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2011年11月

2011年11月30日 (水)

やはり、備前雄町(びぜんおまち)の日本酒

甘い味が好まれています。が、甘いスイーツ類などはそもそも苦手で、砂糖をまぶしてあるケーキのようなのには近づく気にもなれない。といって、すべての甘さが嫌いなわけではなく、焼き芋にした鳴門金時は、たまにしか食べませんが、好物のひとつです。

野菜類でいえばトマトやトウモロコシも、フルーツトマトやフルーツコーンと総称されている甘いタイプのものが好かれているようです。ジャガイモにも栗のように甘い種類のものがあります。最近の日本酒にも同じ傾向があるのかもしれません。

米は基本的に甘さのある穀物なので、噛んでいるとほのかに甘くなるし、だから、うるち米やもち米を原料とする酒粕(さけかす)や味醂(みりん)は自然の甘さを持った漬物を作り出します。つまり、日本酒は、ほんのりと甘いのが当然ということです。しかし、少量だが毎晩飲んでいると、その甘さの具合とだんだんと折り合いがつかなくなってくる日本酒も少なくありません。

以前、淡麗辛口という広告用の造語で形容された、水のような辛口の日本酒がもてはやされたことがありました。その頃は日本酒に特別な興味もなかったのでお世話になることはなかったのですが、2年ほど前に日本酒を好きになって以降に淡麗辛口の代表的な銘柄といわれているものを何種類か試しに飲んでみました。高級品を飲まなかったためか、その辛口はどうも醸造アルコールで調整したような辛口で僕の好みではない。醸造アルコールとは関係のない辛口の日本酒も試してみましたが、これはただ辛いだけで米の味がしない。

で、2年前に日本酒とはこれほどうまいものだったのかということを気づかせてくれた備前雄町(びぜんおまち)の日本酒を再び手にしました。他のものをいくぶんヘンレキしたあとだったので、再び結構な衝撃でした。この備前雄町のお酒は、落ち着きと渋さが基本にあって、それが穏やかな辛口になり、そこに色香が加わっています。2か月に一度くらいの頻度で、保存状態のよいお店から一升瓶でも買ってきて気分良くなりましょうか。

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2011年11月29日 (火)

柿の木と杉の木

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札幌というか北海道から見た柿の木と杉の木の共通点は、寒いので、ともに北海道では生育できないということです。

正確にいうと、というか僕の見た範囲では、函館やその少し北のあたりが杉の生育北限で、だから、渡島(おしま)半島の比較的津軽海峡に近いあたりまで行かないと杉の林にはお目にかかれません。おなじみの針葉樹は北海道では松だけなので、スギ花粉に悩んでいる人にとっては、北海道はとても住みやすい場所です。

それから、おそらく、柿の木も函館のある渡島(おしま)半島やその少し北の辺りが北限だと思います。柿といっても甘柿ではなく渋柿。ただし、寒さに強い種類があるのか、寒さに適応したのか、例外はあって、あるとき札幌市内を散歩中に、結構古い作りの家の庭に柿の木を見つけました。秋にその近所を再び通りかかった時に、高校生か大学生と思われる年齢の姉妹が、キャーキャーいいながら柄の長い剪定ばさみのようなので柿の実を採っていたので、実の形から渋柿の木だと確認できたわけです。

柿の木が自宅の庭や近所にない地域では、秋になって柿の実を採って食べる習慣というか、そもそも柿の実を食べるという楽しみが定着しないのかもしれません。

ご近所から、お裾分けに柿をいただきました。大きな富有(ふゆう)柿です。柿を食べる習慣がほとんどないから、とのことです。「こんなに硬くて大丈夫だろうか」と、固めの柿の実のおいしさにはご縁がなさそうな様子です。柿とは、渋柿を柔らかくゆるゆるにして食べるものということなのでしょうか。ありがたく頂戴します。

札幌の野菜・果物売り場では、たとえば岐阜県など西日本産の大ぶりな富有柿が並んでおり、我が家では秋の定番果実です。果物の中で最もおいしいもののひとつが柿だと思っています。一般に、興味のないものは視野に入ってきませんが、柿に興味のない人たちには、果物売り場の富有柿は、訴求力のない朱色のかたまりにすぎないのかもしれません。

蛇足ですが、富有柿はどう発音するのか。「ふゆうがき」というのが教科書的ですが、「ふゆがき」とも「ふーゆー」(この場合は「かき」は冗長なので省略)とも呼ばれているようです。北海道の漢字の地名には、もともとのアイヌ語発音を無理に漢字で表現したものが多いですが、「富有」も似たような経緯で生まれたのかもしれません。人々に「ふゆ」とか「ふーゆー」とか呼ばれていた柿が、商い上の必要から、いつしか「富有」という漢字の衣装をまとったに違いないと考えています。ただし、その根拠はまったくありません。

杉の木は、大がかりな植林活動もあって、北海道以外では多すぎるくらい本数の多い針葉樹ですが、杉の木の工芸文化で僕が好きなもののひとつが、天然秋田杉の「曲げわっぱ」、大館(おおだて)の工芸品です。お櫃(おひつ)、寿司飯用の飯切り(いいきり)、各種の弁当箱などを長い間大切に使っています。なかでも配偶者のお気に入りは、「曲げわっぱ」の名人が秋田杉を使って趣味で作った調理用の木べら。趣味で、おそらくその時の気分で作ったので、その時だけの特注品。配偶者によれば、「微妙なカーブがついていてこんなに使いやすい木べらは二度と手に入らないわ。」

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2011年11月28日 (月)

セシウム汚染全国マップと風評被害

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風評というものは、事実でないことが事実であるかのような衣装をまとって風のように僕たちを取り囲むことなので、注意していないとその風に流されてしまいます。

僕が知っている風評被害の原因のなかで一番大きいものが、「現在進行している地球温暖化の大部分が、われわれの産業活動・経済活動によって排出される炭酸ガスの温室効果による」としたIPCCの見解(事実でないことが事実であるかのような衣装をまとった見解)と、その見解にもとづいて作られた国際的な取り決めだろうと思います。だから、風評被害とは、そのことによって日本が実際にこうむっている経済的な被害をさします。(「迷ったら基本データ(世界の気温とCO2)」、「迷ったら基本データ(世界の気温とCO2)・補遺」)

風評被害というのは、日本のような素直な国が経済的な被害を受けているという意味で「風評被害」ですが、排出(量)取引によって、定常的に利益を得ている国もあり、そういう国にとっては「風評利得」かもしれません。炭酸ガス削減に関してはとくに何もしない国も少なくありませんが、そういう国はIPCCの見解やその見解にもとづく取り決めの意味のなさを最初からよく知っていたとも考えられます。日本の西に大きく広がる国や太平洋の向こう側に位置する国土の広い国などでは、最初から、炭酸ガスの削減などには関心がなさそうです。

ある生産地の農産物や畜産物が消費者から敬遠される時、マスメディアや利害関係者は「風評被害」という言葉を、ある種の意図をもって、あるいは、自分の利益の保護のために、比較的安易に使う傾向があります。しかし、消費者の行動を支持する事実がそこにある場合や、消費者が納得できる事実がそこにない場合には、それは風評でもなんでもない。

最近のわかりやすい例でいえば、2011年3月17日以前の食物などについての放射線量基準値と、それ以降の暫定基準値とは大きく隔たっていますが、測定された放射線量が後者よりは小さくても前者よりは相当大きいような場合は、「消費者の行動を支持する事実がそこにある」といえます。ある産地の農作物を「検査の結果、国の暫定基準値をクリアしているので安全」と生産者が言うだけで、計測された放射線量の提示がない場合は、「消費者が納得できる事実がそこにない場合」といえます。そういう場合に、消費者がそれらを買い控えても、それらは風評被害をもたらすような行動とは呼べません。

しかし、なかには意図の感じられる、ここではあえて本物の風評被害という表現を使いますが、そういう風評被害を引き起こすような方向の行為も実際には見られるようです。僕の考えでは以下はその例です。

先日(11月15日付)で次のようなニュースが流れました。最初の3分の2くらいを引用します。引用部分は、『・・・』。

初の“セシウム汚染”全国マップ!北海道~中国地方まで広く拡散  2011.11.15

 東京電力福島第1原発事故で放出された放射能が、日本列島各地に拡散している状況が明らかになった。名古屋大などの研究チームは福島第1原発から放出された放射性セシウムの全国分布を推定した地図を作成した。15日の米国科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。各自治体などが公表したデータに基づく推定とはいえ、実態に近い全国版の汚染マップが示されるのは事故後初めてだ。

20111115

土壌へのセシウム沈着量を計算した地図。単位は土壌1キログラム当たりのベクレル
(米科学アカデミー紀要提供)

 地図は名古屋大の安成哲三教授、ノルウェー大気研究所などのチームが作った。3月20日から1カ月間に福島第1原発から放出されたセシウム137について、各地の自治体が計測した連日の降下量データをもとに大気中の拡散をシミュレーション。土壌への沈着量を推定した。

 セシウムは北海道から中国地方にかけた広い範囲に沈着するが、西日本の汚染は少ない結果だ。研究チームは「中部地方の山岳地帯が西日本への汚染大気の拡散を防いだ」と分析している。』

この記事と地図とそれからこの記事で言及されている論文(Cesium-137 deposition and contamination of Japanese soils due to the Fukushima nuclear accident)を見ていて、気になったことは以下の通り。

■著者: チーム研究なので著者は複数名(6名)。それぞれ、日本と米国とノルウェイの大学ないしは研究所に所属。日本の研究機関は名古屋大学と東京大学。日本人は名前から判断して、3名。つまり、公的機関の日本語のホームページへはアクセスできるし、内容も理解できる。

■公表のタイミング: なぜ11月中旬というタイミングで公表されたのか。論文提出は7月25日となっているが、提出から掲載まで時間がかかるとしても、公表はなぜ今か。こういう種類の地図が関係している現在の大きな政治経済問題はTPPです。日本ではTPPに参加すべきか否かを、国会議員も、経団連やJAも、農民も一般市民も論争中。この汚染地図だと、とくに北海道や北東北の農産物や畜産物が関係してきます。「セシウム汚染リスクの高い日本の、とくに北海道や東北北部の農産物・畜産物はヤバイですよ、米国から輸入した農畜産物を召し上がったらいかがでしょうか」という意図が背後に流れていても不思議ではない。ただし、これは僕の憶測。

■3月20日から1カ月間を対象としたシミュレーション結果と大幅に違う実測データが相当な以前から集まっているにもかかわらず、わざわざ、正しくないシミュレーション結果を発表。シミュレーション結果が正しくないことが論文提出時にはわかっており、だからその発表を取り下げたらよかったのに、なぜか、それをしなかった。

なお、北海道庁は、このニュースが流れた直後に、この汚染地図は観測事実と大きく違っていると記者発表をしました。観測事実の集積が4月からあったので、すぐにこのシミュレーションの誤り(少なくとも北海道に関しては)を指摘できたのでしょう。彼らの動きは速かった。

すでに4月下旬に以下のようなものが北海道庁からは公表されており(原文はこちら)、測定各地のセシウム137の濃度は4.5~9.9 ベクレル/kg。上記公表地図でいえば、ブルー表示(100~250ベクレル/kg)されている北海道東部でいちばん汚染のひどそうな地域の実測値が8.8ベクレル/kgなので、その図で使っている色だと下から2番目の淡いパープルを塗らないと実態と合わない。つまり、シミュレーション値は、実測値の11.4倍から28.4倍という大きなものとなっています。

北海道各地の実測値にもとづいて北海道を色付けし直すと、「近畿地方+四国地方」とほぼ同じ色の感じになります。それを簡明な文章表現にすると「いずれの場所でも過去3年の環境放射能水準調査結果を下回りました。」ということです。すぐ下の『・・・』部分は、4月下旬の調査結果の一部を引用したもの。

『平成23 年4 月28 日公表  北海道農政部

●本道での農地における放射性物質モニタリング調査結果(第一回)

東日本大震災により、東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生したことから、道内農地の土壌への影響を確認するため、モニタリング調査を実施しています。今回の調査結果は、以下のとおりです(浜頓別町分を追加)。

いずれの場所でも過去3年の環境放射能水準調査結果を下回りました。

第一回調査結果(平成23 年4 月18~25 日)

・・・以下略・・・』

蛇足ですが、北海道の米と水産物に関しては、「北海道の水田(土壌、玄米)の放射性物質モニタリング調査結果」、「北海道における水産物の放射性物質モニタリングなどの結果」(継続更新中)をご覧ください。

■地図上の汚染分布の色使い。最後に持ってきましたが、これも重要な要素です。読者が簡単に誤解してしまうような、一般的に使われるのとは意図的に一部を変えたと思われるような色使いがされています(なお、意図的に変えたと思われるというのは、僕の憶測)。通常は「赤はヤバイ、赤に近い紫のような濃い色もヤバイ」、だから今まで安全と思っていた、安全であるはずの北海道が「濃い紫の危険色」でおおわれているので「ワー、どうしよう」ということになる。

そういう感想を述べたブログからの無断引用で著者には申し訳ないのですが、「セシウム汚染全国マップ」というキーワードで検索した時に最初に現れた2つのブログから関連部分を勝手に引用させていただくと(『・・・』部分)、

『意外や意外。
北海道や中国地方、岐阜や青森等もひどいんですね。。』(おそらく長野在住の方のブログ

『さて、本題ですが、15日に「セシウム汚染全国マップ」が公表されました。
我々は、一体この先どうすれば良いのでしょうか??』(北海道在住の方のブログ

と、いった具合です。

この論文は英語で書かれ、PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) に掲載されているので、海外のほとんどの読者はおそらくこの地図をそのまま貴重な情報源とみなすのでしょう。日本語のできる読者がその中にいて、念のために北海道庁のホームページを見に来て実測データと比較し、シミュレーションの間違いを発見するとはとうてい思われない。そういう意味でも、「本物の風評被害」を生んでいる(であろう)論文です(当該論文はこちら)。

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2011年11月25日 (金)

「オーボーな自転車に対して、うれしいニュース」の、その後

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自転車は車なので原則として車道を走ること、という「御触れ」がひと月ほど前に警察庁から出ましたが(「オーボーな自転車に対して、うれしいニュース」)、その後、僕の周りでは、とくに、というか、全く変化は見られません。僕や配偶者のようにオーボー自転車や暴走自転車や無神経自転車にうんざりしていた人たちはその御触れに注意を払ったかもしれませんが、オーボー自転車の運転手がそういう御触れを知っているとは思えない。警察が意識してPR活動をやっている気配もない。

今週の初めに、自転車の安全走行について警察庁の交通局長の追加見解が掲載されていました(YOMIURI ONLINE 11月21日)。Q&A形式になった見解のその一部を引用します(『・・・』部分)。

 『――誰でも車道走行しなくてはいけないのか。

 「高齢者や子供を乗せた保護者、前かごに荷物を積んだ人などは歩道で良い。ただ、いずれも徐行が原則で、スピードを楽しむ人は車道に降りてもらう」

 ――どんな自転車が摘発されるのか。

 「ブレーキの付いていないピストバイクや、信号無視、指導警告を繰り返しても危険運転するような事故に直結するケースに限る」』

この見解をどう解釈するかですが、ブレーキのない自転車や不良自転車以外は今までと同じで結構、と言っているようにも見える。若いオネーサンの暴走自転車風や、前かごに荷物をいっぱい積んだフラフラおばさんの自転車というのもおそろしいもので、僕はそういう場合は、彼女たちの目や視線の具合を確かめながら、その自転車を立ち止まって避けるようにしています。

普通なら、このままでは、歩道を安心して歩くことは当分はできそうにないのですが、札幌では事情が別で、先週に一度、そして今週に一度、雪が降りました。積雪は10㎝くらい。最低気温はわずかに氷点下なので、雪が解けた後の寒い時間帯の歩道はアイスバーン状態。そうなると、自転車に乗ることは滑って転ぶことなので、ありがたいことに自転車は景色から消えてしまいます。たとえてみれば、TPPに参加して輸出振興と騒いでいたのが、1ドルが急に100円の円安になり工業製品の輸出が急増した結果、TPP議論がどこかに雲散霧消してしまったようなものです。

しかし、雪とアイスバーンの冬場でもしっかりと道路を走る剛(ごう)の自転車があり、それは、新聞配達のオニーサンが乗る頑丈な造りの自転車で、運転技術のレベルも高いのでしょうが、車輪をすべらせることなく新聞を配っています。あとは、マウンティンバイク風の自転車が駆け抜けていくのをまれに見かけます。こういうのは元気なので、転んでも助けることはない。

だから、札幌では(札幌に限らず道路が凍るようなところでは)ピザの宅配は一年中4輪車です。オートバイだと夏はよくても冬は使えない。だから夏でも軽自動車がピザを配っています。

3月末までは、歩道の自転車をまず気にする必要はありません。しかし、その分、歩くことに神経を使います。

一昨日の夜は大雨が長時間降ったので、雪や氷はすべて洗い流されています。そうなると、外は少し暖かいし歩道を滑ることなく歩けるので嬉しいのですが、オーボー自転車もまた出現します。しかし、今日は、天気予報によればまた雪の気配なので、自転車もひっそりしていることでしょう。

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2011年11月24日 (木)

アメリカのジャポニカ米と日本のお米の店頭価格比較(2011年11月)

アメリカのジャポニカ米と日本のお米の店頭価格比較(2011年11月)というタイトルにしましたが、「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(4)」の補遺、補足情報というか更新情報です。

「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(4)」では、2009年10月~11月という時点で、米国産(カリフォルニア産)ジャポニカ米の店頭価格(フィラデルフィアの日系スーパーマーケット)と、札幌のナショナルブランドのスーパーマーケットに並んでいる日本の代表的なお米の店頭価格を比較してみました。その時の比較条件は、店舗は「米国がフィラデルフィア、日本は札幌」で、パッケージ重量は「白米で10㎏」、為替レートは「1ドル=90円」でした。

今回は、日米のスーパーのオンライショップでのジャポニカ米(良食味短粒米)の価格比較です。

米国のスーパーマーケットは、カリフォルニアに6店舗(北はサンノゼ、南はサンディエゴ)、中西部のシカゴと東部のニュージャージーにそれぞれ1店舗を構える『アメリカで最大級の日系スーパーマーケット。日本食材、雑貨、家電、化粧品まで数多く取り揃えております。またレストラン街では“日本の味”をいつでもお楽しみ頂けます。さらにうまいもの市、銘菓祭、大北海道展など、日本全国の銘店が集うイベントも大好評です。』(当該スーパーマーケットのウェブから引用)で、日本のスーパーマーケットは、ナショナルブランド・チェーンの札幌店(札幌には複数店あるがそのひとつ)で、これは前回と同じです。

今回は、米国産は15ポンド袋のジャポニカ米(白米)。そのスーパーのPOP風表現を借用すると『超最高級短粒米。厳選された日本米から開発され、シエラ・ネバダ山脈から流れ出る清水を使ってカリフォルニア州で栽培されたものです。アメリカ産。』。日本産は5㎏袋の売れ筋のお米(白米)。

為替レートは2011年11月現在の1ドル=76円。2年前(2009年11月)のように為替レートが1ドル=90円だったら、という場合の比較も追加します。

それから、15ポンドは6.804㎏なので、日本での5㎏袋と価格比較する場合には、5㎏換算をする必要がありますが、単純計算だとまずいので、パッケージ係数で調整します。むつかしい話ではなくて、例えば、5㎏袋入りのお米と10㎏袋入りのお米の値段をくらべると、10㎏の方が1㎏当たりの単価が安く設定されています。上記の札幌店でいくつかの品種の店頭価格を比較してみると、10㎏袋を買う方が、5㎏袋を2個買うよりも、平均で3.5%安い。だから、15ポンド(6.804㎏)袋の場合だと、5㎏袋よりも1.27%安いと比例配分的に想定できるので、5㎏換算するときにはその分だけ値段を高くしてパッケージ重量の差を調整します。

農業専門メディア(日本農業新聞 11月23日)によれば、スーパーや生協での2011年産米の売れ筋価格(精米)は、5㎏あたり1900円台が37%で最も多く、次いで1,800円台が23%だそうです。ここでは、わかりやすく、白米5㎏あたり1,900円を売れ筋価格とします。

「アメリカで最大級の日系スーパーマーケット」で販売されている「米国産ジャポニカ米(良食味短粒米)」が、「まったく関税なし」で米国から日本に輸出され、たとえば近所のスーパーの棚に並べられたらどうなるかを、2年前のアップデートという格好で以下にまとめてみました。競合できるのか。(実際の輸出は下の表のような形ではありませんが、簡易版シミュレーションです。)

輸出なので、自由化で「関税なし」といった状況でも、輸出諸掛や日本国内での追加流通コスト(ここでは主にプロモーションコスト)は必須なのでその分として15%上乗せした結果と、日本のお米の店頭価格(オンラインショッピング価格)とを比較します。

なお、日本のいろいろなお米(品種と生産地の組み合わせ)の相対取引価格(卸売価格)比較を、この表は別の記事でも使ったものですが、参考までにすぐ下に並べておきます。

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競合の条件は、味と価格と品質(安全・安心を含むトータル品質)ですが、僕自身は、以前カリフォルニアに赴任していたころは田牧米ゴールド(コシヒカリ)が好きでしたが(他の米国産ジャポニカ米とは味が違っていた)、最近は上述のジャポニカ米を食べたことがないので、最近の味についてはわかりません。しかし、以前と似たような食味なら、それらが若干安い値段で日本に入ってきたからといって、我が家では常食米にすることはありません。新しい日本のお米に対して好奇心からそうするように、2kgパックを買って味を確かめるくらいはするかもしれませんが。

2年前との違いは、米国産良食味ジャポニカ米の価格の違いと、為替レートの違いと、スーパーの店頭価格かインターネット通販(オンラインショッピング)価格かというチャネルの違い。

為替レートは、2年前の1ドル=90円が今は1ドル=76円。

「田牧米ゴールド」と「かがやき」の2年前の価格(フィラデルフィアのスーパーでの店頭価格)は、

田牧米ゴールド(コシヒカリ): $44.43 / 20ポンド
かがやき(コシヒカリ):     $36.84 / 20ポンド

だったので、これを手抜きの単純計算で15ポンド換算すると

田牧米ゴールド(コシヒカリ): $33.32 / 15ポンド
かがやき(コシヒカリ):     $27.63 / 15ポンド。

これに対して上の表でも見たように、現在の価格は、ただしこれは2年前とは別のオンラインショッピング・チャネルでの「配送料を含まない価格」ですが、

田牧米ゴールド(コシヒカリ): $22.99 / 15ポンド
かがやき(コシヒカリ):     $24.99 / 15ポンド

となっています。もし価格が味の違いをそのまま反映しているとすると、「かがやき」がおいしくなって人気が出てきたのかもしれません。2年前との価格の違いは、それが生産効率によるものなのか、流通効率なのか、あるいは品質にかかわることなのか、よくわかりません。

どうも、急な円高の影響で「関税なし」の状況だと2年前よりもお米の競合状態は厳しくなっているようです。僕は、米国主導になってしまったTPPへの参加は、農業と農業以外の要素も考えて非常な愚挙だと考えていますが、それとは別に「自由化、関税なし」という状況で、日本のお米がどうなるのかを、僕なりの視点でスケッチしてみたいと思っていました。

その関連で、以下に「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(6)(あるいは最後)」という2年ほど前の記事の一部を以下に引用しておきます(『・・・』部分)。

『「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと」を書き始めるきっかけは、日本はお米の値段が高いので、国際競争力はまったくなく、自由化ということになったら海外から安いジャポニカ米が大量に入ってきて日本のコメ農業は壊滅状態になるという意見への違和感からでした。

「世界のコメ商品一般」と「世界のコメ顧客一般」という切り口で議論すると、その意見はもっともで、なぜなら世界のコメ一般の取引価格・卸売価格は60kgあたり約3,000円、日本の米価は60kgあたり約15,000円なので、価格差は5倍だからです。

しかし、切り口を変えて、世界のコメ生産量の15%程度であるジャポニカ種の、その中の短粒種の、その中の味と品質のよいおコメという風に商品のセグメントを絞り込んでいき、また消費者もそういう付加価値商品を好む人たちからなるセグメントという形で顧客セグメントを絞り込んでいくと、そこにあるのは、コメのニッチ市場です。

で、このニッチ市場は実際はどんな様子なのだろうかということが気になり始め、以前、カリフォルニアに赴任していたときに自宅でよく食べた「田牧米」を手がかりに調べてみるかという心境になったわけです。アメリカ産のコシヒカリやあきたこまちの現地での消費者価格は、日本産のコシヒカリやあきたこまちの日本での消費者価格とどれくらい違うのか、どれくらい安いのか、それとも逆に高いのか、あと、中国が東北地方でコシヒカリやあきたこまちを商用ベースで国内生産していると聞いているので、こちらもそれらの消費者価格は北京や上海ではどうなのか。各国でのコメ一般の取引価格・卸売価格やタイ・インディカ米の標準的な輸出価格などを基準にするのではなく、消費者価格という虫の眼で、ある程度状況を追いかけてみようというわけです。

このニッチ市場の大きさですが、日本の800万トン(これは、前述のように世界コメ市場の1.8%)、これにアメリカの65万トン~98万トン(アメリカのコメ生産量の1%~1.5%がコシヒカリやあきたこまちといった短粒種良食味米)、そして、中国の78万トン(この数字は僕の個人仮説)をくわえると、943万トン~976万トン、ざっと1,000万トン。世界コメ市場の2.3%です。現在の消費者価格に地域的な差があまりないこと(コシヒカリやあきたこまちの消費者価格はフィラデルフィアでも札幌でも北京でもそれほど変わらない)を考慮すると、この高付加価値米ニッチ市場は、コメ市場一般とは別の需要供給&価格決定メカニズムで、現在も動いているし、今後も動いていくように思います。』

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2011年11月22日 (火)

台所収納と、米・小麦粉・米粉

冷蔵庫や食材保管スペースをその一部とする広義の台所の収納は配偶者が掌管(しょうかん)しているので、僕は調理道具やお皿、食材の収納場所や収納方法には立ち入らないことにしています。たいていのものごとの設計者は一人の方がうまくいく。だから、鍋やフードプロセサー、お皿、庖丁や料理バサミやトングやお玉などの道具、お米や小麦粉、スパゲティーや乾物、塩や胡椒や鷹の爪、漬物、卵や野菜などの食材がどこに収納されているか、貯蔵されているかは意識して記憶します。

僕の配偶者によれば、日本の主婦は、和風・洋風・中華風をそれぞれにそれなりの種類を作るので、道具や食材がどうしても多くなるのだそうです。別に僕の配偶者によらなくても、そうだと思われます。道具をできるだけ絞り込んでも、ご飯用の炊飯器やお櫃(おひつ)だけでなく、寿司飯用の飯切りなども使う。サイズや深さの違う鍋やフライパンも必需品だし、中華鍋も必要である。

おコメのご飯が好きで、そしてパンも自分で焼くのが好きな家庭では、小麦粉パンだけでなく米粉パンにも興味があるので、そういう家庭ではこの3種類を適度な量だけストックする必要がある。しかし、この3種類を維持するのは、スペースの確保という点でどうも疲れる、というのが台所の収納スペース管理者であるところの配偶者の感想です。

この感想を聞いてなんとなくすっきりとしなかったので、僕なりに状況を確かめることにしました。

我が家では、購入単位はお米(ただし、玄米で購入)は5㎏袋、小麦粉は500g袋ないし1㎏袋、米粉も500g袋ないし1㎏袋。最小単位だけでは急な場合に不都合が生じるので、1袋を安全在庫として回転させています。急な場合とは、突然のお客でお米の消費量が急に増えるとか、自家製パンをすぐにさしあげることを知り合いに急に約束したような状況をさします。好みの小麦粉が不作でなかなか手に入らないので、とりあえず多めに持っておくか、というような場合もここに含まれます。

米、小麦粉、米粉と書きましたが、一般の家庭では米はご飯用の「うるち米」しかストックしていないと思われます。赤飯のような強飯(こわめし)が好きな家庭では「もち米」も在庫しているかもしれませんが。

小麦粉は、種類といった点では贅沢で、「強力粉」「中力粉」「薄力粉」と通常は3種類あり、パンやピザ、うどん、ケーキ・クッキーなどを小麦粉からつくる家庭ではこれらが必需品。パスタが好きな場合は、これにデュラムセモリナ粉が加わります。

米粉は、今のところ、パンなどに向いた、ご飯用ではない米が、米粉として販売されているので種類はひとつ。

米粉パンは、米粉ではなく米粒から作るタイプだけに限定すれば(最近は、器具の騒音がひどいけれども、そういうタイプのパン焼き器があるので)、必要なのはコメと小麦粉で、米粉は不要となります。そうなると、少しはすっきりとするかもしれません。しかし、米粉は米粉のよさがあるので、今はまだ値段が高いのが欠点ですが、米粉を米粒で置き換えるのも無理があります。

家庭の場合、重たいものを頻繁に買いに出るのもつらいし、お取り寄せも少量では配送料が高すぎる。買ったものの配送サービスをわずかな追加料金で提供しているスーパーや生協もありますが、そういう場所に欲しいものがあるとは限らない。で、在庫維持コストと購入コストをどうバランスさせるかという経済発注量の計算みたいな話になりますが、米・小麦粉・米粉の状況は今のままでいいというのが、僕の結論です。

しかし、こういうことで悩むのが嫌いなタイプの人もいて、そういう人が採用できる方法は2種類あります。

ひとつはメニューを絞り込むこと。たとえば、中華風はすべて止めてしまうといった選択肢。そうなると、たとえば、ラーメンや水餃子も食べられない。

もうひとつの方法が、家庭でのややこしい料理は放棄して、たいていを「チン」で済ませるという選択肢。この方法は、すでに幅広く普及している選択肢ではあります。この方法では、ある条件をクリアすれば、穀物や野菜などの食材や、鍋・釜のような調理道具はとても少なくて済みます。必要なのは冷蔵庫だけ。「ある条件をクリアすれば」とは、スーパーなどの特売でいつ食べるかわからないものをやたらと買いこまないということ。冷凍庫が似たような冷凍加工食品であふれているという話はよく聞くし、活字でもよく目にします。

もしどちらかの方法を採れと強制されたら、最初の「メニューを絞り込む」方の選択肢を採用すると思います。もっともその場合は、中華風はすべてやめてしまうといった乱暴な区分ではなくて、いささか面倒ですが、たとえば脂(油ではなくて脂)を使うことが当然だとされている料理と、それからそのためだけに必要な食材と調理器具を、和・洋・中にかかわらずリストアップしてみて、そこから共通部分が出てくれば、それらは在庫削減・器具備品削減の候補にはなります。

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2011年11月21日 (月)

大きな厚手のTシャツと水仕事

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寒くなってきた時期の休日に、部屋の中でセーターなどの長袖を着るのはうっとうしいので、大きな厚手のTシャツが好みです。Tシャツといっても、夏ではないので、半袖下着の上にカジュアルな綿のボタンダウンシャツを着て、その上に重ね着するためのダボッとしたサイズの厚手のTシャツのことです。そういうTシャツを重ね着すると、動きやすいし暖かいし、それにお皿を洗ったりするときに長袖シャツの右袖を簡単にまくりあげられるので袖の下の方が濡れることもない。洗い方の上手な人はそういうことは気にならないのかもしれませんが、僕は不器用なのか、右手の長袖は水仕事の邪魔だと感じます。つまり、重宝しています。

最近も販売しているのかどうか知りませんが、欧州のあるスポーツ衣料メーカーの作る厚手のTシャツを、たとえば以前に米国で購入すると、一回り小さいサイズで十分に大きく、ダボッとしたのが欲しい場合には、たとえば日本での適正サイズがLならLサイズを買うと、相当にダボダボで、冬の室内用重ね着には便利でした。厚手で、スポーツ用なので縫製がしっかりしていて好みだったのですが、使い込んだのでさすがにだんだんとほころびてきて、代替品が何枚か必要になりました。

しかし、日本の最近の、というかしばらく前からの衣類は、ジャケットからTシャツまでたいていがぴったりサイズで、サイズ表示とその大きさやカットのしかたが僕の希望と合致しません。一回り小さくなったようです。ほころびかけているその外国製Tシャツの肩幅と胸幅と着丈を測り、そのサイズと同じようなのをさがすことにしました。このTシャツの着丈は運動用に短めにカットしてあるので、着丈は長くても妥協します。

夏が近づく頃ではないので時期も悪いのですが、そのあたりの「らしい」お店を歩いてみても、希望の品物は全く見つかりません。で、こういう場合はTシャツ専門店の通信販売に限ります。欲しいのは、厚手のしっかりした綿だけのでかいTシャツなので、妙な柄やマークやメーカーロゴが印刷されたものやデザイン重視のものは、値段が張るだけで意味がない。

そういう目的でさがしていると、そんなTシャツはやはりどこかで取り扱っているもので、有体(ありてい)に言えば、ラーメン屋のオニーサンやオネーサンの着ているTシャツなどの業務用Tシャツの専門店。ラーメン屋さん向けなどのTシャツは、でかいオニーサンや可愛らしいオネーサンが働くので各種のサイズがあり、業務用なので丈夫な厚手の綿だけものも当然そろっており、お店のロゴなどがプリントできるように無地。XXLサイズだとほころびかけてきたのとほぼ同じ肩幅と胸幅です。白ではない淡い色を複数枚注文しました。

週末の水仕事の邪魔にならないし、日中に太陽がいっぱいで室内が暑いときにはさっと脱げるし、けっこう便利な寒い季節向きのTシャツです。

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2011年11月18日 (金)

甘味のあるタイプの漬物

他の地域にもあるのかもしれませんが、北海道には「玄米漬け」という素朴な漬物があります。干した大根を、炊いた玄米、塩、砂糖、米麹(こうじ)、鷹の爪、昆布で漬け込んだもの。タクアンとの違いは、床のベースが「糠(ぬか)」ではなくて「玄米」だということです。「玄米」=「胚乳」+「胚芽」+「糠(ぬか)」という構造なので、糠(ぬか)を含んだコメの全体をベースに使うのか、白米のために除去された特定の部分を使うのかという方法の違いです。玄米漬けには砂糖が入っているので、玄米のほんのりとした甘さもあって、少し甘い。もっとも北海道では甘いものが好まれるので(たとえば、納豆に砂糖醤油をかけて食べる)、タクアンを付け込むときに少量の砂糖を入れる家庭もあるようですが、ここでは、それはさておきます。

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最近はたまたま漬物のことを考える機会が多いので、ついでに、ついでになぜ甘い種類の漬物があるのか、その役割はなにかについても考えてみます。こういうことは、漬物のことをよくわかった人にはすでにあたりまえなのかもしれませんが、こうやって考えているとけっこう楽しいので、これが屋上屋を架すという作業であるだろうことは気にしません。

甘みを出そうと思えば、甘みの程度というか甘みの定義にもよりますが、ほんのりと甘い、かすかに甘いといったものも含めて甘いとすると、甘みを出す材料は砂糖だけではありません。砂糖にも素材や作り方の違いで、グラニュー糖のように精製されて甘いだけの甘さのものや、和三盆のように甘さ以外の要素を含んだ控えめな甘さのものなどありますが、砂糖以外の素材だと、酒粕(さけかす)や味醂(みりん)も甘みのある漬物を作り出します。

甘みのある漬物というと、すぐに思いつくのは、奈良漬、守口漬け、べったら漬けなど。奈良の奈良漬は酒粕の甘み、名古屋の守口漬けは酒粕と味醂の甘み、べったら漬けは東京ですが、これは砂糖と米と米麹(こうじ)の甘み。この線上に北海道の玄米漬けも位置づけられます。主原料で区分すると「瓜(うり)の、奈良漬」に対して「大根の、守口漬け・べったら漬け・玄米漬け」。もっとも、守口漬けの守口大根は個性が際立った大根なので、他の大根と一緒にされるのを嫌がるかもしれません。

塩辛い漬物だけだと、そしてそれが比較的長い冬の間毎日続くと、たいていは嫌になり、気分が滅入ってくるので、気晴らしというか箸休めに、甘みのある漬物が用意されたのかもしれません。だから「札幌の漬物ベテラン主婦」(「札幌の賢い主婦は、11月は漬物で忙しい」)の漬物は、塩辛い、少し甘い、さっぱり味などが交互に楽しめる「タクアン(大根の糠漬け)、大根の粕味噌漬け、キャベツのニシン(あるいはタラ)漬け、白菜漬け」という組み合わせなのでしょう。そこに甘めの漬物である「玄米漬け」を加えると実にバラエティーのある品揃えとなります

お茶にはお茶うけですが、お茶うけには菓子以外に漬物があり、この場合の漬物とは甘くないもの(たとえば、野沢菜漬け)も含んで漬物ですが、甘いものを広く菓子とすれば、甘さのある漬物も茶菓子ということになります。たとえば冬の茶菓子の定番のひとつである干し柿などは、北海道では見かけませんが、生産量の違いを別にすれば、東北から甲信越、近畿、中国・四国、九州までほぼ全国各地で作られており各地で楽しまれています(生産量も多くて有名なのが、福島の「あんぽ柿」と長野の「市田柿」)。だから、甘みのある漬物を茶菓子として食べることに不思議はない。

では、日常のお茶うけとして漬物を供する地域が日本の中でどういう具合に分布しているのか。そういうことをきちんと調べる時間がないので記憶の断片をつなぎ合わせると、寒い地方、山の地方ではそういう傾向が強く、暖かい地方、海の地方ではそういう習慣はないといえそうです。しかし、寒い場所であるところの札幌に住む僕の好みは、お茶うけに漬物ではなく、日本酒に守口漬け、です。

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2011年11月17日 (木)

タクアンはラップに包んで真空パック

洗濯機や食洗機のように毎日使うものではなくて、使用頻度は平均すると1週間位に1~2回(ないしそれ以下)くらいだけれどとても役に立っている家庭用電化製品のひとつが家庭用真空パック器で、これは新しい食材を小分けして冷凍するというわかりやすい目的以外に、半分使った食材(たとえば大豆や小麦粉)や加工食材(たとえば、自家製天日干しドライトマト)、残ったトマトソースなどを専用袋で真空パックにして保存することができるし、真空パックにしなくても、自家製クッキーなどを、乾燥剤と一緒にプラ袋に入れて熱でピタッと封をすれば比較的長い間、常温保存することができます。

自家製タクアンの適当な保管場所をお持ちの家庭はいいのですが、漬け込みが完了したものを、そのまま外に放置しておくと、寒い地方では凍ってしまう、暖かい地方では酸っぱくなる。適当な時期に適当な方法でどこかに保存しないといけない。で、家庭用真空パック器の登場です。

タクアンは1本ごとに糠(ぬか)をつけたままラップに包み、それをたいていは真空パック器のメーカーが別売りしている専用袋に入れて、それを真空パック器でパックして冷蔵庫に保存すれば、まあ、1年間は大丈夫です。大丈夫だろうと、思います。「だろう」というのは、自家製タクアンは、通常、1年よりもはるかに短い期間で食べきってしまうので、本当に1年間持つかどうかを実際には確かめたことがないからです。

適当な物置などがない家庭の向けの方法ですが、4斗樽でタクアンを60本~70本程度作るような家庭では無理な話。まあ、そういう家庭はたいていは冷暗な保存場所を持っているので、余計なお世話かもしれませんが。

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2011年11月16日 (水)

新潟県の米の品揃え、北海道の米の品揃え

工業製品ではある製品の品揃えの幅を表現するのに製品ラインという用語をよく使います。どういう性格の製品ラインを持つかは企業の考え方によって異なり、それがその企業の製品戦略ともいえます。だから、ある地域が複数の品種のお米を栽培・販売している場合には、それぞれのお米の市場導入時期や相対価格などを品種別に概観すると、その地域のお米の製品ライン戦略の輪郭が少しは見えてきます。

東京に住む知り合いから、減農薬の白米で、コシヒカリ並みにおいしく、価格も5㎏で2,500円くらいまでのものをしらないかという相談がありました。それなら北海道のお米でこういうのがあるよ、と言うのも、この場合には乱暴にすぎるので、今まで食べたことのあるものを思い出し、また食べたことはないのだけれどもその品種の親戚筋で気になるお米などをいくつか調べてみました。流通量は多くはなくても、一応は安定した量のある品種でないと手に入りにくいので、そういうことも候補を選ぶパラメーターのひとつです。

食べたことのないお米については口を開かない主義ですが、この件に関しては例外です。もし、我が家で今までに食卓に登場したことがない種類でも条件に合致しそうなものがあったらお勧めして一度味わってもらい、ダメなら別の候補に切り替えるという方法をとることにしました。一度味わってもらうといっても、それが5㎏袋でしか売られていない場合には、まあ、夫婦で2週間ほどは食べ続けることになりますがそこは我慢してもらいます。

現在、その知り合いのご夫婦の食卓にどんな品種のお米が登場しているのかについては、ここでは触れませんが、候補捜しの一環として、コシヒカリ以外の新潟のコメを調べてみました。近頃の新潟県のお米の商品ラインの形成のしかたは、たとえば、北海道のそれとくらべると、非常に対照的です。

代表的な北海道のお米には、「きらら397」という、一般家庭でも人気があるのですが業務用途での需要がとくに強い品種があり、それ以外には「ほしのゆめ」や「ななつぼし」といった廉価で味の良い品種がそろっています。「ほしのゆめ」は自宅で白米を何度か食べてみましたが、おいしいと思います。つまり、北海道のお米は「安くておいしい」「安いがおいしい」つまりコストパフォーマンスに優れているというのが定評です。

しかし、「高くておいしい」ではない。だから、「高くて、そしてとてもおいしい」「高いが、とてもおいしい」「とてもおいしいので、値段はそれなりに高い」といった品種があると、製品ラインに幅と深みが出てきます。「新潟県のコシヒカリと同じくらいかあるいはそれ以上においしい、値段はそれなりに高い」というポジショニングで開発され、市場投入されたのが「ゆめぴりか」です。

新潟県ではコシヒカリが有名すぎるし生産量も多いので、新潟産のほかの品種には、新潟以外の一般消費者はほとんど目が向きません。新潟県のコシヒカリといっても、「魚沼」「佐渡」「岩船」のコシヒカリと「その他の新潟」のコシヒカリとでは価格面で明らかにブランド格差がありますが、いずれにせよ「おいしい、高い」のカテゴリーです。

その新潟県が、お米の製品ラインを「おいしい、しかし、安い」方向にもマーケティング戦略的に幅を広げているようです。コシヒカリよりも廉価で、コシヒカリ並みにおいしいとされる品種は10年前から栽培されていたようですし、3年ほど前にも廉価版の新品種が追加されていますが、それらが、コシヒカリの補完ラインとして首都圏などでプロモーションされ始めたという意味です。コシヒカリよりも安くてコシヒカリ以上においしく、かつ十分な生産量を持つ品種が別にあれば、コシヒカリの存在価値はなくなるので、コシヒカリを傷つけないような形でバランスのとれた製品ラインを構成するはずですが、そのバランスとは何か。

コシヒカリは、さまざまなヴァリエーションが追加されながら、実に長い品種寿命を持ち続けていますが(福井県で越南17号がコシヒカリと命名されたのが1956年)、新潟では2000年に「こしいぶき」が、2008年に「みずほの輝き」という新種が登場しています。それぞれの特徴を、コシヒカリをはさんでごく簡単に以下にまとめてみます。

■こしいぶき   : つや、香り、粘り。秋早い収穫の早生。暑さに強い。安価。
■コシヒカリ    : 甘み、粘り、香り、つや。逸品。ブランド力。値段は高い。
■みずほの輝き : 大粒。冷めてもおいしい。おにぎり。晩生で10月。安価。

刈り入れ時期は、早生の「こしいぶき」と晩生の「みずほの輝き」が「コシヒカリ」をサンドイッチ状態ではさみこみ、価格は、高価な「コシヒカリ」が安価な「こしいぶき」と「みずほの輝き」を従えています。それから、地域によっては農作物に対する夏の暑さの影響が問題になっていますが、「こしいぶき」は生育途中で暑さに強いそうです。

3品種の価格の相対比は、たとえば、その3つをすべて生産・直販しているある農家の消費者向け販売価格(5㎏の特別栽培米の価格)で比較すると、コシヒカリを100とした場合は、以下の通り。

■こしいぶき     :  83
■コシヒカリ      : 100
■みずほの輝き :  67

10月初めの卸売価格(相対取引価格)の相対比(ただし、「みずほの輝き」は対象外)については、「お米の品種別の価格と地域別の価格 (2011年産米)」をご覧ください。

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2011年11月15日 (火)

続・札幌で大根を干すのは10月最後の週から

札幌で大根を干すのは10月最後の週から」の続きです。

途中、冷たい雨の日や厚い重そうな雲が空を覆った日もありましたが、7割程度は大根干しには向いた天気が続いて、干してある大根も10日を経過したあたりで、「く」の字の状態は通過し、「つ」の字に向かい始めました。で、このあたりが潮時だと判断し、週末に漬け込みました。配偶者との共同作業です。柿の皮も同時に乾燥させてあり、柿の皮は自然な甘みを出すためですが、フードプロセサで砕いて一緒に投入します。

「く」の字と「つ」の字の間の「つ」に近い状態の大根は、干し始めた時とくらべると、皺だらけで体積は3分の1近くまで縮んでいます。縮んだ大根の雰囲気からして、おいしそうなタクアンになりそうです。

タクアンの原材料は、13日間干した大根、米糠(こめぬか)、塩、小さく砕いた柿の皮、そして一味唐辛子というシンプルなもの。干し大根は10本という少量なので、漬け込み容器は、梅干しを作る時に重宝しているホーロー仕上げの寸胴型を利用しました。

一番下に米糠と塩と柿の皮と唐辛子を混ぜたものを敷き、その上に干したダイコンを3~4本、それらが容器の形に沿うように敷き詰めて最初の大根の層を作り、その上に塩と柿の皮と唐辛子の入った米糠を隙間なくかぶせて大根を覆う厚めの層を作り、その上にまた干し大根の層を重ねていきます。そうすると、塩入り糠・干し大根・塩入り糠・干し大根・塩入り糠・干し大根・塩入り糠という構造になり、それで9割完成。

残った作業は、2斗(と)樽や4斗樽なら足で踏み固めるのでしょうが、そういうわけにもいかないので、手の平で上から全体をギュッとおしつけて、その上に重石(おもし)を、水が上がってくるまで載せておきます。水が上がってきたのを確認したら、重石の重量を半分にして、あとはその重量のまま。

そのまま醗酵させておくと、年末には食べられます。しかし、保管用の気の利いた納屋というのがないので、容器は屋外の、雨露を浴びない、直射日光を避けた場所に丁寧に配置します。だから、外気の最低気温が氷点下3~4℃くらいまでなら大丈夫だけれどそれ以下だと寒すぎて心配なので、それ以下になりそうだったら我が家のタクアンの完成時期とします。

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2011年11月14日 (月)

札幌の賢い主婦は、11月は漬物で忙しい

漬物のベテラン主婦の話を聞くのは面白い。札幌には札幌の、というか北海道の、漬物の特徴があります。暖かい地域で作る漬物は、必需品というよりも付加価値食品ですが、寒い地域の漬物は、あたりまえですが、野菜のない時期の野菜供給という役割を担います。

さて、その漬物ベテラン主婦の作る漬物は4種類だそうです。「10月の最後の週からしばらくは漬物で死にそうに忙しいが、やっておくとあとが助かる。」使う樽は、4斗(と)樽のみ。(【註】1斗は「いっと」と読み、約18リットル。石油缶の大きさです。1斗=10升なので1升瓶10本分ともいえます。だから4斗樽は相当に大きい。)

まず、タクアン。これは全国各地で作られている漬物で、我が家でも作ります。細い大根が向いていますが、ベテラン主婦は、時期と値段をにらみながら、一番小さなサイズをなじみの八百屋で大量に購入するそうです。野菜や果物のサイズは、3L・2L・L・M・Sなどと表示されますが、その区分でいうとSサイズ。2週間ほど干し、漬け込みます。生産量は4人家族で70本だそうです。

次は大根の粕味噌漬け。これは小さなサイズへのこだわりはないそうですが、大根を酒粕(さけかす)と味噌、それに砂糖を加えて漬け込みます。以前賞味させてもらいましたが、僕にはやや甘めだけれども、実に旨い。我が家ではこれはつくりません。

そして、キャベツの鰊(にしん)漬け、ないしは鱈(たら)漬け。キャベツは札幌大球(さっぽろだいきゅう)という巨大キャベツ(平均重量は12~13kgなので、頼りない女子では抱えきれないくらいの大きさと重さ)を使います。札幌大球は漬物用のキャベツとして開発されたそうです。あの大きさをまな板の上で毎日切り刻むのは無理なので、そうなのだろうと思います。投入素材は、札幌大玉、大根、にんじん、身欠きニシン(あるいは塩漬けのタラ)、麹(こうじ)、昆布、鷹の爪、しょうが、塩、砂糖だそうです。我が家ではこれも制作対象外。ただし、上手な主婦が漬けこんだものをいただいた場合は、ゆっくりと賞味します。市販のものを買ったりすることはない。

4番目は白菜漬け。白菜の漬物は、浅い漬物を作る家庭であればいわば定番ですが、このベテラン主婦の白菜漬けは、白菜と酒粕。4斗樽なので白菜は25個くらい使うのでしょうか。けっこうな量です。

我が家では、普段の漬物は、糠(ぬか)漬けです。大根とキュウリとナスが基本ですが、季節に応じて品目が入れ替わります。糠床はホーロー容器で収納場所は冷蔵庫。糠床を毎日かき混ぜるのは配偶者の仕事ですが、まれに僕がかき混ぜることもあって、そういう場合は指先が凍る感覚を味わうことができます。冬の定番は白菜の浅漬け。それから毎年ではないけれど、たくあん。6月から7月にかけては「らっきょう漬け」(これも一応漬物と考えて)を作ります。1か月ほど寝かしたあと食べ始めますが、生産量が少ないので、すぐに売り切れる。

晩秋に収穫したキャベツを、そこらあたりに降る雪を積み上げた雪の中で保存したのを「越冬キャベツ」や「雪中キャベツ」と呼んでおり、露地もの野菜のない冬や春の間は、そう表示された北海道産キャベツが野菜売り場に並べられています。積み上げた雪の中は、温度は0℃前後で安定しており、湿度もある。キャベツの保存には実に適切な環境です。「雪中キャベツ」の生産で有名なのが、旭川市の少し北にある和寒(わっさむ)という町。

途中で漬物がなくなった場合、このキャベツをもりもり食べれば、とりあえずの野菜不足は解消します。

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2011年11月11日 (金)

頌(じゅ)と文字

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頌(じゅ)とは、偈(げ)や偈頌(げじゅ)とも呼ばれますが、韻文のこと。とくに仏教のお経や論文(論書)の中に出てくる、詩の形式で表現した教えや論述をさしてそう呼んでいます。偈(げ)はサンスクリット語 ガーター (gatha、ただしaは両方とも長音でアーと伸ばす)の音写だそうです(あまり、音が似ているような雰囲気ではありませんが、当時の中国の発音だと似ていたのかもしれません)。頌(じゅ)はその意味を漢字に訳したもの。だから、偈頌(げじゅ)というのは「ヴァース詩」といった具合で、言葉の音と意味をダブって糊でくっつけたような変な感じの用語なのですが、仏教関係の書物にはよく出てきます。

空海は韻文が好きだし得意なので、重要な箇所は、仏教の伝統にならって、そこまでの散文の説明を韻文でまとめるといった形が、彼の著書にはよく見られます。そういう部分は、たいていは、「頌(じゅ)に曰く」(韻文によって説明しますと)で始まります。

なかには、おそらく最初に韻文形式での論述骨子ができていて、それで十分というかそれで完璧なのだが、内容を周りの人たちに説明する必要から「ああ、めんどうくさい」とでも思いながら書いたのかもしれない著作もあります。たとえば「即身成仏義」。どこにも「ああ、めんどうくさい」とは書いてないし、本当は著者自身もそんな風には決して思っていないのかもしれないのだけれども、著作が、世界をそこに凝縮させたような56文字の韻文(頌)の意味を解説する性格のものなので、そんな風に想像してしまいます。

で、その「即身成仏義」の七言八句の頌(じゅ)です。

六大(ろくだい)無碍(むげ)にして常に瑜伽(ゆが)なり
四種(ししゅ)曼荼(まんだ)各(おのおの)離れず
三密(さんみつ)加持(かじ)すれば速疾(そくしつ)に顕わる
重々(じゅうじゅう)帝網(たいもう)なるを即身と名づく
法然(ほうねん)に薩般若(さはんにゃ)を具足(ぐそく)して
心数(しんじゅ)・心王(しんのう)刹塵(せつじん)に過ぎたり
各(おのおの)五智(ごち)・無際智(むさいち)を具す
円鏡力(えんきょうりき)の故に実覚智(じっかくち)なり

以下は、複数の専門家の現代語訳を参考にした、僕なりに納得のいく、しかし冗漫な訳。

・宇宙の六つの構成要素は、お互いに融けあっていて、常に統一されている。
・宇宙を、四種類の曼荼羅(まんだら)という形で象徴的に別々に表現した場合でも、やはりおのおのが離れることはない。
・私たちの肉体・言語・意識の三種類の働きが仏のそれぞれの働きと応じ合う時、速やかにさとりの世界が顕われる。
・この六つと四つと三つのそれぞれは重なり合っていて、帝釈天の網(にある宝石)にお互いが映るような状態であり、だからこのままで私たちは仏の状態であるといえる。
・あらゆるものは、あるがままに、あらゆるものを知る智慧をそなえている。
・すべての人たちには、心の作用と心の主体があり、その数は限りない。
・心の主体と心の作用のおのおのには、(もともと私たちがそうであるところの)大日如来の持つ五つの智慧と際限のない智慧がそなわっている。
・それらの智慧ですべてを鏡のように照らすとき、真実をさとった智者となる。

すでに鬼籍に入られた小説家で空海に関する著作もある方が、空海の書には音楽的なリズムがあると評しました。

空海は霊性の人であり、同時に言葉の人です。世界はお互いに(言葉や文字を媒介として)響きあっている、と詠んだ人なので、空海の文を構成する行や草や雑体などの書体が入り混じった文字の流れは、未分化の世界が言葉(文字)に顕在化する際のそのそれぞれのもっともふさわしい結晶の仕方を、空海の感性と世界観がなぞったものかもしれません。飛白体という文字だか文字の背後の生命力だかわからないような恐ろしげな書体も好きだったようです。

空海も、老子が「道徳経」の冒頭で語るような「奥のぼんやり」と「個別の顕れとしての形や名前」を同時に見ていた人なのでしょう。

「風信帖」と呼ばれている手紙は空海から最澄への返書ですが、後年の二人の確執の強い香りがすでに濃厚に漂っています。この手紙の書かれた背景を説明すると、配偶者はこの返信のことを、空海から最澄への「あっかんべー手紙」と形容しました。そういう気分の時の方が緊張しながらも筆が自在に走って、心や存在のありさまが文字の動きに見事に凝縮されるというのは、空海らしいといえば空海らしいのかもしれません。

 

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2011年11月10日 (木)

(続) 迷ったら、食べ物は、安全サイド(その2)

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一方、時間の幅に関してわかりにくいのは、たとえば、高田教授の作成した「線量6段階区分」(35ページ)です。線量と危険度あるいは安全度との関係を図式化したもので、線量と危険度・安全度との関係に関する教授の考え方は明快なのですが、明快でないのはその線量をどれだけの時間をかけて被曝(外部被曝と内部被曝)したと想定しているのか、その時間の幅に関して、です。それが瞬間の線量なのか、あるいは1時間のそれなのか、1か月の合計線量なのか、1年間の蓄積線量なのか、10年なのか、それとも一生涯といったもっと長い時間なのか。複数の時間幅が同居しています。

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たとえば、線量という場合には、ともかく累積線量が重要だから時間の長さは短くても長くても同じなので気にしなくていいといった記述があるとアマチュアにはわかりやすいのですが、それが見あたらない。原爆や核実験あるいは原子力発電所の事故などで瞬間的に大量の線量を被曝し、その後、病院に隔離収容されるまでに高い線量を2日間浴びたというような場合と、低線量の外部被曝と食べ物・飲み水・呼吸などによる低線量の内部被曝がたとえば3~4年間続いて、その結果として累積線量が相当なレベル(たとえば教授のいうD+ レベル)に達したような場合があるが、それらの違いをどう区分して考えるのが妥当なのか、そういう区分は不要なのか、そのあたりがよくわからない。

次に、わかりにくい箇所(わかりにくい箇所とは、そこにわかりにくいところがあるという場合と、個別の記述はわかりやすいのだがそれに続く記述に含まれる別の時間幅との関連でわかりにくいという場合の両方)を「線量6段階区分」(35ページ)以外に、2つ引用してみようと思います。たとえば、単位の違う時間軸が連続すると、小説ではないので、読者は混乱します。

『レベルDは2から10ミリシーベルトで、これは自然界にある放射線量や、例えば病院におけるCT検査といった医療検診の際に受ける程度の量である。』(38ページ)

自然界にある放射線量は通常は1年間の累積被曝線量で地域比較されているので「1年間」という一定期間での議論。また、検診の際のCT検査は、普通は「15分程度」という時間幅の議論。異なった時間の幅が連続してひとつの文の中に出てきます。

以下も、異なった時間の幅が連続して登場する例です。

『確かに、牛乳は水道水などと異なり、食物連鎖によって放射性ヨウ素の濃度が高まり、この汚染牛乳を飲み続けると、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積して甲状腺の健康被害が懸念される。』(44ページ)そして、この記述のすぐ直後に『しかし、3月20日の報告によれば、福島県の牛乳は、1キロあたり5200ベクレルの放射性ヨウ素に汚染されているとして出荷停止措置がとられたが、仮に出荷停止前のこの原乳を最大で5リットル飲んだとしても、それは0.6ミリシーベルト(レベルE:0.02~1ミリシーベルト)以下で、甲状腺へのリスクは無視できる。』(44ページ)という記述が続きます。

最初の記述は「一定期間」そういう牛乳を飲み続けた場合にどうなるかという「6か月とか1年とかの時間の幅」を対象とした議論、一方、それに続く記述は、仮の話ですが、牛乳の好きな人はけっこうな量を飲むので1日や2日という時間幅の議論です。この二つの異なる時間幅の議論が、『(飲み続けると)甲状腺への健康被害が懸念される』『(5リットル飲んだとしても)甲状腺へのリスクは無視できる』と逆の方向の議論として連続しているので、読者は混乱し、そしてぼんやりしていると後半の陳述に引きずられます。

食べ物や食材に関心を持つ物にとっては、瞬間の悪影響や単一食材の悪影響を考慮することも大切ですが、食べることは毎日のことであり、たいていは10品目以上の食材(ごはん、複数の野菜、魚介類、肉類、牛乳など)を毎日食べ、複数の飲みもの(お茶や水など)を毎日飲むので、長い半減期を持つ放射性物質の影響、および農産物の収穫頻度や収穫の季節と出荷の時期、畜産物の飼料と飼育期間、魚介類の食物連鎖、食材の販売までの冷凍期間などのパラメーターを考慮すると1年以上数年といった時間の長さで考えることも必要です。小さな子供を持つ家庭の場合は、とくにそうです。

だから、『筆者は97年にチェルノブイリ事故調査で現地入りした際、ロシア最大の汚染地とされたザボリエ村でセシウムの放射能が4000ベクレルに達したキノコを食べた。その後、調べてみると、私の内部被曝線量は0.04ミリシーベルト(レベルE:0.02~1ミリシーベルト)にすぎない。』(45ページ)といわれても、キノコのみを1回だけ食べて、一定期間後の内部被曝量がたいしたことがなかったというだけなので、ちょっと物足りない。キノコが汚染されていたらその近隣の他の食材も汚染されているので、複数の食材からなるその地の標準的な食事をその地の食材で、たとえば1週間食べ続けた結果に対してなら、しっかりと耳を傾けたいと思いますが、キノコだけで食事を済ませる人はまずいません。現地の日常の食卓の再現が現場では不可能なら、現地の複数食材を一定期間食べ続けるという発想の簡便なシミュレーションでも記述してあれば、納得の度合いは高まります。ヴォッカとキノコで晩ごはんなどという光景も想像してみますが、独身の歳をとった酔っぱらいを別にすれば、一般家族の日常にはこの光景はない。

また、この記述で気になるのは、ひとつは、4000ベクレルとは1㎏あたり4000ベクレルだと思いますがその単位量の記述が、単に書き忘れたのか、ないこと、そして、別の箇所で『チェルノブイリ事故災害と違い、福島県および東日本の放射線線量はけた違いに低く、健康影響のリスクは無視できるくらいであった。』(9ページ)とあり、だから、現地で食べたのが『ロシア最大の汚染地とされたザボリエ村でセシウムの放射能が4000ベクレルに達したキノコ』(45ページ)ということは、4000ベクレルというのはとてもひどい放射能汚染レベルということだと著者が考えているらしいと思われます。しかし、同じ45ページに『茨城県日立産のホウレンソウは(放射能が)1キロあたり540から5400ベクレルなので』という一節があり、5400ベクレルは4000ベクレルよりも大きな値なので、キノコとホウレンソウの違いはありますが、茨城県のホウレンソウにはチェルノブイリのキノコと同じ程度にひどく汚染されているものがあるということになり、つまり、このデータからは『福島県および東日本の放射線線量はけた違いに低く』とは言えません。

こういう本棚に保存しておくような内容を持った本の中でなるほどと思うところはなるほどと納得し、ひっかかるところはひっかかったままにしておいてその理由を考え、そして参考にする部分は参考にしながら、我が家では、食べるものに関しては、「迷ったら安全サイド」という姿勢をできるだけ維持します。

いちばん安心して準拠できるのは、水(飲料水)のWHOガイドライン(1リットルあたりのヨウ素 I-131が10ベクレル(Bq)/L、セシウムCs-134は10ベクレル(Bq)/L、セシウムCs-137も10ベクレル(Bq)/L という基準値)。だから、特定の食材や飲みもの(コメや大根・小松菜・ニンジン・シイタケ、牛肉・豚肉、鶏卵、サンマ・アジ・鮭・牡蠣、リンゴ・柿、牛乳、お茶など)の放射性セシウムや放射性ヨウ素の濃度が個別に1㎏(ないし1リットル)あたり10ベクレル(Bq)/kg以下だと、ヨウ素131の半減期は8日と短いのですぐに消滅するとしても、安心してそれらを毎日10品目以上(実際には10品目ということはなくてその1.5倍から2倍くらい)一緒に食べ続けられるということになります。

北海道の魚と北海道のお米については、「北海道における水産物の放射性物質モニタリングなどの結果」(ほぼ毎日新しい測定データを発表)と「水田(土壌、玄米)の放射性物質モニタリング調査結果」が役に立ちます。

なお、「迷ったら、食べ物は、安全サイド」はこちら

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2011年11月 9日 (水)

(続) 迷ったら、食べ物は、安全サイド(その1)

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副題は「複数の食品と単一の食品、短い時間幅と長い時間幅」です。

入手に手間取った「高田 純」氏(札幌医科大学教授・理学博士)の「福島 嘘と真実 東日本放射線衛生調査からの報告」を読みました。福島県の放射線汚染状況の客観的な観測結果・測定結果や世界の他の地域の核災害との比較、著者の考え方がとても参考になり感謝していますが、読んでいてわかりにくいところ、というか、記述の方法に関してどうしてそうしたのかいくぶん気になるところもあります。ないものねだりを含んだ感想になるかもしれませんが、ご容赦願います。

この90ページの本が想定している読者は、表紙に「放射線防護学入門シリーズ」とあるのと、中に収録されている複数の講演会の記録などから判断すると、放射線について素人の日常生活者か、放射線防護学には不案内だが別の専門分野を持つ医師だと思われます。

放射線量にかかわる事象についての時間幅の不統一がわかりにくさの原因のひとつのようです。ある事柄が続くその時間幅の記述があいまいか、あるいは複数の異なった時間幅が連続して(入り乱れて)同一段落内に登場し、その結果、放射線量と時間幅の関連がよく見えなくなることがあります。もうひとつが、時間幅と関係するのですが、議論の対象となる対象汚染食材の数です。ヒトは毎日、控えめに言って10品目以上の食材(コメやパン、数種類の野菜、魚介類、肉類、牛乳、お茶、や水など)を食べますが、食べ物への関心が相対的に低いのでしょうか、この本のなかでは単一品目の放射線量とその危険度や安全度だけが論じられる傾向が強いようです。

最初からないものねだりになっても失礼なので、わかりにくい部分から始めるよりも、参考になった、わかりやすい結論的な部分の引用から始めたいと思います。引用部分は『・・・』です。

『福島を除く東日本の公衆の個人線量は屋内滞在による遮蔽効果もあって、年間外部被曝線量は1ミリシーベルト以下、レベルE(0.02~1ミリシーベルト)である。福島市は2011年度の年間線量はレベルD(2~10ミリシーベルト)。瞬時被曝ではないので、小児、胎児への健康影響は心配するほどではない。次年度以降も徐々に年間線量は低下していく。』(11ページ)

ここでは時間の幅が「1年間」で統一されていてわかりやすい。

『福島県民の内部被曝については、地元産の農産物および飲料水を採り、空気を吸い、体内に放射性セシウムを取り込んだと仮定した場合の線量は、外部被曝のおよそ3分の1と考えられる。この比率は、ロシアの放射性セシウムの汚染地で自給自足する農民から評価した値である。福島市民に当てはめると、2011年度の年間内部被曝線量はおよそ1ミリシーベルトである。実際3か月後の6月後半に、南相馬市、いわき市、郡山市で計33人の放射性セシウムの全身量を検査したところ、全員が推定年間線量として1ミリシーベルト未満であった。したがって内外被曝の総年間線量はレベルD(2~10ミリシーベルト)と推定される。』(11ページ)

ここでも時間幅の単位が1年間でわかりやすい。同様に、そのすぐあとの一節も、時間幅の単位が1年間で理解しやすい。

『放射性セシウムの環境中の半減期は、30年よりは短い。それは、初期に存在するセシウム134の半減期が2年と短いばかりか、風雨などによる地域からの掃き出しがあるからである。2年目はすでに放射性ヨウ素が消滅しているので、その線量はない。さらに、外部被曝に加え、内部被曝も減衰する。こうして、福島県民の年間線量は2年目に大幅に減衰する。レベルF(0.01ミリシーベルト以下)、E(0.02~1ミリシーベルト)、D(2~10ミリシーベルト)と安心の方向に推移する。』(11ページ)

<(その2)に続く>

福島 嘘と真実─東日本放射線衛生調査からの報告 (高田純の放射線防護学入門シリーズ)

著者:高田 純

福島 嘘と真実─東日本放射線衛生調査からの報告 (高田純の放射線防護学入門シリーズ)

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2011年11月 8日 (火)

けっこう大きい「さつまいも」の産地別価格差

農産物には、お米のような基礎農産物とメロンのような付加価値農産物がありますが、さて「さつまいも」はどちらなのか。現在では主食ないし主食の代替品とは全く考えられていないので、ここでは付加価値農産物のひとつということにします。

お米も高級ブランド米だと基礎農産物というよりも付加価値農産物となりますが、「さつまいも」もそれに似ています。

この10月の東京市場と大阪市場の「さつまいも」の1㎏あたりの卸売価格を、それぞれの市場への10月の入荷量が上位の4生産地でくらべてみます。入荷量が上位の4生産地といっても、千葉が圧倒的に多くて 2,261トン、茨城が 1,219トン、徳島が472トン、鹿児島と宮崎は少なくて、それぞれ168トンと54トン。

魚沼産コシヒカリと特には有名ではない地域のお米との価格差は相当なものです(「お米の品種別の価格と地域別の価格 (2011年産米)」)。「さつまいも」もその価格差の大きさに驚くかもしれません。新潟の「魚沼産コシヒカリ」に相当するのが、徳島の「鳴門金時(なるときんとき)」です。

1kg_201110

我が家でも、「さつまいも」を時々は普段の料理に使いますが、小腹がすいたときにオーブンで焼いておやつとして食べる鳴門金時の甘いホカホカは、寒い時期の楽しみのひとつです。

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2011年11月 7日 (月)

札幌で大根を干すのは10月最後の週から

タクアンを作るために、サイズのできるだけ小さな大根を干し始めるのは、知り合いの漬物ベテラン主婦によれば、札幌では10月の最後の週だそうです。しかし、サイズのできるだけ小さい大根は入手が難しいので普通のサイズか若干小ぶりなので我慢するとしても、作業開始の時期は自分で選べます。

外気が適度にヒヤッとして、そして陽光がいっぱいという条件がそろわないと、大根はきれいな「く」の字や「つ」の字や「の」の字になってくれません。乾燥を促す軽い乾いた風があればさらによい。今まで適当にやっていて、どうも時期がずれているらしいという思いがあったのですが、やっと札幌での最適時期がわかりました。f(^^;)。

去年はサボったので、今年は急にやろうと思い立ち、10月30日(日曜)の午後にわずか10本を紐で縛って、陽によく当たりしかし雨の降りこまない場所に吊るしたところです。さいわいにも、それ以来天気が良くて空気は適度にひんやりとしてけっこうな具合の天気が続いています。一週間たってきれいな「く」の字の状態にはなりました。ことしは少し長く干して、「つ」の字に近い状態をめざします。

漬物用の米糠(こめぬか)も入手済み。ぼんやりとしているとこの時期の米糠はすぐに売り切れてしまいます。60~70本のタクアンを作る家庭から見ればママゴト程度の本数ですが、自家製の味をそれなりに楽しめます。

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2011年11月 4日 (金)

GM作物と鶏・豚・牛とTPP (その2)

米国の巨大アグリビジネスが農薬とセット販売しているGM作物 (たとえば、そのあたりの雑草をすべて枯れさせてしまうような強力な除草剤と、その除草剤には耐性を持った作物のセット販売) は、情報処理技術関連のインフラソフトウェアやそれを拡散させるビジネスモデルのような輸出戦略性を持っています。

TPPアジェンダには関税引き下げだけでなく金融分野やサービス分野の自由化も含まれていますが、農産物や食品の「安全性の自由化」もまた含まれています。農産物や食品の安全性の自由化とは上品な表現ですが、上品でない表現をすれば、日本などへの輸出促進のためにはその方策は、まあ、何でもあり、ということです。つまり、十分な輸出量が確保できる程度にまでは、安全性基準を柔軟に引き下げることに日本が同意するという意味での自由化になりそうです。

我々がすでに見聞きしている例には、たとえば、輸出に都合の良いロジックで正当化された対象牛肉の選定と検査方法、他の側面やマイナス面を覆い隠して農産物の生産効率だけをむやみに強調するGM作物プロモーションなどがあります。

すでに、結構な量のGM作物がGM作物生産国から日本に輸出され、日本で消費されているという意見もあります。そういう客観的なデータが見あたらないので何とも言えないのですが、その確率は「状況証拠」から判断すると高そうです。

トウモロコシと大豆、それから油用菜種(ナタネ)と小麦や大麦・裸麦の輸入量とその主要輸入相手国は以下の通りです(農水省「農林水産物輸出入概況 2009年」)。

・トウモロコシ: 年間輸入量は1,629万トン(うち、飼料用は1,151万トン)、主要輸入相手国は輸入量の順番に「米国」、「ウクライナ」、「アルゼンチン」(ただし、ほとんどが「米国」)

・大豆: 年間輸入量は339万トン、主要輸入相手国は輸入量の順番に「米国」、「ブラジル」、「カナダ」

・大豆油粕(かす)(調整飼料用): 年間輸入量は191万トン、主要輸入相手国は、輸入量の順番に「中国」、「インド」、「米国」

・菜種(採油用): 年間輸入量は207万トン、主要輸入相手国は輸入量の順番に「カナダ」、「オーストラリア」、「米国」

・小麦: 年間輸入量は470万トン、主要輸入相手国は輸入量の順番に「米国」、「カナダ」、「オーストラリア」

・大麦(裸麦を含む): 年間輸入量は139万トン、主要輸入相手国は輸入量の順番に「オーストラリア」、「カナダ」、「ウクライナ」

大豆やトウモロコシや菜種に関しては「米国」「カナダ」「ブラジル」「アルゼンチン」などがGM大豆やGMトウモロコシやGM菜種などの遺伝子組み換え作物の生産に熱心なので、これらの国からそうした穀物を輸入しているということは、遺伝子組換え作物もひそかに相当に日本に入ってきているかもしれません。(GM作物の大量生産国のなかには「捕鯨反対」という意味で「クジラ」に結構なエネルギーを使っている国も多い。そういう感性を持っているのならそのエネルギーを「GM作物反対」にも向けたらどうかとも思うのですが、どうもそうはならないらしい。)

ある米国系アグリビジネスの日本法人の責任者が、以下のような発言をしていました(日本農業新聞インタビュー、2011年10月31日)。

『日本では推定で年間約1,700万トン(のGM作物)を輸入し、消費している・・・中略・・・穀物輸入量に占めるGM作物の割合は大豆では75%、ナタネでは85%と推定される・・』。

データソースに言及されていないのでその正確性については確かめようがありませんが、ここではその数字をそのまま使います。

GM作物と鶏・豚・牛とTPP(その1)」での大まか図だと(下に再掲)、年間に3,000万トンの穀物(小麦、大豆・大豆かすやトウモロコシなど)が輸入されていますが、もしそのうちの1,700万トンがGM作物だとすると、割合は57%。日本ではヒトの口にはGM作物は直接には入っていないと考えると、家畜の飼料となっている穀物の相当な部分(大まか数字だと2,000万トンの中の1,700万トンなので85%)がGM作物ということになります。

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卵(鶏卵)は6個とか10個とかのパックで売られていますが、1個あたりの値段の幅は非常に大きい。安いのは1個14~15円くらい。それなりに高いのは1個が65円。特殊な種類でなくて、1個110円を超える高価なものもあります。1個65円くらいの地元産卵のパックに同封されているペラの商品案内には次のように書かれています。『道産小麦主体の自家配合飼料給与。遺伝子組み換え飼料を使っていません。』これは、つまり、鶏卵業者の中には遺伝子組み換え飼料を使っているところもある、というメッセージとも解釈できそうです。実態はよくわかりませんが、15円と65円の違いは、普通に考えると、エサ代と場所代(ケージ飼いか平飼いか)の違いなので、そういうこともあるのかもしれません。

太平洋の向こう側の国に強圧的に誘導されてプラス面とマイナス面をぼんやりとさせたままTPPに参加すると、状況がなし崩し的に悪化して、たとえばGM作物が日本でもヒトの口へ直接に入ってくる危険性がある。これは避けたい。毒を食らわば皿まで、という無茶は御免こうむりたいし、GM作物の好きな米国の巨大アグリビジネスの懐具合をこれ以上よくしてやるのも腹立たしい。

「安全性審査の手続きを経た遺伝子組換え食品および添加物一覧」(厚生労働省、平成23年9月6日現在)を見ると、2001年3月から2011年9月6日までの10年半の間に安全性審査を通過した対象作物が並んでおり、申請者/開発者は当然すべてが欧米のアグリビジネス企業(登録品種の多い順に米国、スイス、そしてドイツ)ですが、作物などの種類別の概要は以下の通り(作物は167品種、添加物は14品目)。

・じゃがいも:       8 品種
・大豆:           9 品種
・てんさい:        3 品種
・とうもろこし:     102 品種
・なたね:        18 品種
・わた:          24 品種
・アルファルファ:    3 品種
・添加物:        14 品目

作物に関しては、その性質として「除草剤耐性」を持つものが圧倒的に多く、「害虫抵抗性」をもつもの、「ウィルス抵抗性」を持つものがそれに続きます。添加物の目的は、「生産性の向上」となっています。

年ごとの認可品種数・品目数の推移は以下の通り。最初の年は「在庫」を一斉に申請するので数が多いのは当然。この2年でGM作物の認可数が急増しているのが気になります。(なお、グラフの中で食品というのは厚労省の用語で、実際はGM作物・GM農産物のことです。)

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2011年11月 3日 (木)

GM作物と鶏・豚・牛とTPP (その1)

「GM」作物とは「遺伝子組み換え」作物のことで、GMはGenetically Modifiedの略です。

最初に、ごくおおまかに日本の穀物消費の状況を概観してみます(下の図をご覧ください)。

穀物を消費するのはヒトと家畜(鶏・豚・牛)で、その食べ方は、加工度の少ない形で食べるか(たとえば、ヒトの場合だと、ご飯を炊いて食べる、トウモロコシを茹でて食べる、家畜の場合だと大豆の搾りかすを食べる)、加工されたものを食べるか(大豆の加工品であるところの豆腐を食べる、小麦粉や米粉でパンを焼いて食べる、大豆や菜種を圧搾ないしは大豆や菜種を化学処理して取り出した植物油でドレッシングを作って野菜を食べる、あるいはマヨネーズを買ってくる)です。

「ごくおおまかに」というのはたとえば日本で消費されている米(コメ)の量は、現在は、年間に800万トン程度で1,000万トンではないし、小麦や大豆も一部は国内生産されていてすべてが輸入されているのではないのですが、以下のように1,000万トンの固まりで割り切って全体を眺めた方がわかりやすい。穀物の中には、大麦・裸麦なども含まれます。

なお、コメはほとんどをヒトが食べており、また平成21年度の「食料需給表」(農水省)によれば、穀物全体の自給率(重量ベース)は26%、そして小麦の自給率が11%、大豆は6%です。

つまり、

【1】 日本の穀物自給量とはほぼ米(コメ)の自給量のことで、小麦や大豆やトウモロコシは輸入に依存
【2】 米・小麦・大豆・トウモロコシなどの穀物の半分はヒトが食べ、半分は家畜が飼料として食べている

という穀物消費の構図になっています。

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日本の食品売り場の豆腐や納豆、それからモヤシなどの「ヒト」向け食品・食材の原材料欄には、まずそのほとんどには、「大豆:遺伝子組み換えでない」と表示されていますが、これが家畜向けの大豆やトウモロコシになると実態はよくわからない。

TPP議論での懸念のひとつが、TPPに参加すると、遺伝子組み換え作物(GM作物)がGM作物の大好きな米国などからなし崩し的に日本に流入してくるかもしれないということです。過去のBSE牛のトラブルでも解るように、米国は戦略的な農業関係の輸出品目に関してはゴリ押しの好きな国です。

農産物以外の例だと、今では結構な過去の出来事になりましたが、設計思想のひどい、大きな携帯電話を日本に押し付けることにいやらしいくらいに熱心だったこともあります。「なぜこの素晴らしテクノロジーを理解できないのか」と世間知らずの(あるいは世間知らずを装った)米国側の交渉担当者がマスメディアに向かって怒鳴っていました。他のはるかに酷い(ひどい)例は金融分野での自由化要求とその要求の火事場泥棒的な遂行でしたが、ここでは触れません(「TPPと学習効果」)。

(その2)に続く。

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2011年11月 2日 (水)

続・名古屋のデパ地下食品売り場: 「漬物」編

お米と魚介類の後は漬物です。

漬物売り場では、細長い守口大根を漬けこんだ「守口(もりぐち)漬」が威風堂々という態度で棚に並んでいます。守口漬は、塩漬けした大根を酒粕(さけかす)で何度も漬け替え、味醂粕(みりんかす)を使って味を仕上げるタイプの漬物なので、調味料の愛知県としては、これが漬物の軸になっているのは当然のような気もします。

愛知県とひとくくりにすると、尾張の人も三河の人もそれぞれに地元の味の主張があるのであまりいい気分ではないのかもしれませんがそれは気にしないことにして、僕の意見では、食べ物に関する愛知県の良さは基礎調味料にあります。

愛知県の基礎調味料は、「味噌」(米麹や麦麹を使わず大豆だけで作った八丁味噌)と「味醂(みりん)」と「酢」が有名ですが、我が家でお世話になっている愛知県産の伝統調味料は、「味醂」と「白醤油(しろじょうゆ)」。両方とも三河産のもの。

原料が有機もち米・有機米麹(こうじ)・自家製の有機米焼酎という贅沢な造りの、この味醂を使ってしまうと、まず代替が不可能です。料理の好きな家庭なら、外で食べる回数を減らしても、その浮いたお金をこちらに回したいと思わせるような種類の味醂だと思います

味醂と違ってあまり知られていない(と僕が思っているだけかもしれない)白醤油は、「大豆」から作る普通の醤油とは違い、「麦」を主原料とした琥珀色の醤油で、「しろたまり」と呼ばれています。その醤油の原材料は、国内産小麦と国産自然海塩と米焼酎のみ。だから、たとえば、里芋(さといも)を白くおいしく煮る場合はこの白醤油が向いています。「しろたまり」は、足助(あすけ)という奥三河の村、つまり、三河地方の奥深いきれいな山里で仕込まれた醤油です。僕は、以前、その村に仕事の関係で一度だけですがお邪魔したことがあり、その川と緑と空気はよく覚えています。

こういう調味料文化の中で生まれたのが守口漬。似たような種類の漬物に奈良漬があり、その歴史は奈良漬の方がはるかに古い。しかし、歴史の長さの違いはさておいて、奈良漬は塩漬けした白瓜(うり)を酒粕に根気よく何度も漬け込んでできる漬物です。味醂粕は参加していない。我が家では守口漬の大根の食感と味醂粕が加わった風味の方を重宝しています。

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2011年11月 1日 (火)

名古屋のデパ地下食品売り場: 「米(コメ)と魚介類」編

所用で名古屋。そういう時はたいていは、隙間の時間を使って繁華街にある複数のデパートの地下食材・食品売り場を歩きます。

まずお米。

立ち寄ったお米の売り場は3店。それぞれ専門の米穀販売業者の出店です。だから、名古屋の消費者の好みとその業者の意思とが入り混じったような品揃えになっているはずです。デパート内の小さな売り場なので、ブランド米の小口パック販売が中心。目立つのは1㎏と2㎏のパック。500gくらいの小さな贈答用パックの詰め合わせも並んでいます。5㎏袋もありますが数は少ない。

さてそのブランド米ですが、どうだといった感じの押し出しでいい場所を占めているのが魚沼産や新潟(魚沼ではないが新潟という意味)産の「コシヒカリ」。隣の棚に、「あきたこまち」や味の良いとされている近隣地域の「コシヒカリ」。それからお店によっては、「魚沼産コシヒカリ」のすぐ隣に飛騨地方の「龍の瞳」(コシヒカリの大粒な突然変異種)が座っています。つまり品揃えは、すでに評判の固まっている銘柄米が多く、北海道の「ゆめぴりか」や山形の「つや姫」といった新参者は見あたりませんでした。名古屋では、お米に関しては、ブランド(品種と生産地域)の確立したもの、ないし地元に近いという意味での近隣の良食味米が選好されるという仮説がたてられそうです。

次に魚介類。

以前から、名古屋の主婦がなぜボードーを起こさないのか不思議だったのですが、売り場の魚介類の状況はその感想を持った時からずっと変わっていないようです。地元の魚介類が全くといっていいほど並んでいない。なぜ、そのことに関する不平不満が爆発しないのか。知多半島の南部(南知多)は三河湾と伊勢湾の真ん中でいい漁港もありおいしい魚介類も豊富なはずなのですが、それが売り場に並んでいないということは、そこで水揚げされたものが名古屋の一般消費者の台所には入らないということです。

知多半島の旅館に泊まって季節のおいしい白身魚やフグ、エビやカニを堪能するという話はよく聞くので、地元の魚介類は地元の海鮮旅館ではたっぷりと供されているらしい。名古屋の寿司屋や料亭・料理屋、レストランなどにも供給されているのも間違いないでしょう。今回、名古屋市内でお昼ごはんに食べたパスタはイカと渡りカニを使ったもので結構な味だったのですが、このイカと渡りカニは南知多産に違いない。

高級品は、まず間違いなく高い値段を求めて東京(築地市場)に向かっていると考えられるので(フグは別の場所に別の目的で運ばれていくそうだが)、つまりは、地元の魚介類は、地元の台所には縁のないところで流通しているようです。地産地消だけれども、地産「業務型」地消であって、地産「家庭型」地消ではない。だから、デパートの地下の魚売り場に並んでいる魚介類に愛知県産のものや知多産は見かけません。近所の魚だと目につくのは伊勢湾をはさんだ三重県の白身魚くらいで、あとは北海道の鮭から九州の鯛までとほとんどが余所(よそ)のものです。

それから、魚の丸ものが見あたらない。売っているのは切り身とパックの刺身ばかりです。主婦が家庭で魚をさばくということが嫌いらしい。魚売り場でも、その場で丸ものをさばくといった付加価値サービスは好きではないらしい。

名古屋の家庭の魚介類ニーズに関しては、だから、僕にはよくわからない。しかし、南知多の海鮮旅館などの人気が高いということは、名古屋の消費者にとって魚介類(とくに地元の魚)とは、自宅の外で楽しむものなのかもしれません。そうすると、魚売り場で主婦のボードーが起こらないのも納得がいきます。

そうすると、「ブランド(品種と生産地域)の確立したもの、ないし地元に近いという意味での近隣の良食味米が選好されるという」お米についての仮説は、魚介類に関しても当てはまるような当てはまらないようなビミョーな具合です。

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