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2011年10月20日 (木)

TPPのゴリ押し風に関する違和感

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こちら側にはマイナス(あるいは逆にプラス)のことが、単独ないし複数の相手にとってはプラス(あるいはマイナス)になる。そういう事項が数多くあり、現在と将来の全体的なプラス効果とマイナス効果を冷静に客観的に勘案して、ある種の合意に達することを交渉といいます。TPPに関しては、プロパガンダ風やゴリ押しや抽象的な理念ばかりが一般的なマスメディアを通じて僕たちに伝わってくるばかりでいささかうんざりしていたのですが、やっと冷静な比較検討作業が政府内で進み始めたようです。

これからTPPと呼ばれる土俵に乗るのか乗らないのかを決定することになっているのですが、利害の世界や政治・経済の世界における土俵は通常は参加当事者の誰かにとって有利なように設計される(設計されている)ので、その図面が気に入らない場合は、図面を描き直してもいいし修正してもいい。しかし、それがとても難しいなら、あるいはそうすることにさほどの意味がないのなら(成果が努力に見合わないなら)、その土俵に乗る必要はないし、その場合は、必要なら、参加当事者の少ない別の小さな土俵を個別に設定すればいいわけです。

プロパガンダ風(ないしゴリ押し風)とは、たとえば2010年10月19日に当時の外務大臣の職にあった方が「日本の国内総生産(GDP)における第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」(「主要各国の「農業の対GDP寄与率」と「穀物自給率」など」)と主張しましたが、それが一つの例。

また、抽象的な理念とゴリ押し風が交じり合っている例のひとつが、現在の首相のTPPに関する考えで、それは「(首相は)首相官邸で内閣記者会のインタビューに応じ、TPPについて『日本は貿易立国であるべきだ。アジア太平洋地域は間違いなく成長のエンジンになるので、高いレベルでの経済の連携をしていくことは日本にとってプラスだ』と述べ、交渉参加に強い意欲を示した。」というものです。(メディアによって同じ大臣の発言が結構に異なるというのを少し前に経験したばかりなので、念のために複数の紙媒体やインターネット・メディアをくらべてみました。メディアによる発言内容の違いはなさそうです。)

この「貿易立国」という言葉を見て、今から何十年か時間をさかのぼった頃の義務教育の教科書の記述を想起しました。なつかしい表現だし、その頃の日本経済の動きと方向をうまく凝縮した表現なのですが、同時に違和感を覚えました。

理念の抽象化が進み過ぎると、現実という平面に埋まらない穴がいっぱい開いてしまうのですが、政府内でやっと進み始めた「医療・食の安全・金融・建設業(政府調達)・漁業・関税撤廃」などを対象とする冷静な比較検討会議が、その穴の形状や大きさや他の穴との関連を遅ればせながら確認しつつあるように見受けられます。

「貿易立国」という表現に感じた違和感に戻ると、その違和感はその発言の背後にあるロジックの組み立てから来ています。その組み立ては僕の印象では、「日本は貿易立国であるべきだ」、だから「TPPに参加する」ではなく、発言者の発想の順番はその逆で、「(何らかの政治的な理由で)TPPに参加するべきだ」ということが先にあり、だから、それを国民やその他のステークホルダーに耳障りなく正当化するための説明として「貿易立国」という用語を登場させたのだと思われます。

かりに「貿易立国」という考え方に同意するとしても、そのための手段はTPPだけではない。たとえば2国間のFTAも十分に高いレベルの経済連携ですし、中国と韓国が参加しない環太平洋戦略的経済連携協定を十分に高いレベルの経済連携と呼ぶのも妙な話です。「貿易立国 → TPP」には牽強付会な論理のジャンプがあり、つまり、それが違和感の原因です。

ビジネス活動一般もそうですが、競争の土俵は最初に自分で線引きできた方がたいていは有利です。誰かの作った土俵に、楽観的な方向にバイアスのかかったリスク評価で、無理に飛び込むことはありません。

◇ ◇ ◇

TPPについての関連記事は「TPPと学習効果」と「主要各国の『農業の対GDP寄与率』と『穀物自給率』など」。

それから、「お米の自由化」についての僕の考えは「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(1)」、「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(2)」、「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(3)」、「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(4)」、「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(5)」、そして「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(6)、(あるいは最後)」にまとめてあります。1年半以上前の記事なのでデータの更新が一部必要かもしれませんが、考え方に変わりはありません。

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