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2013年1月18日 (金)

米粉消費と米粉生産に翳り?

とくに生産統計などを参考にしなくても、女性客で混みあっているパン屋を2~3軒ほど定期的にのぞいていたら状況はだいたいわかります。そういうパン屋では、しばらく前から、米粉を使ったパンをまったく見かけなくなりました。上新粉(じょうしんこ)や白玉粉(しらたまこ)などの伝統的な米粉を利用した煎餅(せんべい)や団子(だんご)はまだ比較的に安定した人気があるのでしょうが、米粉パンでわかるように、新しいタイプの米粉はなかなか消費者に浸透していかない。3~4年前からコメ需要拡大の一環として展開された米粉プロモーション活動も功を奏していないようです。

消費者にとってはどうでもいいことですが、お役所と生産者側の都合で、せんべいやだんご用のコメは「加工用米」、米粉パンなどの新しい用途(新しいタイプの食品)に使われるコメは「米粉用米」と区分されています。

伝統的なタイプの米粉と新しいタイプの米粉の違いは、以前のブログ記事からその説明を引用すると、『うるち米の粉を上新粉(じょうしんこ)といいます。上新粉は柏餅や草餅やだんごなどに使われますが、パン用の米粉とは違って粒が大きいので、指でさわるとキュッキュッといった感じの反応が返ってきます。パン用の米粉は、さらに細かく砕いてあるので、小麦粉と同じでふわふわと柔らかい。』(「ためしに米粉パン」)ということです。

さて、2012年の米粉用米の生産が減少したそうです。生産量が前年よりも14%減り3万4521トンへ、作付面積も6437ヘクタールへと12%減少しました(農林水産省)。米粉を使った新しいタイプの食品の消費が伸びないので米粉が売れない、米粉が売れないので農家への米粉米の注文は減る、したがって生産量と作付面積が減った、ということのようです。ご飯用のお米の生産量は年間に800万トンくらいなので、3万4521トンはその0.43%にすぎません。農水省の目標は2020年に50万トンなので、先は長い。

芥川龍之介に「藪の中」という妖気を放つ短編があります(ご参考までに青空文庫の「藪の中」はこちら )。現在の米粉の消費や生産の状況を、立場の異なる複数の関係者にそれぞれ要約してもらうと、「藪の中」のような様相を呈してきます。小説と違い妖気は漂ってはいませんが、小説と同じなのは、関係者の言い分が食い違っていて真相がよくわからないということ。

関係者の発言を、日本農業新聞(2013年1月14日)から引用します。(『・・・』が引用部分。ただし下線は「高いお米、安いご飯」)

◇「農林水産省」

『(米粉米の)業者はこれまで先読みして、より多くの在庫を持っていたが、ここにきて消費の伸びが鈍化した。しかし用途は増え、需要はむしろ底堅くなっている

◇「新潟県の大手製粉業者」 (【註】米粉製造業者の数は限られており本格的な米粉製粉装置は高価なので、北海道で北海道産米をパン用に製粉しようとしたら地元では加工ができなくて、たとえば新潟の専門業者に製粉を委託している。)。

『もちもち感など、米粉の良さが消費者に伝わっていない。製粉コストは小麦粉より高く、小麦の代替との位置付けでは需要を増やすのは厳しい

◇「フードアクションニッポン推進本部」 (【註】農水省の委託を受けて、米粉を利用した商品をメーカーや小売業者に提案するのがフードアクションニッポン推進本部の役割)

米粉は<どう生き残るか>という段階。用途をどこまで増やせるかが鍵になる』

農林水産省が音頭を取ったマーケティング活動は、農林水産省がとくにそうだというわけではないのですが、どうもあまりいい結果が出ないようです。以前、「朝ごはんと、ディ・マーケティング」という記事を書きましたが、『朝ごはんを食べよう、そして、朝ごはんにはお米を食べよう』という農水省キャンペーンは、朝食欠食率という結果だけから判断すると、プラス効果(マーケティング効果)でなく逆にマイナス効果(ディ・マーケティング効果)につながりました。

我が家のようなお米のご飯を常に食べている家庭で、米粉によってコメの消費量が増加するかと云えば、それは難しい。米粉スナックなどにまったく興味はないし、パンに関してもホームベーカリーで焼く小麦パンをもちもち感が楽しい米粉パンに置き換えるくらいなので、そもそものパンの消費量の相対的な少なさを考えたら、効果は限定的です。

「高いお米、安いご飯」(というブログ)の目的のひとつは、日本のお米の消費量の増加や食料自給率・穀物自給率の上昇を応援することなので、米粉に関するブログ記事もそれなりに多い(読み返してみると、自分の記憶以上に多かった)。この記事の最後に3年分を並べてみます。

ついでに云えば、このブログのなかでは農産物にたいする主たる関心は、基礎農産物、つまり米や麦のような穀物、大豆や小豆といった豆類、それから、タマネギやニンジンやダイコン、ゴボウ、小松菜やホウレンソウ、キャベツや白菜や水菜、ピーマンやブロッコリー、サトイモやジャガイモ、トマトやミニトマトといった健康に生きていくための必需品としての基礎野菜にあります。しかし、農業の高付加価値産業化や農業経営のプロフェッショナル化を主張することが大好きな人たちがおそらく好きであろうと想像されるイチゴやメロンやマンゴーのような高級農産物、あるいは植物工場で効率的に栽培された葉物野菜、つまり効率的農業の事例発表向きの農産物には興味はありません。

以下は、米粉に関する過去3年間のブログ記事一覧(上が古く、下ほど最近のもの)。

そんなに遠慮しなくても・・

日本風味のパン

米粉アプリケーション

草もち

ちまきと柏餅(かしわもち)

お米(米粒)からパンができる

米パンに向いている米粉やお米

ためしに米粉パン

続・ためしに米粉パン

米粉おそるべし

それなりにあとを引く米粉パン

米粉用の小型製粉機

米粉100%のパンと、パン用のブランド米

お米(コメ)のフランスパン

米粉(こめこ)パンと米粒(こめつぶ)パン

米粉用のお米は安く、パン用の米粉は高いという不思議

3分搗き(つき)のパン、あるいはミクロな米パン需要

別の風味をもった米粉パン

「米粒」パンは中止。「米粉」パンはおいしいので継続。

余った米粉と薄力粉で、意外においいパンができた

以上

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