アメリカのジャポニカ米と日本のお米の店頭価格比較(2011年11月)というタイトルにしましたが、「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(4)」の補遺、補足情報というか更新情報です。
「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(4)」では、2009年10月~11月という時点で、米国産(カリフォルニア産)ジャポニカ米の店頭価格(フィラデルフィアの日系スーパーマーケット)と、札幌のナショナルブランドのスーパーマーケットに並んでいる日本の代表的なお米の店頭価格を比較してみました。その時の比較条件は、店舗は「米国がフィラデルフィア、日本は札幌」で、パッケージ重量は「白米で10㎏」、為替レートは「1ドル=90円」でした。
今回は、日米のスーパーのオンライショップでのジャポニカ米(良食味短粒米)の価格比較です。
米国のスーパーマーケットは、カリフォルニアに6店舗(北はサンノゼ、南はサンディエゴ)、中西部のシカゴと東部のニュージャージーにそれぞれ1店舗を構える『アメリカで最大級の日系スーパーマーケット。日本食材、雑貨、家電、化粧品まで数多く取り揃えております。またレストラン街では“日本の味”をいつでもお楽しみ頂けます。さらにうまいもの市、銘菓祭、大北海道展など、日本全国の銘店が集うイベントも大好評です。』(当該スーパーマーケットのウェブから引用)で、日本のスーパーマーケットは、ナショナルブランド・チェーンの札幌店(札幌には複数店あるがそのひとつ)で、これは前回と同じです。
今回は、米国産は15ポンド袋のジャポニカ米(白米)。そのスーパーのPOP風表現を借用すると『超最高級短粒米。厳選された日本米から開発され、シエラ・ネバダ山脈から流れ出る清水を使ってカリフォルニア州で栽培されたものです。アメリカ産。』。日本産は5㎏袋の売れ筋のお米(白米)。
為替レートは2011年11月現在の1ドル=76円。2年前(2009年11月)のように為替レートが1ドル=90円だったら、という場合の比較も追加します。
それから、15ポンドは6.804㎏なので、日本での5㎏袋と価格比較する場合には、5㎏換算をする必要がありますが、単純計算だとまずいので、パッケージ係数で調整します。むつかしい話ではなくて、例えば、5㎏袋入りのお米と10㎏袋入りのお米の値段をくらべると、10㎏の方が1㎏当たりの単価が安く設定されています。上記の札幌店でいくつかの品種の店頭価格を比較してみると、10㎏袋を買う方が、5㎏袋を2個買うよりも、平均で3.5%安い。だから、15ポンド(6.804㎏)袋の場合だと、5㎏袋よりも1.27%安いと比例配分的に想定できるので、5㎏換算するときにはその分だけ値段を高くしてパッケージ重量の差を調整します。
農業専門メディア(日本農業新聞 11月23日)によれば、スーパーや生協での2011年産米の売れ筋価格(精米)は、5㎏あたり1900円台が37%で最も多く、次いで1,800円台が23%だそうです。ここでは、わかりやすく、白米5㎏あたり1,900円を売れ筋価格とします。
「アメリカで最大級の日系スーパーマーケット」で販売されている「米国産ジャポニカ米(良食味短粒米)」が、「まったく関税なし」で米国から日本に輸出され、たとえば近所のスーパーの棚に並べられたらどうなるかを、2年前のアップデートという格好で以下にまとめてみました。競合できるのか。(実際の輸出は下の表のような形ではありませんが、簡易版シミュレーションです。)
輸出なので、自由化で「関税なし」といった状況でも、輸出諸掛や日本国内での追加流通コスト(ここでは主にプロモーションコスト)は必須なのでその分として15%上乗せした結果と、日本のお米の店頭価格(オンラインショッピング価格)とを比較します。
なお、日本のいろいろなお米(品種と生産地の組み合わせ)の相対取引価格(卸売価格)比較を、この表は別の記事でも使ったものですが、参考までにすぐ下に並べておきます。


競合の条件は、味と価格と品質(安全・安心を含むトータル品質)ですが、僕自身は、以前カリフォルニアに赴任していたころは田牧米ゴールド(コシヒカリ)が好きでしたが(他の米国産ジャポニカ米とは味が違っていた)、最近は上述のジャポニカ米を食べたことがないので、最近の味についてはわかりません。しかし、以前と似たような食味なら、それらが若干安い値段で日本に入ってきたからといって、我が家では常食米にすることはありません。新しい日本のお米に対して好奇心からそうするように、2kgパックを買って味を確かめるくらいはするかもしれませんが。
2年前との違いは、米国産良食味ジャポニカ米の価格の違いと、為替レートの違いと、スーパーの店頭価格かインターネット通販(オンラインショッピング)価格かというチャネルの違い。
為替レートは、2年前の1ドル=90円が今は1ドル=76円。
「田牧米ゴールド」と「かがやき」の2年前の価格(フィラデルフィアのスーパーでの店頭価格)は、
田牧米ゴールド(コシヒカリ): $44.43 / 20ポンド
かがやき(コシヒカリ): $36.84 / 20ポンド
だったので、これを手抜きの単純計算で15ポンド換算すると
田牧米ゴールド(コシヒカリ): $33.32 / 15ポンド
かがやき(コシヒカリ): $27.63 / 15ポンド。
これに対して上の表でも見たように、現在の価格は、ただしこれは2年前とは別のオンラインショッピング・チャネルでの「配送料を含まない価格」ですが、
田牧米ゴールド(コシヒカリ): $22.99 / 15ポンド
かがやき(コシヒカリ): $24.99 / 15ポンド
となっています。もし価格が味の違いをそのまま反映しているとすると、「かがやき」がおいしくなって人気が出てきたのかもしれません。2年前との価格の違いは、それが生産効率によるものなのか、流通効率なのか、あるいは品質にかかわることなのか、よくわかりません。
どうも、急な円高の影響で「関税なし」の状況だと2年前よりもお米の競合状態は厳しくなっているようです。僕は、米国主導になってしまったTPPへの参加は、農業と農業以外の要素も考えて非常な愚挙だと考えていますが、それとは別に「自由化、関税なし」という状況で、日本のお米がどうなるのかを、僕なりの視点でスケッチしてみたいと思っていました。
その関連で、以下に「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと(6)(あるいは最後)」という2年ほど前の記事の一部を以下に引用しておきます(『・・・』部分)。
『「お米の自由化を考えるときに、確かめておきたいこと」を書き始めるきっかけは、日本はお米の値段が高いので、国際競争力はまったくなく、自由化ということになったら海外から安いジャポニカ米が大量に入ってきて日本のコメ農業は壊滅状態になるという意見への違和感からでした。
「世界のコメ商品一般」と「世界のコメ顧客一般」という切り口で議論すると、その意見はもっともで、なぜなら世界のコメ一般の取引価格・卸売価格は60kgあたり約3,000円、日本の米価は60kgあたり約15,000円なので、価格差は5倍だからです。
しかし、切り口を変えて、世界のコメ生産量の15%程度であるジャポニカ種の、その中の短粒種の、その中の味と品質のよいおコメという風に商品のセグメントを絞り込んでいき、また消費者もそういう付加価値商品を好む人たちからなるセグメントという形で顧客セグメントを絞り込んでいくと、そこにあるのは、コメのニッチ市場です。
で、このニッチ市場は実際はどんな様子なのだろうかということが気になり始め、以前、カリフォルニアに赴任していたときに自宅でよく食べた「田牧米」を手がかりに調べてみるかという心境になったわけです。アメリカ産のコシヒカリやあきたこまちの現地での消費者価格は、日本産のコシヒカリやあきたこまちの日本での消費者価格とどれくらい違うのか、どれくらい安いのか、それとも逆に高いのか、あと、中国が東北地方でコシヒカリやあきたこまちを商用ベースで国内生産していると聞いているので、こちらもそれらの消費者価格は北京や上海ではどうなのか。各国でのコメ一般の取引価格・卸売価格やタイ・インディカ米の標準的な輸出価格などを基準にするのではなく、消費者価格という虫の眼で、ある程度状況を追いかけてみようというわけです。
このニッチ市場の大きさですが、日本の800万トン(これは、前述のように世界コメ市場の1.8%)、これにアメリカの65万トン~98万トン(アメリカのコメ生産量の1%~1.5%がコシヒカリやあきたこまちといった短粒種良食味米)、そして、中国の78万トン(この数字は僕の個人仮説)をくわえると、943万トン~976万トン、ざっと1,000万トン。世界コメ市場の2.3%です。現在の消費者価格に地域的な差があまりないこと(コシヒカリやあきたこまちの消費者価格はフィラデルフィアでも札幌でも北京でもそれほど変わらない)を考慮すると、この高付加価値米ニッチ市場は、コメ市場一般とは別の需要供給&価格決定メカニズムで、現在も動いているし、今後も動いていくように思います。』
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