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2011年5月24日 (火)

生鮮野菜の購入量と、生鮮野菜の消費者層

買い物バスケットの野菜の割合」の続きのような内容です。

総務省の2010年の家計調査の話です。2010年の家計調査とは、一般の家庭が2010年の1年間にどういうものをどれだけ購入したか、どういうものにどれだけお金を使ったかをあらゆる家計簿品目について調べたものですが、僕の関心は野菜に向かいます。「買い物バスケットの野菜の割合」という記事は2011年5月某日にあるスーパーでレジの順番待ちをしている主婦や女性の買い物カゴの中の野菜(や惣菜や加工食品)の量をそれとなく目分量で観察したものですが、「総務省家計調査」では一般家庭の2010年における客観的な野菜購入データが見られます。

すべての生鮮野菜、つまり、トマトやキャベツ、白菜やダイコン、ネギやもやしなどを乱暴にひとまとめにした時の㎏あたりの消費者購入価格は2000年が35.80円、2009年が35.02円、そして2010年が38.38円と推移していて、2010年の㎏当たりの平均価格は2009年より9.6%高くなっています。そういうことも影響してか、2010年の生鮮野菜全体の「購入量」は1年前の2009年と比べて5.7%少なく、10年前の2000年と比べると9.6%減少しています。

生鮮野菜への家計の出費金額を見ると、2010年は2000年よりも3%減少し、20年前の1990年よりも18%少なくなっているので、どうも家庭料理では徐々に野菜を食べなくなってきているといえそうです。

しかし、中には購入量が増えたのもあり、その概要は以下の通り。

◇2000年より2010年の購入量が増えたものは、「キャベツ」「ブロッコリー」「もやし」「生シイタケ以外のキノコ(エノキやブナシメジなど)」の4品目(その他のキノコを1品目とまとめた場合)

◇2009年より2010年の購入量が増えたものは、「もやし」「タケノコ」「カボチャ」「生シイタケ」「生シイタケ以外のキノコ」の5品目

◇2000年よりも購入量が増え、また2009年よりも購入量が増えたのは、「もやし」と「生シイタケ以外のキノコ」(エノキやブナシメジなど)のみ

一方、2000年と2009年の両年からの「購入量」の減少が目立つものは、「ホウレンソウ」「さつまいも」「ジャガイモ」「さといも」「ダイコン」「レンコン」「さや豆」「ナス」などです。

つまり、調理や料理に手間暇のかかる「めんどうくさい野菜」が顕著に敬遠され、安くてボリュームがあり料理に手のかからない「簡単な野菜」(もやしやキノコ類など)の購入が目立って増えたと言えそうです。

では、惣菜や冷凍食品はどうかというと、「惣菜としての出来合いサラダ」への支出金額は2009年よりも2.5%増え、冷凍食品への支出金額は同様に5%増えています。

しかし、この傾向が消費者全体・家庭全体に一様に見られるとは思われません。「ホウレンソウ」「さつまいも」「ジャガイモ」「さといも」「ダイコン」「レンコン」「さや豆」「ナス」などの料理が好きな家庭はあいかわらずたくさんあるはずで、だから全般的・平均的に「めんどうくさい野菜」が敬遠されたのではなく、ある特定の消費者層が手間のかかる野菜料理から離れ始めたと考えた方が、僕には納得がいきます。

「節約」からアプローチすると干しシイタケや切り干し大根、高野豆腐などの乾物がいい食材候補になるのですが、これも戻すのに手間がかかるということになっているのか、人気食材とはなっていないようです。大豆もしかり。しかし、薄くスライスした干しシイタケは調理が簡単なので、パック詰めを商品棚によく見かけます。

僕が信頼している農産物消費者の分類モデルは以下の通り(下の図: 福岡都市科学研究所<当時>調査 2003年)ですが、野菜などのいい食材と料理が好きな家庭は自宅で料理した野菜などをいっぱい食べることがライフスタイルの一部なので、その層(図では右上の層と右下の層)で野菜購入量・野菜消費量が減るとは考えられない、ないしは、考えにくい。

不景気の影響と出来合い惣菜・レトルト食品・電子レンジ向け食品への傾斜が重なって、左上の「分裂型消費者層」において特に、生鮮野菜離れ、調理に手のかかる生鮮野菜の敬遠が進行したと推測しています。そう考えると「買い物バスケットの野菜の割合」の光景とおおよそ整合性がとれます。

「分裂型消費者層」とは少々わかりにくい名前ですが、「アンケート調査等では『食の安全が一番』『地産地消が大切』と答えるが、実際の消費行動では、スーパーの外国産特売品に飛びつく層」のことだそうです。

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この図を何種類かの野菜を生産する農家の立場から見ると、自分の生産する野菜のそれぞれがどの消費者層に向けたものかを決めておくと有利だということになります。直接に消費者に販売する場合、小売チャネル経由で消費者に販売する場合、あるいは小売チャネルの前に中間流通を通す場合といった複数の経路がありますが、どの場合でも、また複数の経路を同時に利用する場合でも、経路の向こう側に常に消費者の姿(ここでは消費者の層)を想定することは重要です。それに応じて、望ましい小売チャネルも決まってきます。野菜と顧客層と小売チャネルは一つのセットです。

生産している複数の野菜が同じ消費者層を向いたものであれば、小売チャネルも、地理的な分散はあってもその性格が似たようなものになり経験を集約できますが、土壌品質の維持や活性化などの目的で、2つの違った消費者層向けに意識的に野菜を作り分けているような場合は、チャネルとのお付き合いが少しむつかしいものになります。

買ってもらいたい消費者の層を最初に決めて、それからその消費者層が好む野菜を選択するというスマートなアプローチもあり、これは、最初からそうできていればいいですが、そうでない場合は野菜の種類を増やす機会にそういう仕組みをとりいれ、そういう考え方に全体の枠組みを移していくこともできると思います。

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