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2011年7月29日 (金)

農家のビジネス・プロトコル

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プロトコルとは、もともとは、外交上の規則や手順などを典拠として利用できるようにまとめたものですが、僕たちにもっと身近な環境で見られるプロトコルは、情報通信のそれです。PCや携帯電話やスマートフォンなどで僕たちは様々な形態の情報を、ネットワークやあるいはクラウドと呼ばれるある種の第3者情報処理インフラを媒介にしてやり取りしていますが、そこでの情報通信・メディア通信の準拠枠や通信規則をプロトコルと呼んでいます。みんながそれに準拠するので、世界中で構造上はコミュニケーションが成立します。

以下のようなアフォリズム風の表現があります。

・「農家」栄えて、「農業」滅ぶ
・「農協」栄えて、「農業」滅ぶ
・「消費者」栄えて、「農業」滅ぶ
・「農林水産省」栄えて、「農業」滅ぶ

このタイプの表現は、農業や農産物よりももっと広い範囲で当てはまりますが、ここでは範囲は拡げません。

原子力発電所の事故で拡散された放射性物質が、農畜産物や飼料を汚染し我々はさまざまな面でまだその影響を受けています。いろいろな基準がゆるめの方向でバタバタと個別に暫定改正され、そういう個別のバタバタでは対応が無理だということは当初から想定されていたと思いますが、特定地域の農畜産物や特定の種類の農畜産物を、消費者が避けています。たとえば、売り場で買い物客の買い物かごを見ても、牛肉はほとんど見あたらず、肉は豚肉か鶏肉、それから北海道だと鹿(しか)の肉。(余計なことですが、鹿の肉はリーン(余分な脂肪分がない)なところが味の特徴です。)

こういう状況を、先ほどの4つのアフォリズム風のレンズを通してみると、わりに客観的に全体の動きが把握できるようです。いちばんの責任当事者である電力会社の行動についてはここでは触れませんが、『「電力会社」栄えて「農業」滅ぶ』というのを付け加えてもいいかもしれません。

見えてくるのは、「農林水産省」「農家」「農協」といった「供給側」が、「供給側」の短期の損害を抑えようとする無理な、つまり標準プロトコルを軽視した行動をとったため、安全な消費行動をめざした「消費者」の反発を招き、「農業」の一部がほころびかけていたということです(流通まで含めると、まだ現在形)。ここで、標準プロトコルとは「安全で安心な国産農畜産物の供給と消費」ということで、形式的なことをいえば「食料・農業・農村白書」のテーマの一つです。宮崎の牛は、原因は口蹄疫でまったく違いますが、そういう標準的なプロトコルに沿って処分されました。

少し別の角度から、プロトコルを考えます。

そもそも、片側の当事者の都合で会話が開始できないという場合もありますが、通信プロトコルの目的は当事者間で会話を正常に開始し、いったん開始された会話を正常に継続し、そして終了させることです。会話の内容が肯定文脈であるか否定文脈であるかは関係ありません。どちらかが、会話の継続をこれ以上望まない場合は、一方の当事者は、会話を止めたい旨の発言をし、もう一方の当事者は了解した旨の発言を返します。突然、今までの会話が何の前触れもなくブチっと中断してしまうということは、予期せぬ物理的な通信回線の故障かどちらかの当事者のそうしようとする意図以外には、普通は考えられません。

今回、農畜産物に関して「ブチッと中断」という状態が、ある種の状況形容詞と一緒に、供給側から発生したように僕には思われます。ある種の状況形容詞とは、たとえば「風評被害」。この形容詞が過度に登場した結果、消費者側との会話というか通信が中断してしまいました。

僕の経験でも、僕の想定しているプロトコル(一応これを標準ビジネス・プロトコルと呼びますが)の共有が難しい相手が農業分野には、他の産業や他のビジネス分野よりも、いくぶん多いような気がします。比喩的な表現になりますが、肯定的な反応であるか否定的なそれであるかは別にして、今までそれなりの期間にわたってお互いに通信を継続してきたのだからここはひとまず短くてもいいから反応を返しておくのが外交儀礼だという、そういうタイミングがあります。そこで「ブチッと中断」というのが発生することが農業従事者にはままあり、その理由がよくわからない。

原子力発電所事故の放射性物質による農畜産物の汚染という今回の事態の基本部分は、農家や農業関係者にとっては自己責任外の出来事です。しかし、残念ながら汚染されてしまったものの客観的な状態やそれらをどう扱うのかに関しては、当該電力会社というもともとの加害者との交渉とは別に、「安全で安心な国産農畜産物の供給と消費」という標準的なプロトコルに基づいた通信が市場や消費者に対して必要になります。今回、その通信のやりかたに関してすこし違和感があり、その違和感の原因が気になったので、こういう記事を書いてみました。

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