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2012年5月 8日 (火)

原木栽培のシイタケが窮地

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すべての原木栽培がおいしいというつもりはありませんが、原木栽培と菌床栽培のシイタケの香りや味わいの違いを納得しようと思ったら、半日ほど天日干しした生しいたけの軸をカットし、短くなった軸の部分を上にした状態 (upside-down) で軸に塩をのせて蒸し焼きにし、じわっとなった傘の内側にスダチかユズをかけて召し上がることをお勧めします。そのとき陶然とした気持ちにしてくれるシイタケとそうでないシイタケがあり、そこで原木ものと菌床ものの差があきらかになります。

原木栽培のシイタケが、あいかわらず続く放射性物質汚染で窮地に陥っています。

菌床栽培のシイタケやその他の菌床栽培のキノコ類は、空調施設完備の工場で、つまり常に快適な温度と湿度が維持された環境で周年(通年)栽培されており、だからほとんど工業生産品といえるかもしれません。

しかし、原木栽培のシイタケは外気の下で、クヌギやミズナラなどを「ほだ木」として使う天然に近い栽培方法なので、「ほだ木」も、その「ほだ木」で育ったシイタケも被曝します。福島第1原子力発電所から150キロ~200キロメートルも離れた原木シイタケ生産地域でも、「国の基準値」を超える放射性セシウムがあいかわらず検出されているようです。そういう場合は当然のことながら、出荷ができない。また、「ほだ木」は必ずしも地産地消ではなく、主要生産地から各地に流通するので、それを知っている消費者は原木シイタケに対してより慎重になっている。それも原木シイタケの事態を深刻にしています。(【註】キノコ類は放射性セシウムを蓄積しやすい。放射能汚染された食品例として、チェルノブイリ事故調査の時にもキノコはよく登場した。2012年4月からの「国の基準値」は、シイタケが一般食品と同じで100ベクレル/kg、原木そのものは50ベクレル/㎏。)

現在、測定結果を公表して検査済みの原木栽培シイタケを出荷しているところは、僕の知る限り非常に限られています。原木シイタケの安全・安心を測定データで伝えることがなかなかできないので、消費者の財布は、外気被曝のない(あるいは、ほとんどない)地域で生産された菌床栽培シイタケにだけその口を開くことになる。

原木シイタケの生産量は国内のシイタケ生産量全体の18%くらいです。つまり、原木シイタケ生産者は付加価値の高い農産物を自分の商品として選択した人たちです。だから、同じシイタケといっても普及品の菌床栽培に切り替えることはなかなかに難しい。かりに切り替えたとしても、同じ場所でシイタケを栽培している限り、大気の流れは露地も工場も一緒に包み込むので「きれいな」シイタケを栽培することが難しい。他の付加価値農産物の生産がそこで可能でも、同じ場所で露地栽培を継続するなら、あいかわらず放射性物質を運んできている(と、原木やシイタケの検出結果から判断できる)大気の流れを、その新しい付加価値農産物も避けようがない。従って、残る選択肢は、他所へ移住して農業を続けるか、現在の場所で農産物生産以外の仕事に就くか、あるいは自分でそれを始めるか。

放射性物質汚染で窮地に陥った原木シイタケ生産者を支援するには、損害賠償の処理を速めることが緊急に必要だと思われますが、肝心の賠償支払いのプロセスが停滞している。

当分の間は、原木栽培のシイタケの蒸し焼きで陶然とした気分になることが難しそうです。

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