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2012年5月 2日 (水)

たいていの消費者は賢いので、混乱は起こらないと思います。・補遺

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食べ物の中では、水(飲料水)の放射性物質汚染基準の考え方とその運用が安定していて、いちばんわかりやすい。この基準とは2011年3月17日以前の基準、あるいは2012年の新基準案、もとはWHOの飲料水水質ガイドラインです(2004年)。だから、さまざまな食材や食品の放射性物質汚染に関する安全基準値の妥当性を、僕は、水(飲料水)との対比で考えることにしています。水(飲料水)と同水準であれば、子供にも大人にも非常に安全だからです。

【註】飲料水の、ヨウ素 I-131が10ベクレル(Bq)/L、セシウムCs-137、セシウムCs-134が10ベクレル(Bq)/L という基準値は「WHO飲料水水質ガイドライン 2004」に基づいている。そのガイドラインには「一年間の飲料水摂取(年間摂取量は730リットル)による預託実効線量0.1mSv/年の勧告RDLは、年齢に関係なく適用される」とあり、203~204ページのテーブルに放射性核種別の基準値(ガイダンスレベル)が記載されている。

自然発生による放射線被曝量(平均で年間2.4mSv程度)を別にすれば、一般人の年間被曝限界量(外部被曝量+内部被曝量)は1年に1mSvですが、水(飲料水)の関係者は、水(飲料水)による影響を、上の【註】にあるように、その10分の1(年間に0.1mSv)以下に抑えようとしています。つまり、

・人は1日あたり2リットル、つまり年間に760リットルの水を飲む(前提)
・0.1mSvが水(飲料水)に許された年間の放射性物質の基準値である(基本姿勢)
・これを、年間に760リットル飲む水の、1リットル(なお、1リットルは1kg)あたりに許される放射性ヨウ素や放射性セシウムという切り口で計算すると、その基準値はそれぞれ、10ベクレル/リットル。汚染度が基準値ギリギリの場合は、1日分は2リットルなので20ベクレル。(水をあまり飲まない人もいるとは思いますが、自分の飲料水消費量を見ればわかるように、実際には、もっと水を飲んでいる。しかし、それはさておき。)

したがって、水以外の食べ物(たとえば、コメやパンやうどん、大根・小松菜・ニンジン・シイタケ、牛肉・豚肉、鶏卵、サンマ・アジ・鮭・牡蠣、リンゴ・柿、牛乳、お茶など)の放射性ヨウ素や放射性セシウムのそれぞれの測定値が10ベクレル/kg未満なら、それぞれをどれくらいたくさん食べるかといったことをまったく気にしなくても、大食いコンテストに頻繁に出場するような大食感でない限り、非常に安心だということになります。大ざっぱですが、日々の生活では10ベクレル/kgという数値は覚えやすいしわかりやすい。

しかし、それだと大ざっぱ過ぎるといわれるかもしれないので、少し細かく計算してみます。

僕たちは1日に2.0㎏~2.5㎏(2,000g~2,500g)くらいの量の食べ物を食べています。同じようなものだけを食べ続けるのが好きな方もいますが、まあ、1日に15種類くらいの食材・食品(コメやパンやうどん、大根・小松菜・ニンジン・シイタケ・ホウレンソウ、トマト、牛肉・豚肉・鶏肉、鶏卵、サンマ・アジ・サバ・鮭、牡蠣、リンゴ・柿、牛乳、お茶、お菓子・スイーツなど)を食べている。ただし、食べ物に気を遣っている人は、もっと多くの種類をバランスよく食べる。また、管理栄養士ならもっと種類を増やすでしょうが、ここでは15種類としておきます。

1日の食べ物の種類を15種類とすると、その量は全部で2.0kg~2.5㎏(2,000g~2,500g)なので、食品1種類当たりの単純平均量は133g~167gとなる。しかし実際は、丼ご飯一杯のお米の量がだいたい150gなので、ご飯が好きな人(たとえば、朝食・昼食・夕食に適度な量のご飯を食べる人や、お昼に牛丼の大盛りやカツ丼を食べ夜にしっかりとごはんを食べる若い人)だと1日に300g以上はコメを食べている。また、ステーキの好きな人が1ポンドステーキを食べると牛肉量は450gとなる。フライにしたジャガイモも一緒にたくさん食べるかもしれないが、ここでは気にしない。

【註】現在の日本人は一人あたりで1年にだいたい60㎏をわずかに下回る量のコメを食べているので、これを1日分に直すと155g~160g。

「水は1リットル(1リットルは1,000g)あたり10ベクレル」という基準値を個々の食材や食品に適応し、個別の食べ物の1日あたり摂取量の量的なばらつきを25g~450gとすると、ベクレル値は、25gの場合が400ベクレル、50gの場合は200ベクレル、300gの場合が33ベクレル、450gの場合は22ベクレル。1日に20種類の食品を全部で2.0㎏食べると考えると、平均値は100gになって基準値は100ベクレルとなる。これが100ベクレルの想定根拠だと思いますが、消費者は「迷ったら安全サイド」をとるので、これをそのまま受け入れるわけではありません。

そもそも、放射性物質被曝を基準値まで受け入れる必要はないし、水(飲料水)は実際には基準値よりもはるかにきれいです。たとえば、北海道放射線モニタリングサイトの「水道水」のページには「(北海)道では、道内4地点において水道水(蛇口水)を採取し、測定を行っていますが、放射性物質は検出されていません。(『不検出』とは0.2~0.4Bq/kg未満です。)」とあるので、かりに飲料水の汚染を0.4ベクレル/kgとして、先ほどの飲料水を基準とした適応計算をやり直すと改定値は次のように厳しいものになります。

・摂取量25gの食材の場合: 400ベクレル → 16ベクレル
・摂取量50gの食材の場合: 200ベクレル → 8ベクレル
・100gの場合: 100ベクレル → 4ベクレル
・300gの場合: 33ベクレル → 1.33ベクレル
・450gの食品の場合: 22ベクレル → 0.9ベクレル

繰り返しになりますが、日々の生活では10ベクレル/kgという数値は覚えやすいしわかりやすいし、どんな食品に対しても使い勝手がいい。

スーパーやデパ地下、あるいはコンビニの食材売り場の食材にベクレル値が表示されているわけではありません。外食や市販の惣菜にどんなベクレル値のものが使われているかもわからない。とくに価格競争になっているような場合は危ない素材がその食べ物に入りこんでいる可能性はある。外では、お弁当を用意すれば別だが、そういうものを食べるしかない。賢い消費者は、「直ちに影響はない」といったことのその後の意味を学習しているので「迷ったら安全サイド」で考える。

その結果、放射性物質に汚染されていないこと(たとえば、定量下限値が1ベクレル/kgの測定器で「検出せず」といった事実)を発信しているお米の直販農家や、汚染がないか、あるいは汚染度が非常に低いことを第3者機関の測定結果として表示しているような野菜の宅配専門業者が忙しくなる。スーパーの中にもそういう対応を取り始めているところがある。そういう流通チャネルで、「国の基準」よりも安全・安心なものを買っておけば、外で少々ヤバイものを口にしたところで全体の帳尻は合う。賢い消費者の頭の中はそういう風になっていると思います。

食品に含まれる放射性物質を国の基準値まで我慢する必要がないというのは、その使用が国で認可されている食品添加物の入った加工食品を、何も好きこのんで食べる必要がないのと同じことです。賢い消費者は、食品添加物のまったく入っていないもの、あるいは少ない食品を選択しています。

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