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2011年4月25日 (月)

原子力発電のコストは安い?(その1)

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原子力発電は他の発電方法よりも発電コストが安いということになっているようですが、本当にそうなのか。風評なのか事実なのか、それがよくわからない。

さすがに最近では「再生紙」を使うことや「マイ箸(はし)」を使うことに生きがいを感じる方々もほとんどいないと思いますが、これらは「風評」の古典的な例と言えるかもしれません。ここで風評という言葉は、事実でないことが事実であるかのような衣装をまとって風のように僕たちを取り囲むこと、という意味で使っています。つまり、再生紙やマイ箸は資源の保護ということで登場したのですが、実は少し大きい視点でそれらとそれらの周りの環境を同時にみると、資源の無駄遣いであることがわかってきたからです(箸については「間伐材の割り箸」、「割り箸の産地」)。もっとも、洞察力のある人たちは最初からそういうことがわかっていたのかもしれませんが。

「CO2温暖化説」というのも、どうも結構壮大な「風評」だったということがだんだんとわかってきました。その「CO2温暖化説」と強く結びついてきたのが「クリーンでコストが安い」とされる原子力発電なので、ある確率で事故が起きると放射線物質をまき散らすことになる原子力発電所が本当にクリーンであるかどうかについてはここでは触れませんが、そのコストについてはできる範囲で調べてみたいと思います。(なお、日本で、最初に原子力発電が導入されたころには「CO2温暖化説」はまだありませんでした。)

最新のデータが2004年に計算されたものでなぜそれ以降がないのか不思議なところもあるのですが、各種電源のコスト比較は電気事業連合会のホームページや資源エネルギー庁のホームページから簡単に手に入ります。(以下の横棒グラフ)

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(電気事業連合会「原子力・エネルギー図面集」2011年版より【もともとの出典は、「電気事業分科会コスト等検討小委員会資料」<2004年1月>)

【註】送電端とは:発電機が発電した電力量そのもので効率を計算するのが発電端効率。発電端電力量から発電所内で消費した電力量を差し引いて効率を計算するのが送電端効率。

グラフを見ると、設備の運転年数によってそれぞれの発電コストが違ってきますが、ここでは原子力は他とくらべてコスト優位性を持っているようです。

すこし寄り道をします。

たいていの場合、とくに同じような品質の一般的な工業製品(たとえばコピー用紙)の値段が他よりも高いという場合は、原材料が必要以上に高いか製造方式などに無理が生じているかなので、市場からは自然と淘汰されていくようです。

もう少し細かく見ると、値段の高いものは材料費が高いかどうか(食べ物だといい食材や天然の食材あるいは無農薬野菜などを使っているかどうか、あるいは、良質の塩や醤油や酢を使っているかどうか)、生産設備にお金がかかるかどうか(農産物生産だとハウス栽培のハウスやトラクターなど)、生産工程が複雑か、食べ物であれば生産工程が丁寧かどうか(無農薬栽培や有機栽培など)、それから、広い意味では生産設備の一部ですが、生産のあとの処理費用(たとえば、家畜の糞尿処理、あるいは化学工場の廃液処理や原子力発電所の使用済み核燃料の廃棄処理や廃炉処理など)にどれくらいお金がかかるかなどの要素で決まってきます。

生産全般に関する費用は、最初に設備を建設する費用、その後、材料を購入し設備のメンテナンスをしながらモノを製造する費用(いわゆるランニングコスト)、生産中止後のあとしまつの費用とわかれます。またそれ以外の付帯設備・付帯費用もあり、そういうものはコスト計算の目的によってその製品の原価に直接的に取り入れたり、あるいは間接的にある比率で割り振ったりします。

株主や証券アナリストに配慮の深い上場会社の年度別の有価証券報告書や四半期ごとの決算報告書には、企業全体の経営成績だけでなくセグメント別の経営成績が同時にまとめられています。第三者が興味を持つセグメント別の経営成績とは、主要ビジネス別の経営成績ということで、つまり電力会社の場合は水力発電や火力発電や原子力発電、そして風力発電のような新しい発電方式ごとの売り上げ推移や損益状況の推移のことですが、それがそういった資料からはなかなかすっきりとは見えてきません。(電力会社は電気事業・情報通信事業・その他といった区分に興味があるようで、それはたしかにセグメント別の区分ですが、電気事業の占める割合が大きすぎるのであまり意味がある区分とは思われない。)

電力会社は大規模上場企業なので有価証券報告書が公表されています。電力10社の中から北海道電力と関西電力の平成21年度の有価証券報告書を見ることにします。

なぜ北海道電力と関西電力かというと、僕の住まいは札幌なので北海道電力、東京電力についで大きいのが関西電力なので関西電力。ともに、原子力発電量の割合の相対的に大きな電力会社で、2社の原子力発電所はともに日本海側に建設されています。

損益計算書の構成は、「営業収益」(電灯料や電力料など)から、「営業費用」(水力発電費・原子力発電費などの電気の製造原価、送電費・変電費・配電費などの間接費、それに販売費・一般管理費などの経費の合計)を差し引くと「営業利益」が求められるという構造ですが、コスト計算・コスト比較が目的なので、ここからは「水力発電費」「火力発電費(汽力発電費+内燃力発電費)」「原子力発電費」「新エネルギー等発電費」を持ってきます。

また、報告書の始まりに近い場所には「生産、受注及び販売の状況」という項目がありそこに「水力発電電力量」「火力発電電力量」「原子力発電電力量」「新エネルギー等発電電力量」が記載されているので、たとえば「火力発電費」を「火力発電電力量」で割れば、「火力発電のコスト」が求められます。

その計算を、北海道電力と関西電力の平成21年度の有価証券報告書(平成22年度のものはまだなので)の数字を使って行ってみると、以下のような横棒グラフになります。関西電力では「新エネルギー等発電費」が記載されていないので「ゼロ」となっています。

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最初のカラフルな棒グラフと2番目のグレー系の棒グラフを見比べて気が付くのは、水力発電のコストが違いすぎることですが、それ以外は、まあ、そういうものかという感じです。

<(その2)に続く>

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