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2011年12月 5日 (月)

金(きん)の値段、ビッグマックの値段、円の値段

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現在の円の値段は、1(米国)ドルに対して76~78円くらいです。

少し前の2011年10月の金(きん)の値段の平均値は、田中貴金属工業の発表数字をお借りすると、

・ロンドン金価格が1トロイオンスあたり1,666.55 米ドル
・日本(田中貴金属工業)の金小売価格が1グラムあたり4,156円
・為替レートは米ドルと円だと、1ドル=77.66円。

10年前の2001年10月は、

・ロンドン金価格が1トロイオンスあたり283.19 米ドル
・日本(田中貴金属工業)の金小売価格が1グラムあたり1153円
・為替レートは米ドルと円だと、1ドル=122.35円。

そして、20年前の1991年10月は、

・ロンドン金価格が1トロイオンスあたり358.76 米ドル
・日本(田中貴金属工業)の金小売価格が1グラムあたり1553円
・為替レートは米ドルと円だと、1米ドル=131.77円。

為替レートの上げ下げも加わって、10年くらい前までは、金(小売価格)は1グラムが1000円~1500円程度だったと記憶しています。

米ドル表示のロンドン金価格(1トロイオンス)は2011年10月の価格は、10年前の5.9倍、20年前の4.6倍。日本での金小売価格(1グラム)は、円高の影響があるのでロンドン金価格よりは上昇率(というか、上昇倍)は少し穏やかですが、10年前の3.6倍、20年前の2.7倍となっています。

最近は投資マネーと投機マネーが短期利益と安全を求めて大量に動くので、金の値段の適正価値というものがわからないように、人気のある通貨の適正価値というのもよくわかりません。

米ドルに対する円の為替レートが1991秋から2011年秋にかけて、131.11円 → 122.35円 → 77.66円。この数字から、円は20年前よりも1.7倍強くなったと言われても、日本の経済は20年前よりは相当に弱いのでピンとこない。逆に、日本の経済は、総体的にそして相対的に「1.7倍、弱くなった」と誰かに言われると、その数字の正確さは別にして、その傾向の指摘に異論をさしはさむ気にはなりません。

たとえば、スタンダードアンドプアーズという米国の格付けサービス会社が、各国の国債などの格付け情報を提供しており(以下の表を参照)、それによれば(2011年11月末現在)、日本の格付けは「AA-」で、中国、サウジアラビアやスペインと同じ。米国は先日「AAA」から1段階格下げされて「AA+」。ちなみに「AAA」という最高ランクの国は、英国、豪州、独逸、仏国、オーストリア、オランダ、シンガポールなどです。(スタンダードアンドプアーズというのは、リーマンショックの前に、証券化された金融派生商品に対して粉飾決算的な格付けを意図的に出し続けていた会社なので僕は基本的に信用していないが、それなりに影響力を持っているので、参考にしました。)

「AA-」のレベルの日本の国債などを世界のマネーが買うことはないと思うのですが、お金儲け(あるいは損失の回避)が哲学であるところの世界のマネーの価値基準と、スタンダードアンドプアーズの基準とは乖離しているのでしょう。もっともマネーが流れ込むにはそれを吸収するだけの発行量(流動性)が必要なので、GDPが小さな国の国債は対象にはなりにくい。

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ビッグマックという名前の人気ハンバーガーがあります。20年ほど前に少し食べたことはありますが、その手の食べ物は好みではないので、それ以来はお付き合いがありません。

購買力平価という考え方があり、難しげな言葉ですがPurchasing Power Parityの訳語。Parityとは、同等、等量、同格といった意味なので、同じレベルの購買力という意味。貿易障壁のない世界では、国が異なっても、同じ商品・製品の価格は同じと想定されますが、この想定が成りたつ時の二国間の為替相場を購買力平価と呼んでいます。

しかし、世界中のみんなが知っている同じ商品・製品というのもなかなか見つかりません。ラーメンやフィッシュ・アンド・チップスといっても、中近東やアフリカでのラーメン屋というのは想像しがたい。フィッシュ・アンド・チップスも白身魚の獲れる英語圏では人気があるかもしれないが、それ以外の地域では食べないでしょう。で、ビッグマックです。

ビッグマック指数 (Big Mac Index) という比較指標は、イギリスのエコノミストという雑誌が1986年から毎年発表している、マジメとも冗談ともいえる指標です(The Economistのホームページに掲載)。ビッグマックの味や品質などは世界各国でほぼ同じと考えられるので(日本と米国で、以前、実際に食べた経験からすれば、製造標準があるのでほぼ同じ)、世界各国で販売されているビッグマックの地元価格を比較すれば、各国の購買力比較の参考になるというものです。そこから、実勢為替レートとは異なる、ビッグマック価格にもとづく適正為替レート(これをビッグマック指数と呼んでいる)が見えてくるかもしれない。(なお、以下の価格は、「エコノミスト」所載の価格。)

Photo

現地でビッグマックを食べたことのある国は日本と米国だけなので、比較を日本と米国に限定しますが、米国でのビッグマック価格($)と日本での価格(\)をくらべてみると、材料費やら人件費やらが上がるので仕方ないなと、ぼんやりとした価格上昇を続けているのが米国、国産ハンバーガーショップやその他の和風ファーストフードとの競合もとても激しいので何とか値段を抑え続ける努力をしているのが日本というように見えます。米国では、2011年のビックマックは1991年の1.81倍(8割高)になっていますが、日本では0.84倍(16%安)です。

ちなみに、ビッグマックのパン部分に使う小麦の価格ですが、世界の小麦価格推移(農水省:2011年11月25日)を見ると、2011年価格は1991年と2011年価格の約2倍になっています。その条件は米国も、日本(小麦の大部分を輸入)も同じ。小麦は紺色。

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こういうような日米での同一商品価格差(おそらく、原価低減努力の差にもとづく販売価格の差)のある状況で、2011年の実勢為替レートは、1ドル=78.4円、ビッグマック指数に準拠すれば1ドル=78.7円、つまり現在の77円~78円はほぼ適性レートであるらしい、という議論になっても、まったく腑に落ちない。日本のビッグマックの原材料のうち、どれくらいが輸入品で円高によってどの程度材料費を圧縮できているのか知りませんが、かりに、材料費が定価の30%、輸入材料が総材料の3分の2(67%)とします。輸入材料は20年前よりは42%安く買えるので(78.4円 / 135円 = 58% なので、42%)、人件費や各種経費がそこでは20年前と同じだとすると、理屈の上では、20年前の380円のビッグマックは、2011年では輸入材料費の分だけ32円安くなって、380円-32円 = 348円。

かりに米国と同じように、ビッグマックの2011年価格が1991年価格の1.81倍なら、688円。しかし、実際は320円なので、688円の半分以下。320円は上述の348円とくらべても8%安い。

だから、「木を見て森を語る」風だと、「日本というのはいろいろと問題もあるがどうも粘り強い、安心な通貨はやはり円のようだ。投資対象を日本国債関連に入れ替えるか」といった動きが出てきて、円は高値で推移ということになっているのでしょう。

木の枝、それも世界中にものすごい数の店舗を持つ米国ハンバーガー企業の日本での商品価格という、一般的な日本企業にとっては標準的とはいえない種類の木の枝を見て、その延長線上で大きな森を語ることの危険性はありますが、現在の円の過熱状態の背景を虫の目から観察する手がかりにはなりそうです。

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コメント

ビックマック指数のインチキな所は、
一部の企業がやっている事が公的な指数と見られること。
例えば、日本のマックはハンバーガーの値段を下げて、飲み物やポテトの値段をあげて利益を出す。
それだとビックマック指数の意味がない上に、
日本とアメリカのハンバーガーのサイズが同じという人はどこにもいないだろう。

投稿: | 2012年2月19日 (日) 22時42分

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