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2011年8月22日 (月)

2010年度の食料自給率は38.5%

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2010年度の「カロリーベースの食料自給率」が38.5%に、2009年度から1.2ポイント低下したそうですが、農林水産省は通常は小数点以下のない数字を使うので、新聞などでは四捨五入された39%という数字が大きな活字で印刷されています。1ポイント強の低下の要因は、高温や多雨でテンサイ(甜菜)や小麦の生産が減ったことだそうです。

すべての責任を押しつけられた小麦とテンサイ(甜菜)には同情を禁じえませんが、それは自給率が意に反して減った部分に対する説明ではあっても、増加させる予定の自給率が前年度から増加しなかったその部分に関する理由説明にはなっていません。

「減少」部分に関して少し詳しく見てみると、北海道の多雨や高温、九州の多雨などの影響で小麦の生産量が全国で前年度比では15%の減少、また北海道のテンサイ(甜菜)の生産も不作で、前年度比で15%減少したのですが、これが主な原因のようです。これは北海道の小麦粉を買ってパンなどを自宅で焼いていると実感できることではあります。

以下(『・・・』部分)は「世界の穀物需給(2009~10年)と日本」と題した2010年4月13日 (火)の「高いお米、安いご飯」の記事の一部です。

『◇北海道産小麦は国産小麦生産量の60%を占めていますが、2009年度は北海道産小麦の収穫量が夏の長雨などの天候不順で予定の70%という状態で、とくにパン用のキタノカオリやハルユタカの収穫量は予定の30~40%。出荷は企業限定で、北海道小麦粉の好きな個人がそれらを買おうと思っても品薄で買えない様子。小麦の自給率上昇という点では、ボディーブロー風のじわっとした悪影響がありそうです。』

なお、「カロリーベースの食料自給率」と一緒に発表される「生産額ベースの食料自給率」も1ポイント下がって、69%になったそうです。主な理由は、生乳生産量の減少、コメ単価の12%の低下、野菜の輸入増などです。

しかし、OECD諸国の中で韓国やオランダと最下位近くのポジションを常に競い続けている穀物自給率(重量ベース)は、飼料自給率が高くなったので、27%と1ポイント改善したそうです。日本の穀物自給率は27%前後で推移しており、たとえば2003年度は27%、2007年度は28%。(関連記事は「主要各国の「農業の対GDP寄与率」と「穀物自給率」など」)

生産額ベースの食料自給率は、農畜産物の需給が逼迫し国内生産の農畜産物の値段が上がれば、生産量は同じでも、上昇する性質のものですが、強引な定義づけをすると、「生産額ベースの食料自給率」は高級野菜や果物、牛乳・牛肉などの付加価値農畜産物(の値段)と相関が強いので「食事の満足度」を表し、「カロリーベースの食料自給率」は、肉や油脂(植物油と動物脂)の影響も受けますが、コメ・小麦・砂糖・一般野菜といった基礎農産物との相関が強いので、食事の満足度ではなく「食事の満腹度」、「飢えない度合い」を表していると考えると便利かもしれません。

カロリーベースの食料自給率に関する計画を「食料・農業・農村白書」などを参考にしてふりかえってみると、以下のようになります。

2000年3月の食料・農業・農村基本計画: 2010年度に45%
2005年3月の基本計画: 2010年度に45%を、2015年度に45%に延期
2010年3月の基本計画: 2020年度に50%

これをつなげると、2000年から2010年までの10年間で5%、つまり毎年0.5%ずつくらい増やしたいと考えていたのだが無理そうなので、2015年までの15年間で5%、つまり毎年0.33%ずつ増やす方向に修正。しかし、2020年の目標が50%なので、そのためには2015年からは毎年1%という急勾配で自給率を上昇させることになります。

実際の推移は、この10数年は以下の通り。

1993年度:37%(1960年以来の最低の値、1960年は79%)
1999年度:40%
2000年度:40%
2008年度:41%
2009年度:39.7%(四捨五入で40%)
2010年度:38.5%(四捨五入で39%)

だから、繰り返しになりますが、「計画より低下した部分」に関する説明と、「増加する予定だったが増加しなかった部分」に関する説明の両方がそろっていないと、あまり説得力のある説明とは普通はなりません。

米粉パン・米粒パンや家畜向けの飼料米などで最近はコメの利用範囲も広がっていますが、生産側・供給側からのアプローチだけでは食料自給率の上昇は無理だと僕は考えています。消費者側も動かないと事態は動かない。基本の考え方は変わっていないので、2010年の秋の、「我が家の国産食材比率から食料自給率を考えると・・(その2)」という記事から関連部分を引用します(以下の『・・・』部分)。今年の3月11日以降は、国産の農畜産物といえども選択的に利用する必要がでてきたので、その部分にはアンダーラインをひきました。

『「食料自給率」を高めながら、「お気に召すまま度」を納得のできる範囲で維持するには、「うんざりメニュー」と「お気に召すままメニュー」の中間点が妥協点ということになりそうですが、それはどのあたりでしょうか。

そのためには、生産者側からの動きと消費者側からの動きが必要だと思われます。生産者側からのアプローチとは「お気に召すままメニュー」に必要な食材を家畜飼料も含めて国内生産するということで、消費者側からのアプローチとは現在の食べ物消費パターンを「うんざりメニュー」にするということです。

そういうことはどちらの側も当然「できない」と主張するのは目に見えているし、実際不可能なので、議論の対象は、ではお互いにどこまで移動できるかということになります。

生産者側の行動として考えられるのは、(・・中略・・)。

消費者側の行動として考えられるのは

◇ 小口パックや無洗米を利用して、今までご飯を炊くことが面倒だった人たちが、もっとお米のご飯を食べる
◇ 小麦のパンだけでなく、お米のパンも食べる(米粉パンだけでなく、お米そのものから焼きあがるパンとそのパン焼き器の利用)
◇ お米のパスタや麺も食べる
◇ 中年以上は、肉を減らし、国産の魚や国産野菜の分量を増やす
懐の許す範囲で、国内産の農産物や国産素材の加工食品を買い支える
◇ ・・・

両側からの行動がなければカロリーベースの食料自給率60%というのは実現不可能な数字ですが、消費行動の変化まで含めて両側の変化を考えると、60%は射程距離の範囲内と考えています。(・・後略・・)』

「食事の満足度」(満足度の高い食事)と「食事の満腹度」(満腹度の高い食事)の話にもどります。

精進懐石料理という宿坊で供される食事があります。一般人用なので修行僧用の本物の精進料理の簡素さはありませんが、精進懐石料理も、穀類(コメ・麦・蕎麦や小麦グルテンで作る麩〈ふ〉)、豆類(大豆など)、胡麻(ごま)豆腐の胡麻、季節の根菜類や季節の葉菜類、海藻(昆布など)やキノコといった「満腹度」向きの素材と食材を活用した料理です。

「食事満足度」からはほんらい遠い距離にあるところの、つまり普通は「食事満腹度」向きであるところの素材・食材に手をかけて、「食事満足度」のとても高いものに変換したのが精進懐石料理だといえます。ある種の魔法です。手がかかるので、その意味では現在の消費者ニーズ・家庭のニーズとはかみ合わないのですが、「家庭の味の外部委託」現象(食材会社・食品会社などが作り出してくれるさまざまな味を消費者が家庭の味として購入して満足しているという現象)をうまく援用できれば、消費者側からのアプローチの役に立つかもしれません。

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