続・ブランドが壊れるのは速い
「ブランドが壊れるのは速い」という記事で書いたように、今まで長年にわたって維持してきた、野菜などの食材に関する安全基準値をその場しのぎの対策で甘くするのは、高品質で安心・安全という「ジャパン・ブランド」のブランドイメージをこれからも維持していくためには、けっして得策ではないと考えています。
僕たちは、輸入野菜や輸入食材が安全であるかどうかに敏感で、その場合の安全対策とは、「国際基準値よりも安全サイドの方向に厳しく設定した国内基準値」よるスクリーニングが、輸入食品に対して実施されていることですが、そういう基準値を日本では現在、急に緩やかにしようとしており(調整中)、それを各国はじっと見ています。日本の農産物・畜産物・水産物の輸出量は少ないですが、日本の野菜や食材や加工食品を輸入している国はあるので、そういう国では、日本の食べ物に対しては、今後より厳しいチェック態勢をとるかもしれません。
「外国には、日本全体の農産物が汚染されているように考える国がありそれは風評被害である、けしからん」という意見があり、それは僕たちにとっては事実なので、もっともだとは思います。しかし、こういう場合はそれぞれの側からの視点でできるだけフェアに考えることにしています。
ここで中国を例にとるのは中国に失礼かもしれませんが、中国からの輸入食材や輸入食品では食の安全にかかわる問題や事件がときどき発生してきたので、よしとします。
かりに、中国の河北省で生産された食材がある種の農薬で基準値を超えて汚染されており日本への輸入が禁止されたとします。僕たちは通常、中国に詳しい人を除けば、同じ種類の食材をみて、これは雲南省の産だから安全、吉林省・遼寧省で栽培されたから安心、福建省で生産されたから大丈夫という具合には考えません。そもそも食品表示欄には輸入国表示(中国、イタリア、米国、フィリピン、台湾など)はありますが、個別生産地をプロモーション目的で商品パッケージにでも書いていないとその国のどの地方で栽培・生産されたのかは僕たちにはわかりません。消費者にわかるのは、中国産ということだけ。
そういう日本の制度や仕組みがかならずしも甘くないとすると、たとえば日本の野菜や果物、水産物を輸入している国の消費者がより安全サイドに考えて、日本からの食べ物を全体としてスクリーニングし始めたとしても、「君たちは妙に騒ぎすぎだよ」とは必ずしもいえません。
特に今回のような大気中の汚染、土壌の汚染、海の汚染が日本の一部の地域だけとはいえ発生し、福島原発から放射線物質がどのように大気中に拡散していくかの日々のシミュレーションが欧米の公的機関のホームページで簡単にみられる状況では、とりあえず日本からの食材には安心な状況が確認できるまでは手を出さないようにしようという行動は、残念ながら、僕たちが文句をつける筋合いのものではありません。
そういう状況の文脈において「食品中の放射性物質の基準値を健康に被害が出ない範囲で緩めるように、基準値の緩和を調整」するというのは、日本の消費者にとっても訴求力がないし、日本からの食材や食べ物を輸入している外国の消費者にはディ・マーケティング効果しかおよぼさないように思われます。
【註:ディ・マーケティング: ディ・マーケティングとはDe-Marketingで、マーケティングの強い反対語。マーケティングが売上の増加やものごとの活性化を目ざすものなら、ディ・マーケティングはその逆で、売上の減少やものごとの不活性化を目的とする。】
蛇足ですが、4月1日付の記事を引用します(『・・』部分、なお下線は「高いお米、安いご飯」が追加)。
『【シンガポール時事】シンガポール政府は31日、福島第1原発事故を受けて実施している日本産輸入食品に対する放射能検査で、静岡県産の小松菜からヨウ素131など3種類の放射性物質を新たに検出したため、静岡産の野菜、果物の輸入を即日停止すると発表した。
同国政府によると、静岡産小松菜の放射性物質の検出量は、ヨウ素131がサンプル1キロ当たり648ベクレル、セシウム134が同155ベクレル、セシウム137が同187ベクレル。このうちヨウ素131の量は、シンガポール政府が参照する国際ガイドラインの1キロ当たり100ベクレル以下という基準を上回っている。
日本産食品に関してシンガポールは24日に福島、茨城、栃木、群馬の4県産の牛乳、乳製品、果物、野菜、魚介類、肉類の輸入停止を決めたのに続き、千葉、愛媛、神奈川、東京、埼玉の5都県の野菜、果物の輸入停止も相次いで決定。同国の輸入停止措置は静岡県で10都県に広がった。[時事通信社]』
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