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2012年1月16日 (月)

野菜と消費者の好みの変化と生産者

適当な言葉がほかに見当たらないのでアンビバレンスという言葉を借用しますが、アンビバレンス (ambivalence)とは、同一対象に対して、愛と憎しみなど相反する感情を同時に、あるいは交互に抱くことです。

消費者の好みは変化しますが、対象が農産物のような場合、その生産者は、その変化をなるほどと素直に納得できる場合と、その変化の方向はちょっとおかしいのではないかと感じる場合があります。生産者が食や食材について意見を持っている場合には、とくに後者の感覚が強く出る場合があります。そういう気持ちの動きをここではアンビバレンスと呼んでみました。

だから農産物の生産者というのは(農産物の生産者に限りませんが)、消費者の好みが変化した場合、心理の凸凹を経験しながら、生産者としての感情と生産者の栽培する農作物の種類や特徴が、消費者の新しい好みに対して一定方向になるように整えていくことになります。

もっとも農産物の消費者は(もっと広く食べ物の消費者といってもほぼ同じですが)、同質なかたまりとして存在し動いているのではなく、たとえば、以下の図のようなグループに分けることができます。だから、第3者が、消費者ニーズの変化とか消費者の好みの変化といっても主にどのグループをさして消費者と呼んでいるのか、あるいは公約数的な消費者像を想定して消費者と呼んでいるのか。その第3者がスーパーといった流通関係の会社の場合には、消費者とは自分の顧客だけをさしていることも多いので、その流通にとっての顧客層の特徴を確認する必要があります。

自分の顧客と考えている消費者グループが明確で、そのグループの消費傾向が一般の消費者の消費傾向と違っているなら、第3者のノイズに邪魔されずに、自分の消費者グループのニーズに対応していればいい。しかし、左上の箱のような消費者グループが主な相手なら、そのグループの好みの変化に追随しないと、たとえば流通からの引き合いも弱くなる。そのときに、その変化や変化の理由が納得できなくて、それを原因として生じるかもしれない消費者に対するアンビバレンスは、なんとか早めに処理しないと具合が悪い。

現在の消費者のマクロな状況は、左上の一番大きな箱が、3月11日の原発事故以降、右下の箱の方へその一部を急に広げたような構造だろうと思います。他にとくに変わりはない。

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スーパーやデパートや生協、外食産業や卸売業者など流通の前線で働いている人たち(53社)が今年は人気が出そうだと(あるいは、逆に人気を失うだろうと)考える「野菜」の「2012年売れ筋ランキング」が新聞に掲載されていました(日本農業新聞 2012/01/12)。

人気が出そうな野菜の特徴は、スナックエンドウやフルーツトマトのように「甘くておいしい」「調理が簡単で食べやすい」もの。逆に人気を失いそうなのは、白菜や大根、タケノコやゴボウなど、調理が面倒くさいもの、そして煮物料理や漬物によく使われる野菜類。きんぴらゴボウやふろふき大根、大根の糠漬けや白菜の浅漬けなどを作る家庭が減り続けるという判断なのでしょう。

興味深いのは、ほろ苦いピーマンの人気は下降気味だが、同じ種類でより甘くてカラフルなパプリカは人気品目の上位に位置していること。ブロッコリーは人気野菜だが、カリフラワーは人気薄。これは価格と店頭在庫量の問題だと思われます。キュウリはそれなりに人気のある野菜で、しかし、表面に突起のある昔ながらのキュウリには人気が出ない。突起をとるのが面倒なのでしょう。それから、菌床栽培のシイタケの人気は高いのに対して原木栽培のシイタケの人気が急降下するという見通しになっているようです。これは価格の問題というよりも、栽培用原木の放射能汚染の影響。

消費者の人気が停滞する、ないしは今後は人気が出なくなると想定されている野菜で、我が家では食卓の定番になっていてその地位はこれからも安定しているに違いない野菜をいくつか並べてみると、以下のようになります。

◆ インゲン、レンコン(蓮根)、サトイモ(里芋)、短ナス(短茄子)、表面にとげとげのあるキュウリ、カリフラワー、ピーマン、シュンギク(春菊)、ダイコン(大根)、パセリ、ゴボウ(牛蒡)、ハクサイ(白菜)、タケノコ(筍)、クワイ(慈姑、ただしお正月だけ)、原木栽培のシイタケ

つまり、いろいろな野菜の好きな家庭、野菜を使った料理の好きな主婦のいる家庭では、一般的な消費者ニーズの変化傾向がそのまま当てはまるミニトマトのようなものも流れに乗って一緒に消費しますが、「2012年売れ筋ランキング」の順位とはずいぶんとかけ離れた感じで食材を選択するといえます。

消費者ニーズの変化という場合、先ほどの図を例にとれば、消費者グループの構造が変化しているのか(3月以降安全志向が増えたのは構造の変化、関連記事は「お米をネット通販で購入する消費者が増加中」)、構造にはわずかな変化しかないが自分が対象としている消費者グループの中ではニーズの変化が特に顕著なのかを見定める必要があります。魔法の杖はないので、たとえば「2012年売れ筋ランキング」のようなものを片目で睨みながら、自分の顧客層の動き(消費者に直販しているような場合は、注文内容の変化や消費者からの甘口・辛口のコメント)で判断するしかありません。

たとえば、子供やスポーツ愛好家を中心に、きれいにパッケージされたスナック野菜(ミニトマト、ミニパプリカ、ミニキュウリ)というニッチ市場を確立したと思われるオランダのTommiesの商品(「袋入り」および「シェークマグ風の容器入り」)を見ていると、「手軽に歩きながらでも食べられる」「子供でも好きになる味」という今様の(つまり、日本でもおなじみの)消費者ニーズに対応しながら、明確に切り取った顧客層をつかんでいるようです(なお、このミニトマトは日本の種苗メーカーが開発した「アイコ」)。

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