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2012年12月 3日 (月)

相当に明快と、相当に曖昧

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判断の座標軸をいちおう整理しておくと・・」の関連記事です。

各政党から「政策綱領」や「選挙公約」が発表されています。ここでは、2つの政党の「原子力発電」に関する考え方を、政党名を出さずに、簡単に比べてみたいと思います。ひとつは考え方や方向や選挙民への伝達の仕方が相当に明快であり、もう一つの方(ほう)は、それらが相当に曖昧です。

相当に明快な方(ほう)は、その党の政策綱領をPDFで配布しており、個人用の情報閲覧機器を持つたいていの人たちは自分でその内容を確認できます。

相当に曖昧な方(ほう)は、その公約や補足資料を紙でメディアには配布したらしいのですが、われわれにはその全文が手に入りません。メディアが親切にその内容を要約してくれたものと、メディアが重要と判断した箇所をカギ括弧(「・・・」)で引用した記事があり、内容の要約はそのメディアの解釈を通したものになっている気配なので、ここでは複数のメディアの引用部分のうち共通なところも合わせて対象としました。

まず相当に明快な方から。政策綱領のなかから該当箇所の一部をそのまま引用(『・・・』部分)します。

『卒原発 原発稼働ゼロから全原発廃炉の道筋を創ります。

安全や雇用・経済対策など「原発稼働ゼロ」の現実で直面する課題に責任ある対応をし、全ての原発が確実に廃炉となる「卒原発」への道のりを定めます。原発に代わって再生可能エネルギーを普及させるエネルギーの大転換で、地域産業を育成し雇用を拡大させます。昨年に脱原発を決めたドイツでは、すでに5 兆円規模の産業と38万人の雇用が生まれ、地域が活性化しています。

● 東京電力は破綻処理し、国が直轄して福島第一原発からの放射能汚染の拡大を防ぎ、責任をもって損害賠償や被ばく安全に対応する。
● もんじゅと六ヶ所再処理工場の廃止、世界最高水準の安全規制、大間原発など新増設の禁止、使用済み核燃料の総量規制からなる「卒原発プログラム」を定める。
● 原発稼働ゼロに伴う雇用・経済対策などを実施し、国民生活や経済の混乱を避けつつ、全原発の廃炉への道のりを定める。
● 発送電分離など電力システム改革を貫徹して公正な競争を促し、地域分散ネットワーク型のエネルギー地域主権を実現する。
● 大胆な省エネルギーと再生可能エネルギーの飛躍的な普及を実現して、石油・石炭への依存度を減らし、地域の雇用拡大と経済の活性化を図る。』

綱領にはスケジュールへの言及がありませんが、目標や目的が明快・明確なので「卒原発プログラム」が納得のできる時間軸上に展開されると好意的に考えます(討論会などでは『10年後までの原発からの卒業をめざす』、公約では、『原発の稼働をゼロとし、遅くとも10年以内に、すべての原発が確実に廃炉となる「卒原発」への道筋を作る』など)。ただ、「石油・石炭への依存度を減らし」とあるのには違和感があり、なぜなら、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料への依存度は、一定期間は維持というより増加させないと「卒原発」ができないというのが僕の考えですが、その考え方の差については、地球温暖化についての見方の違いからきていると思うので、ここではとくには気にしません。

次に、相当に曖昧な方です。

ある大メディアに、その党の公約で原子力発電に関連した部分の要約(『・・・』部分)が掲載されていました(毎日新聞)。

『エネルギー供給体制を賢く強くする
 <基本方針>
・先進国をリードする脱原発依存体制の構築
・原発政策のメカニズム・ルールを変える=ルールの厳格化
(1)安全基準
(2)安全基準適合性のチェック体制
(3)使用済み核燃料
(4)電力供給責任・賠償責任
・電力市場の自由化
・発送電分離
・最小のエネルギーで最大のパフォーマンスを上げる最先端モデルの国へ』

これだけでは意思や目標がよく見えない。つまり『先進国をリードする脱原発依存体制の構築』とはいくつかの原発がいつまでも稼働し続けてている状態を含んでそうなのか、それともそうでないのかよくわからない。だから、複数のメディア(たとえば、産経新聞)がそれを補足する形で、「政策実例には『既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウト(徐々に削減)する』と明記した」と報道したのでしょう。『(徐々に削減)』という日本語の説明がもともとあったものなのか、メディアの親切な付加解説なのかはわからないにしても、『既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトする』という文言が実際に配布された政策実例に明記されていたのは確かなようです。

『既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトする』という一文には曖昧な言葉遣いが二箇所あります。ひとつは『原子力発電は・・』、それから、もう一つは『フェードアウトする』。

僕は、日本語の「・・・は」というのが好きで、たとえば、「象は鼻が長い」「僕はウナギだ」「コンニャクは太らない」というような表現は、かつてパリで日本語を教えていた日本人哲学者はどういう風に感じられるかわかりませんが、僕にとっては明快でわかりやすい。しかし、選挙公約のような文書では「既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトする」という表現は不親切で、もし意思を明快に選挙民に伝えたいのなら「既設の原子炉による原子力発電を、2030年代までにフェードアウトする」と、「フェードアウト」という不思議な言葉についてはすぐあとで問題にするとして、政策行為主体をもっとはっきりとさせた方がいい。

「フェードアウト」です。なぜここで「フェードアウト」というカタカナ用語をわざわざ選んだのか。『フェードアウト (fade out) 』とは、映画の画面が徐々にぼんやりと暗くなって観客の目から消えてしまうような表現方法です。念のために手元の英和辞典からその意味をお借りすると「(映・放送)音[映像]が[を]次第にぼんやりする[させる]、溶暗する」とあります。似たような英語表現に「フェーズアウト (phase out) 」というのがあり、これは「段階的に取り除く、徐々に撤去・廃止・削減する」という意味です。原子力発電所や使用済み核廃棄物の廃止・廃棄処理には、無理にカタカナ表現を使うにしても「フェーズアウト」の方がまだ似つかわしい。しかし、当然のことながら、もっともわかりやすいのは「既設の原子炉による原子力発電を、2030年代までに、段階的に廃止する」です。

といった感じで、私的な視座(「原子力発電と火力発電や代替エネルギー」、「TPPとグローバリゼーション」、「税金と米国債という定期性預金」、「日米安保条約と日米地位協定」の4つ)をもとに、各政党の考え方や意思の堅さの具合と揺らぎの様子を眺めています。揺らぎに関して言えば、それが一定方向に収斂していくプロセスで生じる制御された揺らぎなのか、それとも、定見のなさが引き起こすバタバタした揺らぎなのか。

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