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2011年5月23日 (月)

野菜(摂取)不足と100ミリシーベルト(その3)

野菜(摂取)不足と100ミリシーベルト(その2)」の「その後」なので、こういうタイトルにしました。福島第1原子力発電所の原子炉が冷温停止状態になるにはまだ8~9か月近くはかかりそうなので、それまでは福島原発から放射性物質が「安定的に」放出され続けることになります。そういう状態が継続した場合に、当該原子力発電所から40㎞から80㎞離れた地域の被曝総量は1年間でどの程度なのかに関心があります。理由は単純で、(その2)で書いたように、北海道にある泊(とまり)原子力発電所と札幌市の距離がだいたい60㎞~80㎞だからです(ただし、札幌は泊原発の東側なので、もし同じような種類の事故になったら西風の影響が大きい)。

ざわざわ、あるいはふわふわと飛んでくる放射性物質による被曝量(外部被曝量と内部被曝量の合計)と安全水準との関係に関して専門家の間でも意見が分かれているようです。一致しているのは、ある水準を超えると癌などの発症確率が高まってヤバイということですが、そのヤバイ水準、つまりヤバイとされる年間の総被曝量ないしは蓄積被曝量が一定しません。1ミリシーベルト(およびその考え方の延長線上にある3か月で1.3ミリシーベルト)と主張するグループと、100ミリシーベルトと主張するグループがいて、ついでにその中間の20ミリシーベルトいう緊急勧告や暫定値も登場し、僕たちのような一般生活者というか、そういうことに関しての非専門家は、専門家の主張から納得できるものを選択しそれに基づいて自身の判断で行動することを求められているのかもしれません。

リスクがあることは合意されており、そのリスクを引き起こす条件の最小値の範囲が1から100の間のどこかということであるようなので、安全サイドで物事を考える人は1を、危険の好きな人、あるいは細かいことは気にしないというタイプの人は100を選択することになるのでしょう。あるいは、結局はよくわからないので適当な中間の値を選ぶ方もいるかもしれません。

さて、福島県内の以下の4カ所の公表された「空間線量」(福島県災害対策本部の用語だと「環境放射能測定値」)を面倒くさいなと思いながらも3月中旬から記録しているのですが、この4カ所とは、計測データが公開されている福島県の12カ所から40~80㎞の範囲に入る4カ所を僕が勝手に選んだものです。単位はマイクロシーベルト/時。原則として毎日午後2時の計測データを使っています。午後2時に特別な意味はありません。測定場所は駐車場や建物の入り口付近となっているのでおそらく地上1メートルから1.5メートルくらいのところで測っているのだと思われます。

◇福島第1原発から北西約63㎞
◇福島第1原発から西約58㎞
◇福島第1原発から西南西約81㎞
◇福島第1原発から北西約39㎞

測定値に24時間と365日をかけると、その日の線量がその日以降1年間持続した場合の年間線量が計算できます。放射性物質による被曝総量(累積)は外部被曝量(累積)と内部被曝量(累積)の合計で、内部被曝量は呼吸による内部被曝と食べ物(農畜産物や魚介類や水)の摂取による内部被曝の合計なので、リスクをどう考えるかによって係数は違ってきますが、おおよその目安を簡単につかむために専門家の考え方を参考にして以下の簡単な計算式のように考えます。

そして、ICRPの緊急声明の一節が「(原発が制御された後で)一度汚染された土地に住み続けるための推奨範囲は1年間に1~20ミリシーベルト」となっているので、その上限値である20ミリシーベルトと比べてみます(ICRP発表の"Fukushima Nuclear Power Plant Accident"と題するメッセージ<2011年3月21日>)。なお、なぜ1~20ミリシーベルトという範囲なのかはよくわかりませんが、ICRPによる長期の推奨基準値は年間1ミリシーベルトであり、20~100ミリシーベルト・ゾーンに入ると危ないという判断なので、差し引き、年間1~20ミリシーベルトということになったのでしょう。

年間総被曝量 = 年間外部被曝量 + 年間内部被曝量 = 年間空間線量 * 2倍

3月11日から2か月と少し経過した5月20日までの4地点の線量推移のグラフ(折れ線グラフ)と、5月20日の線量を上の式に当てはめて計算した4地点の今後1年間の総被曝量の棒グラフは以下のようです。3月は相当に高い線量が観察されたので、この累積値は、今後の線量のゆるやかな低下を考慮しても実際よりも低いと思いますが、目的が私的な目安の計算なのでよしとします。そこで汚れた土などそのままに、普段の地産地消の日常生活をしていたらそうなるであろうという値です。

【福島第1原発から40~80kmのほど離れた4か所の1時間当たりの空間線量 <単位はマイクロシーベルト>】

_20110520

【5月20日の1時間あたりの線量が1年間持続した場合の想定総被曝量 <単位はミリシーベルト>】

20110520220msv_2
さて、最後に小さな新聞記事を引用します。このままだと、福島原発で経験した事故と「同じような種類」ではない種類の事故の可能性があるかもしれません。

『MOX燃料製造 安全検査を申請 北電、泊プルサーマルで ・・・ 北海道電力は20日、泊原発3号機(泊村)で計画中のプルサーマル発電で使用するウラン・プルトニウム混合酸化物 (MOX) 燃料体の製造に向け、経済産業省に安全性を確認するための検査を申請した。・・中略・・問題がないと判断されれば、早ければ2012年春の定期検査で装填する計画という。』(日本経済新聞「北海道経済」2011年5月21日、【註】燃料体の製造はフランスの会社に外部委託)

プルトニウムというのは使用済み核燃料を化学処理して取り出したものですが、それを使ったMOX燃料は通常の原発(軽水炉)で使うウラン燃料よりもはるかに強い放射能を放出するし、使用済みのMOX燃料を500年間は地下に埋めることもできないといった厄介さがあるので、つまりとてもリスクが高いということになっているので、世界でもフランスと日本以外は手がけていません。

この紙面の担当者は黒いユーモアが好きなのか、プルトニウム混合原料を使った原子力発電記事のすぐとなりに、『札幌市長と知事 相次ぎ中国訪問 観光の安全性PR』という見出しの記事を掲載しています。

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