

どうも、クリーンとかCO2といった風評議論の以前で、原子力発電(原子力発電+揚水発電)が一番コストの高い電力ということになりそうです。

【註】 電源別コストの計算方法や公的財政補助金の電源別の取り扱いロジックについては当該資料の中でまとめられているので、そちらをご覧ください。

◇ ◇ ◇

ここでは、CO2の排出とは縁が薄いのでクリーンなエネルギーという「風評」に包まれてきた(まだ、包まれているかもしれない)原子力発電所の事故にともなう放射線被曝や放射性物質の拡散による外部被曝や呼吸による内部被曝、水や食べ物(農畜産物や魚介類)の摂取による内部被曝の健康への悪影響は考慮していません。

農産物の廃棄処分を余儀なくされた農家や今年の作付を禁止された農家がこうむる損失も考慮の外です。圏外移住をよぎなくされた方々の補償費用もここには含まれていません。それらを考慮したらコストはさらにどう変化するか。これからは、推測値でなく、細かい実績値が実際に代入できます。

<「原子力発電のコストは安い?」の終わり>

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