DHA・EPAサプリメントの宣伝コピーに、ちょっと違和感
我が家でとっている新聞は折り込み広告が比較的少ないのですが、それでもそれなりの折り込み広告が届きます。そのうちのひとつで、DHAとEPAのサプリメントが宣伝されていました。ある食品会社のサプリメント商品です。
コピー(宣伝文)の一部をそのまま引用します。以下の「・・・」部分。
「中高年期にたいせつな、青魚のサラサラ成分DHA。」「厚生労働省では、国民の健康維持などを目的とした基準の中で『DHAおよびEPAの目標摂取量を1日1g以上が望ましい』としています。驚くことにその量はクロマグロの刺身(赤身)で例えると約9人前以上。毎日の食事から摂るには大変な量ですし、さらに焼いたり揚げたり調理を加えることで、DHAは約20~50%も流れ出てしまいます。・・・中略・・・だからこそ、サプリメントを活用して積極的に補うことが大切です。」
それはその通りなのですが、「マグロの刺身(赤身)約9人前以上」という部分と、最後の「だからこそ、サプリメントを活用して積極的補うことが大切です。」にかなり無理があります。
「クロマグロの赤身」でなく、「脂身、すなわちトロ」(ここでは中トロか大トロかの区別はとくには気にしない)なら0.3人分、生で食べられるサバは手に入りにくいので「まさば」を焼いたものなら0.5人分、「あじ」の開きを焼いたものなら0.6人分、「ぶり」は刺身か照り焼きかで違ってきますがどちらにせよ「1日1g」のためには0.4人分から0.5人分で十分です。DHA・EPAのサプリメントは必要ありません。
DHAやEPAといったオメガ3系の不飽和脂肪酸を無駄なく摂取するのに一番いいのは、やはり刺身で食べることでしょう。煮たり油で揚げたりすると、煮汁や揚げ油にせっかくのDHAやEPAの一部が流れ出してしまうといわれています。そうであろうことは流れ出る量については細かくはわからないが、常識的に簡単に想像できる。
青魚は非常に新鮮でないと生で食べるのが難しい。僕はシメサバが好きなので自宅で好みの酢を使ってシメサバを作りたいのだけれど、そういう新鮮なサバには札幌では対面販売の魚屋でもめったにお目にかかれない。だから、焼いて食べることになる。焼いたサバ・焼いたアジの開き・焼いたブリにも、下の表にまとめたように、DHAやEPAはたっぷりと含まれている。もったいないなら落ちた油を後でからめてもいい。青魚の種類によってはホイル焼きという手もある。しかし、魚を焼いてその脂が「20%から50%」ほど焼き網の下の受け皿に落ちたからといって嘆き悲しむ必要はなくて、食べる量を0.5人分から1人前へと通常の量に戻したら、「DHA・EPAを1日1g」という目標はそういう魚だけでも達成できます。
僕が気になるのはこういう広告のメッセージに素直に反応する方々で、そういう素直な方々は、おそらくマグロのトロを十分以上に食べて、そしてこのサプリメントも毎日飲むような気がします。そういう状態を単一品目の摂取過多、摂り過ぎといいます。しかし、他との関係(たとえばオメガ6系の不飽和脂肪酸の摂取量)もあるので、これだけではいいとも悪いとも何とも言えない。
その食品会社が推奨している1日あたりのそのサプリメントの摂取量は金額に直すと約200円。これをもったいないと考えるか、それとも、魚は嫌いなので、ましてや青魚などを台所で料理するなど考えられないというような主婦(およびそういう主婦と一緒に暮らしている方)にとっては、たとえばトロの刺身の値段、ブリの切り身の値段やサバ1匹の値段、そして料理と後片づけの手間を考えると安い代替案かもしれません。食べる楽しみは減少しますが。
◇
ここからは僕の想像ですが、この食品会社はそういうことは百も承知で「マグロの赤身」に焦点を当てているのかもしれません。マグロの赤身が好きだというのは、トロが捨てられていた時代は別にして、トロは食べ飽きたということでもある。トロとは脂身なので、トロを避けるということは、旬の青魚のような脂の乗った魚も食べたくないということになる。そういう好みをもった一群の人たちがいる。そういう人たちは、マグロのトロや青魚に豊富に含まれているDHAやEPAが不足する。そういう背景でのこのサプリメントのマーケティングかもしれません。
もっとも僕ならそういう場合は(しかし実際は、青魚が嫌いになることは、まず、ないと思いますが)、普段からよく食べているあっさり系で微妙な味を楽しめる白身魚を選びたいと思います(下の表を参照)。「そういう好みをもった一群の人たち」が白身魚の微妙が苦手なので味のわかりやすいマグロの赤身、そしてサプリメントということなら、何をか言わんや。
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