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2013年2月27日 (水)

国産蕎麦(そば)の値段が、つまらない理由で、暴落

2012年産の国産蕎麦(そば)の値段(取引価格)が、供給過剰でボーラク(暴落)しているそうです。原材料欄に「小麦粉・そば粉・・・」の順番ではなく「そば粉・小麦粉・・・」の順番で表示されている干し蕎麦を自分で調理する人にはうれしいニュースですが、残念ながら消費者価格にとりあえずの変化はないと思われます。

穀物や雑穀の循環的な価格変動はよく見られる現象です。豊作で当該穀物の価格が非常に安くなる。生産意欲をなくしてその穀物や雑穀から離れる農家が増える。そうすると生産量が減り、今度は、生産が需要に追い付かない。引き合いが増えて価格が上がる。その価格に刺激され、その穀物をまた作りはじめる農家、あるいは新規参入組が増える。その結果、需給が安定する。価格も安定する。しかし生産量の増加はそこで急にはストップできないので、次の年は供給過多で価格は下落トレンドになる。

かりに、国産蕎麦の価格が予想以上に下落したとしても、それが、中国や北米からの競合輸入品の状況、最終消費需要や流通チャネルの動きなどを勘案して、自分の裁量で生産量を決定し、あるいはビジネスの安定のために生産量の一部については卸売業者や大口最終需要者と複数年の販売契約を結んだりした結果のことなら、自分の見込み違いを笑う余裕があります。複数年契約のおかげで特にひどい目にはあわないし、どこでドジを踏んだかが自分自身でわかるので、面白くない結果だけれど、来年以降の対応策はとれます。

しかし、供給過剰が農家の自己判断・自己裁量というより、戸別所得補償制度が導入された結果、全国的な蕎麦の作付面積が増え、そこに収量の増加、つまり豊作が加わって需給バランスが大幅な供給過多へと傾いたということであれば事情は同じではない。蕎麦を生産すれば、需給状況や価格動向にかかわらず、蕎麦生産農家にはその生産量に応じて政府(農林水産省から)から補助金が支払われるわけで、そうなればある程度の所得は計算できるので、あまり市場の状況と自分の生産量との関係は考えない。

そして、補償制度が導入された場合にはよくあることですが、こういう全体の状況をながめた商売上手な流通が、生産者の足元を見ることになります。補助金分のすべてとはいわないまでも、その少なからぬ一部分を吐き出させるような価格交渉が開始されます。蕎麦(そば)生産農家にしても、右から入ったものの一部を左に渡すだけなので、とくに懐が痛むわけではない。

懐が痛むのは、補助金という名の税金を支払っている蕎麦の消費者です。補助金という名の税金が、役所の意図した場所とは違う場所にビジネス上の利益となって流れ込んでいくのは、よくある話です。たとえば、米粉用のお米。

今回の件についての農林水産省の見解は、生産が急に増え需要が追い付いていない、ということのようです。農林水産省はこのタイプの見解がお好みらしく、たとえば、米粉供給が鈍化してくると、「米粉消費と米粉生産に翳り?」という記事で書いたように、『(米粉米の)業者はこれまで先読みして、より多くの在庫を持っていたが、ここにきて消費の伸びが鈍化した。しかし用途は増え、需要はむしろ底堅くなっている』となります。

僕は、日本の穀物自給率や食料自給率が100%に近いかそれをわずかにでも超える状態が日本にとっては望ましいと考えており、そのためには、農業支援の公的な補助金や公的補助制度は必要だと考えていますが、今回の蕎麦(そば)事例にはちょっとうんざりさせられました。

農業を政府が直接・関節の補助金や補助制度で支援するというのはグローバルな現象です。農産物の自給率を高い水準で維持しようとしている先進国では、この政策は各国ともデフォ(規定値くらいの意味)となっています。

この政府支援量あるいは公的資金投入比率を国別に見比べるために「農業保護率(PSE%: Agricultural Producer Support Estimate %、そのまま訳せば農産物生産者への支援評価額の比率)」というOECDの指標があります。PSEは「農産物の関税や管理価格によってできる内外の農産物価格差に生産量を乗じたもの」と「政府の補助金等の財政支持額」を「合計」したもので、PSE%はその国のPSEをその国の農業総生産額で割ったものです。

しかし、各国とも実質は政府補助金だけれども、名目上はPSEの分子の一部とはならないようなものを上手に運用しているので、PSE%だけでは実態は見えてこない。

だから、そういうこともあって、農業が非常に強く輸出意欲の非常に高い国は、農業の相対的に弱い国で行われているその国での公的農業支援制度が気に入らない。たとえば、オーストラリア政府の調査機関は、米国の農家や農業法人の農業所得に占める政府直接支払いや公的支援と思われるものを詳細に分析して保護政策の弱点(弱点という言葉は使わずに、産業の非効率性という用語で呼ばれていますが)を指摘しています。

関連記事は、「農業保護率指標について」、「農業の公的支援(その1)」、「農業の公的支援(その2)」、「農業の公的支援(その3)」。

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