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2011年11月10日 (木)

(続) 迷ったら、食べ物は、安全サイド(その2)

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一方、時間の幅に関してわかりにくいのは、たとえば、高田教授の作成した「線量6段階区分」(35ページ)です。線量と危険度あるいは安全度との関係を図式化したもので、線量と危険度・安全度との関係に関する教授の考え方は明快なのですが、明快でないのはその線量をどれだけの時間をかけて被曝(外部被曝と内部被曝)したと想定しているのか、その時間の幅に関して、です。それが瞬間の線量なのか、あるいは1時間のそれなのか、1か月の合計線量なのか、1年間の蓄積線量なのか、10年なのか、それとも一生涯といったもっと長い時間なのか。複数の時間幅が同居しています。

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たとえば、線量という場合には、ともかく累積線量が重要だから時間の長さは短くても長くても同じなので気にしなくていいといった記述があるとアマチュアにはわかりやすいのですが、それが見あたらない。原爆や核実験あるいは原子力発電所の事故などで瞬間的に大量の線量を被曝し、その後、病院に隔離収容されるまでに高い線量を2日間浴びたというような場合と、低線量の外部被曝と食べ物・飲み水・呼吸などによる低線量の内部被曝がたとえば3~4年間続いて、その結果として累積線量が相当なレベル(たとえば教授のいうD+ レベル)に達したような場合があるが、それらの違いをどう区分して考えるのが妥当なのか、そういう区分は不要なのか、そのあたりがよくわからない。

次に、わかりにくい箇所(わかりにくい箇所とは、そこにわかりにくいところがあるという場合と、個別の記述はわかりやすいのだがそれに続く記述に含まれる別の時間幅との関連でわかりにくいという場合の両方)を「線量6段階区分」(35ページ)以外に、2つ引用してみようと思います。たとえば、単位の違う時間軸が連続すると、小説ではないので、読者は混乱します。

『レベルDは2から10ミリシーベルトで、これは自然界にある放射線量や、例えば病院におけるCT検査といった医療検診の際に受ける程度の量である。』(38ページ)

自然界にある放射線量は通常は1年間の累積被曝線量で地域比較されているので「1年間」という一定期間での議論。また、検診の際のCT検査は、普通は「15分程度」という時間幅の議論。異なった時間の幅が連続してひとつの文の中に出てきます。

以下も、異なった時間の幅が連続して登場する例です。

『確かに、牛乳は水道水などと異なり、食物連鎖によって放射性ヨウ素の濃度が高まり、この汚染牛乳を飲み続けると、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積して甲状腺の健康被害が懸念される。』(44ページ)そして、この記述のすぐ直後に『しかし、3月20日の報告によれば、福島県の牛乳は、1キロあたり5200ベクレルの放射性ヨウ素に汚染されているとして出荷停止措置がとられたが、仮に出荷停止前のこの原乳を最大で5リットル飲んだとしても、それは0.6ミリシーベルト(レベルE:0.02~1ミリシーベルト)以下で、甲状腺へのリスクは無視できる。』(44ページ)という記述が続きます。

最初の記述は「一定期間」そういう牛乳を飲み続けた場合にどうなるかという「6か月とか1年とかの時間の幅」を対象とした議論、一方、それに続く記述は、仮の話ですが、牛乳の好きな人はけっこうな量を飲むので1日や2日という時間幅の議論です。この二つの異なる時間幅の議論が、『(飲み続けると)甲状腺への健康被害が懸念される』『(5リットル飲んだとしても)甲状腺へのリスクは無視できる』と逆の方向の議論として連続しているので、読者は混乱し、そしてぼんやりしていると後半の陳述に引きずられます。

食べ物や食材に関心を持つ物にとっては、瞬間の悪影響や単一食材の悪影響を考慮することも大切ですが、食べることは毎日のことであり、たいていは10品目以上の食材(ごはん、複数の野菜、魚介類、肉類、牛乳など)を毎日食べ、複数の飲みもの(お茶や水など)を毎日飲むので、長い半減期を持つ放射性物質の影響、および農産物の収穫頻度や収穫の季節と出荷の時期、畜産物の飼料と飼育期間、魚介類の食物連鎖、食材の販売までの冷凍期間などのパラメーターを考慮すると1年以上数年といった時間の長さで考えることも必要です。小さな子供を持つ家庭の場合は、とくにそうです。

だから、『筆者は97年にチェルノブイリ事故調査で現地入りした際、ロシア最大の汚染地とされたザボリエ村でセシウムの放射能が4000ベクレルに達したキノコを食べた。その後、調べてみると、私の内部被曝線量は0.04ミリシーベルト(レベルE:0.02~1ミリシーベルト)にすぎない。』(45ページ)といわれても、キノコのみを1回だけ食べて、一定期間後の内部被曝量がたいしたことがなかったというだけなので、ちょっと物足りない。キノコが汚染されていたらその近隣の他の食材も汚染されているので、複数の食材からなるその地の標準的な食事をその地の食材で、たとえば1週間食べ続けた結果に対してなら、しっかりと耳を傾けたいと思いますが、キノコだけで食事を済ませる人はまずいません。現地の日常の食卓の再現が現場では不可能なら、現地の複数食材を一定期間食べ続けるという発想の簡便なシミュレーションでも記述してあれば、納得の度合いは高まります。ヴォッカとキノコで晩ごはんなどという光景も想像してみますが、独身の歳をとった酔っぱらいを別にすれば、一般家族の日常にはこの光景はない。

また、この記述で気になるのは、ひとつは、4000ベクレルとは1㎏あたり4000ベクレルだと思いますがその単位量の記述が、単に書き忘れたのか、ないこと、そして、別の箇所で『チェルノブイリ事故災害と違い、福島県および東日本の放射線線量はけた違いに低く、健康影響のリスクは無視できるくらいであった。』(9ページ)とあり、だから、現地で食べたのが『ロシア最大の汚染地とされたザボリエ村でセシウムの放射能が4000ベクレルに達したキノコ』(45ページ)ということは、4000ベクレルというのはとてもひどい放射能汚染レベルということだと著者が考えているらしいと思われます。しかし、同じ45ページに『茨城県日立産のホウレンソウは(放射能が)1キロあたり540から5400ベクレルなので』という一節があり、5400ベクレルは4000ベクレルよりも大きな値なので、キノコとホウレンソウの違いはありますが、茨城県のホウレンソウにはチェルノブイリのキノコと同じ程度にひどく汚染されているものがあるということになり、つまり、このデータからは『福島県および東日本の放射線線量はけた違いに低く』とは言えません。

こういう本棚に保存しておくような内容を持った本の中でなるほどと思うところはなるほどと納得し、ひっかかるところはひっかかったままにしておいてその理由を考え、そして参考にする部分は参考にしながら、我が家では、食べるものに関しては、「迷ったら安全サイド」という姿勢をできるだけ維持します。

いちばん安心して準拠できるのは、水(飲料水)のWHOガイドライン(1リットルあたりのヨウ素 I-131が10ベクレル(Bq)/L、セシウムCs-134は10ベクレル(Bq)/L、セシウムCs-137も10ベクレル(Bq)/L という基準値)。だから、特定の食材や飲みもの(コメや大根・小松菜・ニンジン・シイタケ、牛肉・豚肉、鶏卵、サンマ・アジ・鮭・牡蠣、リンゴ・柿、牛乳、お茶など)の放射性セシウムや放射性ヨウ素の濃度が個別に1㎏(ないし1リットル)あたり10ベクレル(Bq)/kg以下だと、ヨウ素131の半減期は8日と短いのですぐに消滅するとしても、安心してそれらを毎日10品目以上(実際には10品目ということはなくてその1.5倍から2倍くらい)一緒に食べ続けられるということになります。

北海道の魚と北海道のお米については、「北海道における水産物の放射性物質モニタリングなどの結果」(ほぼ毎日新しい測定データを発表)と「水田(土壌、玄米)の放射性物質モニタリング調査結果」が役に立ちます。

なお、「迷ったら、食べ物は、安全サイド」はこちら

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