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2011年11月16日 (水)

新潟県の米の品揃え、北海道の米の品揃え

工業製品ではある製品の品揃えの幅を表現するのに製品ラインという用語をよく使います。どういう性格の製品ラインを持つかは企業の考え方によって異なり、それがその企業の製品戦略ともいえます。だから、ある地域が複数の品種のお米を栽培・販売している場合には、それぞれのお米の市場導入時期や相対価格などを品種別に概観すると、その地域のお米の製品ライン戦略の輪郭が少しは見えてきます。

東京に住む知り合いから、減農薬の白米で、コシヒカリ並みにおいしく、価格も5㎏で2,500円くらいまでのものをしらないかという相談がありました。それなら北海道のお米でこういうのがあるよ、と言うのも、この場合には乱暴にすぎるので、今まで食べたことのあるものを思い出し、また食べたことはないのだけれどもその品種の親戚筋で気になるお米などをいくつか調べてみました。流通量は多くはなくても、一応は安定した量のある品種でないと手に入りにくいので、そういうことも候補を選ぶパラメーターのひとつです。

食べたことのないお米については口を開かない主義ですが、この件に関しては例外です。もし、我が家で今までに食卓に登場したことがない種類でも条件に合致しそうなものがあったらお勧めして一度味わってもらい、ダメなら別の候補に切り替えるという方法をとることにしました。一度味わってもらうといっても、それが5㎏袋でしか売られていない場合には、まあ、夫婦で2週間ほどは食べ続けることになりますがそこは我慢してもらいます。

現在、その知り合いのご夫婦の食卓にどんな品種のお米が登場しているのかについては、ここでは触れませんが、候補捜しの一環として、コシヒカリ以外の新潟のコメを調べてみました。近頃の新潟県のお米の商品ラインの形成のしかたは、たとえば、北海道のそれとくらべると、非常に対照的です。

代表的な北海道のお米には、「きらら397」という、一般家庭でも人気があるのですが業務用途での需要がとくに強い品種があり、それ以外には「ほしのゆめ」や「ななつぼし」といった廉価で味の良い品種がそろっています。「ほしのゆめ」は自宅で白米を何度か食べてみましたが、おいしいと思います。つまり、北海道のお米は「安くておいしい」「安いがおいしい」つまりコストパフォーマンスに優れているというのが定評です。

しかし、「高くておいしい」ではない。だから、「高くて、そしてとてもおいしい」「高いが、とてもおいしい」「とてもおいしいので、値段はそれなりに高い」といった品種があると、製品ラインに幅と深みが出てきます。「新潟県のコシヒカリと同じくらいかあるいはそれ以上においしい、値段はそれなりに高い」というポジショニングで開発され、市場投入されたのが「ゆめぴりか」です。

新潟県ではコシヒカリが有名すぎるし生産量も多いので、新潟産のほかの品種には、新潟以外の一般消費者はほとんど目が向きません。新潟県のコシヒカリといっても、「魚沼」「佐渡」「岩船」のコシヒカリと「その他の新潟」のコシヒカリとでは価格面で明らかにブランド格差がありますが、いずれにせよ「おいしい、高い」のカテゴリーです。

その新潟県が、お米の製品ラインを「おいしい、しかし、安い」方向にもマーケティング戦略的に幅を広げているようです。コシヒカリよりも廉価で、コシヒカリ並みにおいしいとされる品種は10年前から栽培されていたようですし、3年ほど前にも廉価版の新品種が追加されていますが、それらが、コシヒカリの補完ラインとして首都圏などでプロモーションされ始めたという意味です。コシヒカリよりも安くてコシヒカリ以上においしく、かつ十分な生産量を持つ品種が別にあれば、コシヒカリの存在価値はなくなるので、コシヒカリを傷つけないような形でバランスのとれた製品ラインを構成するはずですが、そのバランスとは何か。

コシヒカリは、さまざまなヴァリエーションが追加されながら、実に長い品種寿命を持ち続けていますが(福井県で越南17号がコシヒカリと命名されたのが1956年)、新潟では2000年に「こしいぶき」が、2008年に「みずほの輝き」という新種が登場しています。それぞれの特徴を、コシヒカリをはさんでごく簡単に以下にまとめてみます。

■こしいぶき   : つや、香り、粘り。秋早い収穫の早生。暑さに強い。安価。
■コシヒカリ    : 甘み、粘り、香り、つや。逸品。ブランド力。値段は高い。
■みずほの輝き : 大粒。冷めてもおいしい。おにぎり。晩生で10月。安価。

刈り入れ時期は、早生の「こしいぶき」と晩生の「みずほの輝き」が「コシヒカリ」をサンドイッチ状態ではさみこみ、価格は、高価な「コシヒカリ」が安価な「こしいぶき」と「みずほの輝き」を従えています。それから、地域によっては農作物に対する夏の暑さの影響が問題になっていますが、「こしいぶき」は生育途中で暑さに強いそうです。

3品種の価格の相対比は、たとえば、その3つをすべて生産・直販しているある農家の消費者向け販売価格(5㎏の特別栽培米の価格)で比較すると、コシヒカリを100とした場合は、以下の通り。

■こしいぶき     :  83
■コシヒカリ      : 100
■みずほの輝き :  67

10月初めの卸売価格(相対取引価格)の相対比(ただし、「みずほの輝き」は対象外)については、「お米の品種別の価格と地域別の価格 (2011年産米)」をご覧ください。

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