農産物汚染についての、不親切な新聞記事
同じテーマのインターネット新聞記事を3つ並べてみます。すべて、「静岡県の早場米にどれくらい放射性ヨウ素と放射性セシウムが含まれているかを県が検査した結果」に関するニュースです。
記事検索で最初の方に並んでいた3つをそのまま引用しました(『・・・』が引用部分)。3つのうち2つは不親切な記事、別の表現だと不合格の記事、1つは放射性物質汚染に関心のある読者にはわかりやすい記事ではあるのですが、厳しい採点だとやはり不合格の記事です。
合格と不合格の差はまず記事に「計測データ」がきちんと含まれているかどうか、それから最新の「暫定基準値」(ここでは暫定基準値の数値の妥当性は問わない)や他の食材の基準値がそれといっしょに提示されているかどうか、です。
有機栽培の農畜産物や減農薬・低農薬の農産物、添加物のない加工食品などを取り扱っている会員制の宅配業者の中には、顧客と農産物生産者の双方の利益のために、取り扱っている農産物のうち東日本産の放射性物質汚染度を自社責任で測定し(第3者委託検査)、カタログやWeb上で公開しているところもあります。(これについてのブログ記事は「検査結果を情報公開しますので、主体的な判断はお客様にお願いします。」)
さて、3つの記事を順番に眺めてみます。
◆(記事1):不親切。不親切の理由は、「検出されなかった」という記述があるだけで、検査データが提示されていない。(アンダーラインは、「高いお米、安いご飯」が追加)
『コメ汚染検査:静岡県の早場米、セシウムなど検出されず (毎日jp)』
『静岡県は3日、県内で最も早く収穫された玄米の放射性物質検査の結果を発表した。放射性ヨウ素、放射性セシウムのいずれも検出されなかった。福島第1原発事故後に自治体が実施した米の放射能検査結果が明らかになったのは初めて。
県農山村共生課によると、検査を行ったのは菊川市の早場米。10月にも中部電力浜岡原発が立地する御前崎市など県内3カ所の米を同様に検査する。【小玉沙織】
毎日新聞 2011年8月3日 20時19分』
◆(記事2):不親切。不親切の理由は、周辺情報は豊富だが、肝心の部分は「検出されなかったと発表した」という記述に止まっており、検査データが提示されていない。(アンダーラインは、「高いお米、安いご飯」が追加、また、農家のお名前もここでは関係ないので伏字(□)にしてあります。)
『菊川の早場米「安全」 県が放射性物質検査、検出なし (CHUNICHI Web)』
『2011年8月4日』
『福島第一原発事故を受け、独自に早場米の放射性物質検査をしていた静岡県は3日、菊川市の農家から採取した玄米について、放射性ヨウ素、放射性セシウムとも検出されなかったと発表した。
県は、今月上旬から収穫予定の早場米「なつしずか」を対象に、菊川市内の農家3戸から玄米2キログラムずつを7月25日にサンプルとして採取。藤枝市の民間検査機関で、すべてを混ぜ合わせた上で、再び2キログラム抽出して検査した。
県は国の通知を受け、消費者に安全性をアピールするため、農畜産物や水産物計36品目の放射性物質検査の実施を決め、既にワサビやナシなどを検査し安全性を確認している。コメの検査結果が出るのは今回が初めてで、今後は10月に県東部と、中部電力浜岡原発がある御前崎市などで検査を実施する予定。
サンプル米を生産した菊川市の農家□□□□さん(64)は、安全確認の知らせを受け「万歳するほどうれしかった。地域全体の米が出荷できなくなる恐れがあり、心配していた。これで安心して食べてもらえる」と話した。』
◆(記事3):けっこう親切な記事ですが、総合判断は不親切。検査結果を「放射性セシウム、同ヨウ素とも検出限界値の1キロ当たり2ベクレルを下回った」としており、この記述で、汚染度(これを汚染度と呼ぶとして)が1キログラム当たり2ベクレル未満のどこかであることが関心のある読者には理解できます。つまり、この記事からは、上述の2つの記事と違って、「検出限界値が2ベクレルの測定器では放射性セシウムと放射性ヨウ素が検出されなかった」ことを県が発表していたらしいこともわかります。あるいは、この記者が個別に質問をして測定器の検出限界値を聞き出したのか。
ただし、2ベクレルがどのくらい安全・安心な水準であるかどうかは消費者はこれだけではわからない。ないものねだりになるかもしれないのですが、農林水産省がコメに関して検討中の暫定基準値(200ベクレルで線引きを検討中らしい・・)や他の食材の暫定基準値でも併記してあれば、値の妥当性は別にして、その意味はわかりやすい。(アンダーラインは、「高いお米、安いご飯」が追加)
『静岡産米「なつしずか」、放射性物質検出されず (Yomiuri Online)』
『静岡県は3日、近く収穫が始まる県産米の極早生品種「なつしずか」の玄米を検査した結果、放射性物質は検出されなかったと発表した。
農林水産省は「コメの放射性物質の検査結果が出るのは全国初ではないか」としている。
同県が7月25日に菊川市の農家3戸で採取し、混合した2キロを民間機関で検査したところ、放射性セシウム、同ヨウ素とも検出限界値の1キロ当たり2ベクレルを下回った。
同県は食品の安全性をアピールするため、農畜産物36品目の検査を順次進めており、コメは計4産地の検査を10月までに行う予定。
全国有数の早場米産地の千葉県も4日から、コメの放射性物質の調査を始める。作付けのない浦安市を除く全53市町村326地点で調べる方針だ。
(2011年8月4日00時36分 読売新聞)』
気になる内容のニュースは、時間があれば、複数のメディアの発表記事を見るようにしています。
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