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2011年5月27日 (金)

主要各国の「農業の対GDP寄与率」と「穀物自給率」など

農業のGDP、および農業と食べ物関連産業のGDP」の関連記事です。

昨年(2010年)の10月19日に「国内総生産(GDP)構成比1.5%の農漁業を守るために、残り98.5%を犠牲にすべきではない」という趣旨の発言を当時の外務大臣がされましたが、当時の報道記事をそのまま引用すると以下のようです。(『・・・』部分)

『◇◇外相は19日午後の講演で、農林水産業関係者が反対している環太平洋連携協定(TPP)への参加について「わたしは入るべきだと思っている」と強調した上で、「日本の国内総生産(GDP)における第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」と述べ、反対論を強くけん制した。一方、日本の経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)締結状況は隣国の韓国に比べて格段に遅れていると指摘。・・後略・・』(時事通信 2010年10月20日)

これは、発言者が発言効果を狙ったレトリックを含んでおり、それをもっと極端にして続けると「98.5%のかなりの部分を支援するために、1.5%がなくなってもさほど困らないだろう。」となるかもしれません。

当時の外相とは異なる考え方を持つ人は「1.5%と98.5%」という同じ数字を使って「わずかGDPで1.5%の農畜産業と漁業が、残りのGDP 98.5%の産業従事者の食を支えている、食べ物は生存の基本である、その意味は大きい」といった趣旨の発言をすることもできます。

3つの項目を並べてみます。最初の2つが比率を表す数字で、3つめがYes/Noという組み合わせです。

日本は、次のような組み合わせになります。
「1.41%、28%、No」

いくつか、同じ組み合わせで並べてみます。

「1.11%、150%、Yes」
「0.80%、102%、No」
「1.74%、164%、Yes」
「2.60%、 30%、No」

項目の意味は左側が「農業の対GDP寄与率」、真ん中が「穀物自給率」、右側が「ネットの農産物輸出国か?」で、だから日本の場合だと「日本の農業GDPの日本全体のGDPに対する寄与率は、1.41%」(国連統計2009年)、「穀物の自給率は28%」(農林水産省2007年)、「農産物輸出額から農産物輸入額を引いた値がプラスなら、ネットの農産物輸出国なのでYes、逆ならNo、なので日本はNo」(FAOSTAT 2008年)ということです。先ほどの4つは以下の4か国です。

米国  「1.11%、150%、Yes」
ドイツ  「0.80%、102%、No」
フランス「1.74%、164%、Yes」
韓国  「2.60%、 30%、No」

国連統計(2009年) によれば、リベリアやソマリアのように農業の対GDP寄与率が40%を超えている国が世界211か国の内、12カ国あります。世界の主要国や我々の比較的に近所で気になる国をピックアップして、各国の農業GDPがその国全体のGDPに占める割合(農業の対GDP寄与率)とそれらの国の穀物自給率などを、上の4カ国以外にも、眺めてみます。他の複数の国との比較という客観的な視座でこの1.5%を見た場合、この1.5%の意味するところは何なのか。

世界の農業GDPの合計を世界のGDPの合計で割ると、世界における農業のGDP寄与率が計算できますが、その値は3.81%(2009年)です。日本の1.41%に比べると高い比率ですが、世界経済における農業の付加価値の大きさは、世界経済に占める工業生産とサービス産業の付加価値が圧倒的に大きい時代なので、農畜産物や海産物がないとヒトは生きていけないにもかかわらず、それほど高くないともいえます。つまり食に関しては、パイのひとかけらであるところの3.81%が、パイの残りの96.19%を支えていることになります。

下の表は主要先進国や主要農業国の「農業の対GDP寄与率」、「穀物自給率」と「その国がネットの農産物輸出国かどうか」をまとめたものですが、世界一のコメ輸出国であるタイの「対GDP農業寄与率11.62%」や、ネットの農産物輸出国である「ブラジルの6.06%」、「ニュージーランドの5.49%」、そして「オーストラリアの2.44%」は別格としても、「対GDP農業寄与率」が1%台の「フランス」や「オランダ」、そして「対GDP農業寄与率」が日本よりも低い「米国」が「農産物のネットの輸出国」となっています。

日本の1.41%よりも農業の対GDP寄与率が低い先進国や寄与率が2%に満たない先進国もけっこう目に入りますが、違いも見えてきます。違いとは、そうした国の穀物自給率の高さと、日本と韓国とオランダ(Netherlands)の穀物自給率の低さですが、さらに、「日本と韓国」と「オランダ」の差は、オランダはジャガイモの生産が輸出をするくらいに盛んで、またジャガイモを主食としている国なので、ジャガイモを穀物、すなわちもう一つの主食と考えると、ヒトの穀物自給率は100%を越えていることです。(オランダも、日本と同様、大豆・大豆粕(かす)や小麦は輸入しています。)

穀物自給率が100%以上の国、ないしそれに近い数字の穀物自給率を持つ国というのは、基礎農産物が確保されている国ということで、不測の事態があった場合でも一応国民が飢えることのない農業インフラができているということです。オランダなどはチーズやトマトなどの付加価値農産物に注目が集まりますが、ジャガイモという主食はないがしろにしてはいないようです。つまり、そういう1~2%の農業インフラを備えたうえでの、ハイテク電気製品・電子部品・電子素材であり、自動車であり、衣類であり、流通サービスの輸出なのでしょう。

ではなぜ、日本は1.41%という、英国の0.71%・ドイツの0.8%・フランスの1.74%・オランダの1.72%などと比較してとくには悪くない「農業の対GDP寄与率」を持ちながら、穀物自給率がとても低く、農産物の輸入比率が著しく高い国なのかという根本の疑問は残ります。理由は比較的にシンプルで、そのことの良し悪しについてはここでは触れませんが、大胆に割り切れば、たかだかこの50年くらいの間に食事の内容が大きく洋風に変化したことと、基本食材から料理をつくる家庭が少なくなってきたこと、それにともなって農産物生産面のポートフォリオが変化してきたこと(あるいは崩れてきたこと)です。

食事内容が大きく洋風に変化してきたことについては、ある国の穀物支援政策・穀物輸出政策に影響された部分も大きいと思いますが、そういうジャブがだんだんと効いてきて、それに肉類や油脂を食べることへの急激な傾斜と雑食性(世界各地のおいしいものを食べるし献立に取り入れる)が加わり、穀類や豆類のような基礎農産物も一部を除いて自給できなくなったのが今の状況です。だから1.41%という数字以上にインフラ(とくに供給面)の構図が崩れている。

あとは、20年ほど前からのインスタント食品、レトルト食品、コンビニ弁当、市販の惣菜という一連の流行の動きを重ねあわせたら、この構図の崩れは消費面からも定性的には説明できます。

だから、1.41%がたとえばそのうち半分になってもやむを得ない、食べ物は外から買えばまあ何とかなるだろうというのんきな選択肢は噴飯ものに違いないにしても、消費面と生産面の両面で1.41%の構図を変更しないと、われわれの食べ物事情は自業自得ということになりかねません。ところで、1年ほど前に「2020年に50%」という数値目標を作った方々は、ご飯を食べるということや料理をするということには実際には無関心なのか、消費者の消費の構図にモノ申すことや消費面に立ち入ることに非常に遠慮がある感じで、その遠慮を持ち続けていると、数値目標が未達目標のままで推移するか、その目標がいつの間にか消失するかのどちらかで終わるような気もします。

【先進主要国や気になる国の「農業の対GDP寄与率」、「穀物自給率」、および「その国がネットの農産物輸出国であるかどうか」の一覧表】

Gdp2009rev

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