GM(遺伝子組み換え)作物の生産状況

ISAAA (International Service for The Acquisition of Agri-Biotech Applications) というGM(遺伝子組み換え)作物の生産を推進する組織があり、そこからGM作物生産に関する2011年の年次報告書 (ISAAA Brief 43-2011) が発表されています。その報告書の結構に詳細な概要は、ホームページで誰でも見ることができます。もっとも、報告書の中ではGM作物という表現ではなく、BIOTECH作物という表現が使われていますが。
2011年のGM作物の世界全体の生産状況、地域別・国別・作物別の生産状況や、1996年にGM作物の商業栽培が開始されてからのからの生産推移が、「作付面積」ベースで、まとめられており、GM作物の浸透状況をグローバルに概観・確認するには便利な報告書です。
報告書の要点、および、僕のコメントは、以下の通り。
1.2011年にGM作物の生産に従事している農家の数は、29カ国で、1670万。GM作物作付面積は、世界全体で、1億6000万ヘクタール。作付面積は、2010年から8%(ないし1200万ヘクタール)の増加。
2.先進国のGM作物の作付面積が、今までは、発展途上国のGM作物の作付面積よりも大きかったが、発展途上国の作付面積の拡大が急速なので、2011年では両者の割合はほぼ同じとなった。とくに、最近はブラジルの伸びが著しい。
3.したがって、GM作物の作付面積の大きい国のトップ10は、
・米国(世界全体の43%)>ブラジル(世界全体の19%)>アルゼンチン(15%)>インド(6.6%)>カナダ(6.5%)>中国>パラグアイ>パキスタン>南アフリカ>ウルグアイ。つまり、上位5カ国で、GM作物作付面積全体の90%を占める。
4A.主なGM作物は、大豆・トウモロコシ・綿花・カノーラだが、それらを作付面積の大きさ順に並べると、
・大豆>トウモロコシ>綿花>カノーラ。
4B.また、その4つの作物の総作付面積(慣行栽培つまり非GM栽培と、GM栽培の合計)に占めるGM栽培の作付面積の比率は、以下のように大豆と綿花が圧倒的に高い。
・大豆(75%)、綿花(82%)、トウモロコシ(32%)、カノーラ(26%)。
だから、とくに加工食品のばあい、「原材料欄」に「国産大豆」、あるいは「遺伝子組み換えではない」と記載されていないと、輸入されたGM大豆が使われている可能性が高い。家畜飼料用のトウモロコシや大豆の搾りかすにもそういう可能性がある。
5.なぜGM作物を栽培するのか、その理由として「除草剤耐性」、「害虫抵抗性」、「除草剤耐性と害虫抵抗性の両方」があげられているが、理由別に作付面積を整理した図表を見ると、圧倒的に多いのが「除草剤耐性」である。「除草剤耐性と害虫防止の両方」もその主目的は「除草剤耐性」だと考えると、除草剤・除草薬で枯れさせないというちょっと不思議な目的のためにGM作物を栽培していることになる。
もっとも、これは背景を知ると不思議でもなんでもなくて、「(GM作物と鶏・豚・牛とTPP(その2)」でも述べたように、米国の巨大アグリビジネスが展開している農薬とGM作物のセット販売 (たとえば、そのあたりの雑草をすべて枯れさせてしまうような強力な除草剤と、その除草剤には耐性を持った作物のセット販売) という米国アグリビジネスの輸出戦略に、発展途上国の農業が席巻されているということです。農薬とGM作物の種のセット販売が基本であり、農家は実った作物から自分で種を育成できないので(著作権の侵害)、農家は永遠(かどうかは分からないが、長期)のリピーター顧客というわけです。
6A.欧州全体では、2011年にGMトウモロコシの作付面積が11万4500ヘクタールと25%増加したそうです(ただし、11万4500ヘクタールは、世界全体のGM作物作付面積が1億6000万ヘクタールなので、そのわずか0.07%)。
6B.そして、同報告書によれば、ドイツの化学会社であり農業関連ビジネスにも力を入れているBASF社は、1月中旬以降は、欧州での栽培を目的としたGM作物の開発と商業化をすべて中止するそうなので、欧州は、農産物に関しては、北米・中南米諸国やインド・中国とは違った方向をめざしているのかもしれません。
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