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2011年6月21日 (火)

野菜の施設栽培、あるいは植物工場(その1)

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先日、植物工場関連のセミナーがあったので、面白そうなコマだけに参加しました。主催者か共催者かどちらかの意図でオランダの匂いが強いのですが、受講料を支払うセミナーではないので、そういうバイアスがかかったものとして拝聴します。施設園芸で生産された花や野菜、そして施設園芸のハードウェアとソフトウェア(ノウハウ)を日本に輸出したいという意欲が見えますが、そういうものを日本が導入しても自分たちの施設園芸の地位が揺らぐことはないと考えているのかもしれません。

オランダは穀物自給率がとても低い水準にありながら農畜産物の貿易に関してはネットの農畜産物輸出国なので、その農業の状況や主食や副食や全般的な食糧事情に関して以前から興味がありました。だから、こういうセミナーは内容を拝聴するということもあるのですが、それよりも、関連事項をいろいろ考えたり調べたりするための刺激をもらうといった意味合いが僕にとっては大きい。

(1)植物工場はどちらかというとプロセス型の装置産業みたいなものだし、そういう環境だと、野菜は、夏は冷房、冬は暖房と実に要求がわがままなので建設コストや冷暖房・空調関連のランニングコストは相当に膨大なものになるはずだがそれにどう対応しているのか、(2)施設園芸というか植物工場に向いている野菜の範囲は限定されているので、そのままだとみんなが同じような種類の野菜を実に効率よく生産し、だから市場はそういう野菜であふれ、つまりは値崩れを起こし自分で自分の首を絞めることになるがそのあたりをどう配慮しているのか、(3)オランダにおける施設園芸農家・植物工場農家の平均的な面積規模や栽培面積の分散状況はどうなのか、(4)オランダ全体の農畜産物生産量や生産高と比較した場合、施設園芸や植物工場による生産高はどの程度の割合なのか、喧伝されているほど大きいのか、それともそれほどでもないのか、農産物輸出という点では全体に対してどの程度の影響力をもっているのか、などなど。

上記の4項目に関して必ずしもその順番通りではなく寄り道などもしながら少々考えてみます。

平飼いや放し飼いの鶏の生んだ卵の方が、ケージ(鳥かご)の狭い空間でエサを食べ続ける鶏の卵よりもおいしいし、スープストックに使う鶏ガラとなると明らかに両者に質の違いがあらわれますが、植物も動物もそういう意味では基本的に同じだと考えています。つまり、土で育った野菜や露地栽培野菜が、栽培養液で育ったものよりも元気で好ましいというけっこう本能的な考え方です。

土でよく育つ品種(たとえばそういう種類のトマト)を、整備された植物工場に持っていってもその環境では生理障害を起こしてしまい、土壌環境ほど生産性が高くないようですが、それはちょうど、食材を自分で調理して食事を楽しんでいる人が、栄養バランスなるものが良好なインスタント食品ばかりを食べざるを得ないような環境に置かれると徐々に体調を崩してしまうということに近いのかもしれません。そういう本能的な感じ方や感覚と、「植物工場の科学的な栽培技術」によって生産された野菜ははたして共鳴するものなのか、あるいは不協和音を発生するのか。

◇◇

現在、日本にアルミニウムの精錬工場はほとんどありません。消滅してしまいました。理由は単純で、アルミの精錬工場は電気をいっぱい食べるので、電気料金の高い日本では生きていけないということです(唯一残っている工場は、したがって自家発電工場です)。これは、原子力発電や火力発電といった電源の違いの問題ではなく、電力の生産と流通(長距離運搬と個別配送)を同一業者が地域独占しており、また、他の産業と違い電力という商品が国内で自由に取引(売買)できないといった構造的な理由によると思いますが、こういった電力インフラの変革がないと、栽培施設の維持は難しそうです。

電力インフラの変更とは、自身の電力需要を天然ガスなどを燃料にした自家発電でまかない、余った電力は外部販売できるといった仕組みの導入です。最近は、「コ」ジェネレーションではなく「トリ」ジェネレーション(電力と熱と光合成に必要な炭酸ガスの3種類の要素を生成するので、コジェネではなく、トリジェネ)といった方法も植物工場保有者の間では活発なようです。余分な自家発電電力は外部販売できるので、オランダの農家の中には、施設栽培の農産物が生み出す利益よりも電力販売からの利益の方が多いといった例も少なからず見られるそうです。

子供の頃、夏は夏の暑さを缶詰にして保存し冬になったら毎日1個ずつその缶詰を開けると一日中暖かく、冬は冬の寒さを缶詰にしておき夏に開けると1個で一日中家の中がひんやりするといいのだがと、しかしそうなれば缶詰が100個以上も必要なのでその保管場所をどうするかなどということを空想していましたが、乱暴な喩えをすればそれに近いことをオランダではやりつつあるようです。缶詰ではなく、地下帯水層が、暖房用缶詰と冷房用缶詰の替わりです。

◇◇

(その2)に続く

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