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2012年12月20日 (木)

数の子とおせち料理

北海道は鰊(ニシン)の産地ですが、「ニシンそば」で食べる「身欠きニシン」以外はどうも食欲がわきません。もったいないことではあります。ただし、大きな例外があり、その例外とはニシンの卵であるところの「数の子」。これはじつにおいしいと思う。おせち料理もこれがないと始まらない。

江差(えさし)や小樽やもっと北の北海道の日本海側に足を運ぶと、かつて盛んだったニシン漁の跡が見られます。「ニシン御殿」とよばれる番屋建築の跡で、今は記念館風になっているもの、今でも観光施設を兼ねた住居として使われているもの、そして朽ち果てていく途中のものがあります。(【註】鰊(にしん)番屋とは、ニシン漁の網元の住居と、雇い漁夫が寝泊まりする宿泊施設の二つの機能を兼ね備えた大きな建物。たとえば、下の写真。写真の番屋は今は重要文化財。)

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小樽や札幌や江差では「群来(くき)」という文字の入った看板の寿司屋や料理屋や街の居酒屋をときどき見かけますが、群来(くき)とはニシンの群れで、手元の辞書の説明を借用すると「(北海道南部や東北地方で)産卵のためにニシンが大挙しておしよせること。鰊(にしん)群来。」あるいは「産卵のため沿岸へ押し寄せる魚群。特に北海道沿岸へ来遊するニシンの産卵群」。

群来の見られた時期、たとえば、1880年くらいから1930年くらいまでの北海道のニシン漁獲量は年に40万トン~100万トン。しかし、1960年以降は減少の一途で、途中数万トンの漁獲量の年もありましたが、ここ数年の漁獲量は年に3500トン前後。つまり、「ニシン御殿」の時期の100分の1から300分の1です。北海道産の数の子の値段が半端じゃないのも頷(うなづ)けます。

以前は、つまり、まだニシン漁がそれなりに盛んであった頃は、「干し数の子」(天日干しをした数の子)が数の子の定番(現在俗語だとデフォ)だったと記憶していますが、希少価値が高まるにしたがって、定番が「塩漬け」(や、最近では「味付け」)に替わっていったようです。同時に、米国産やカナダ産の数の子も売り場を席巻するようになってきました。北海道産の「干し数の子」は現在でもわずかに生産されています。最高級食材の値段なので、懐に余裕のある方はどうぞ。(ただし、「干し数の子」が子供用の甘くないおやつだった時期も、かつては、ありました。)

さて、「おせち料理」です。「おせち」は漢字をまじえて書くと「お節」。「節」は「節分」の節で、季節の分かれ目のことです。だから、おせち料理がお正月限定ということではなかったのが、だんだんと一般に浸透してきてお正月の「おせち料理」になったようです。そこに込められた意味は、豊作や子孫繁栄や家内安全。だから、地域差はあるけれども、たいていは、そういう意味合いの献立になっています。

◇祝い肴三種
・【黒豆】一年中「まめ」に働けるように、黒豆。勝手を云えば、黒豆はやはり丹波の大玉黒大豆です。北海道のは小粒なので、味噌や焼き豆にはいいのですが、祝い肴むきではありません。
・【数の子】ニシンの卵で子孫繁栄。これはわかりやすい。しかしなぜ他の魚の卵でなく、ニシンの卵なのか。おそらく噛んだ時の噛みごたえと味わいがイクラやタラコよりは優れているので選ばれたのでしょう。ちなみに、数の子もイクラもタラコも北海道産の食材。我が家では、数の子は、北海道産の無漂白の塩漬けを使います。
・【田作り】昔は干したイワシは田んぼの肥料でした。だから「田作り」。豊作を願う意味が込められています。その背景がわからないと、なぜ「田作り」などと呼ぶのか混乱してしまいます。これも勝手を云えば、京都は宮津の「田作り」が銀色に光り輝いていて美しい。

◇口取り
・【紅白の蒲鉾(かまぼこ)】紅白はおめでたい色。結婚式などでも用いられる彩り。蒲鉾は、地元の物もいろいろと試したのですが、やはり小田原。
・【伊達巻】「伊達(だて)」は華やか・派手・洗練という意味で、巻くは結ぶ。で、合わせて仲が良いことになるらしい。しかし、配偶者は伊達巻が好きだが、僕は好きではない。僕は伊達巻よりは普通の太巻きの方を好みますが、普通のは伊達巻ほどお正月向きではありません。
・【栗金団(くりきんとん)】金団(きんとん)は金色の豪華さ。北海道特産の「ゆり根」で作る金団もおいしいが、どちらにせよ、僕には甘すぎます。
・【昆布巻き】「よろこぶ」の「こぶ」から。昆布も利尻・羅臼など北海道の特産品。 昆布は普段から出汁とおでんとポン酢などに不可欠な食材。

◇酢の物
・【紅白膾(なます)】白い大根と赤い京ニンジンの紅白の膾(なます)はお祝いの水引をかたどったもの。紅白でおめでたい。北海道で手に入る京ニンジンは香川か岡山のもの。

◇焼き物
・【海老】腰が曲がった海老は長寿の象徴。長生きできるようにとの気持ちをこめた料理。

◇煮物(煮しめ)
・【里芋(さといも)】子芋がたくさん付くので、子宝祈願。余計なことですが、各種のイモ類(ジャガイモ、サツマイモ、長いもなど)のなかでは、普段でも里芋が一番の好みです。
・【蓮根(れんこん)】穴があいた蓮根には、先を見通せるようにとの意味がこめられているそうです。蓮根は、やはり、色白美人の徳島産。我が家では、煮物ではなく、酢蓮(すばす)。
・【慈姑(くわい)】慈姑(くわい)の大きな芽から「芽が出る」の意。芽が長く塊茎(かいけい;球形部分)の大きなものに限ります。
・【牛蒡(ごぼう)】牛蒡(ごぼう)は地にしっかりと根を張ります。普段からキンピラなどで好きな根菜ですが、お正月料理には不可欠な存在。ただし、我が家ではごぼうは煮物ではなく、たたきごぼう。

我が家のおせち料理は、最近は好きなものに絞っており、「田作り」、「数の子」、「黒豆」、「たたきごぼう」、「紅白なます」、「酢蓮(すばす)」と少量の「鯛の酢締め」。煮物は、「里芋」と「くわい」のみ。とくに「くわい」のほのかな苦さと食感がたまらない。それ以外は食べないので作りません。田作りは甘いねっとりとした味付けではなく、さらっとした仕上がりのピリカラ味。こうやって並べてみると、黒豆のような甘いのもありますが、酒の肴ばかりのような気もします。田作りがピリ辛味なのも日本酒との相性がいいからです。あとは、美味しい日本酒と「お雑煮」があれば、それで満足。こういう献立だと、お正月の間は、お節料理に飽きが来ません。

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