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2013年3月15日 (金)

「ときどきこういう不思議な国語意識を持った人たちが出てくる」・補遺

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ときどきこういう不思議な国語意識を持った人たちが出てくる」というブログ記事の補遺です。そのブログ記事で引用したニュースを再び引用しますが、前回とは少し違った視点でそれを眺めてみます(以下の『・・・』部分が引用)。

『参院選公約に「英語公用語化」? 楽天・三木谷氏が自民党教育再生実行本部で英語教育強化訴え』『楽天の三木谷浩史社長兼会長は21日、自民党本部で開かれた教育再生実行本部で「英語ができないため日本企業が内向きになり世界の流れに逆行している」などと指摘し、大学入試の英語試験にTOEFLテストを導入することや実用英語教育の強化などを提言した。これに山谷えり子参院議員が「(大学入試でのTOEFL導入は)突破口になる。第2次安倍内閣で実現する」と賛同。出席者の意見は次第に熱を帯び、「参院選で英語公用語化を訴えるべきだ」などという意見も飛び出ていた。』(産経ニュース 2013.2.21)

この記事の内容を敷衍(ふえん)すると次のようになります。

あるグローバル企業(ないしはその予備軍)が、国民国家・国民経済の持つ社会資本(このニュースにおける社会資本とは国民教育制度、その原資は国民の税金や国債)を自社の売上と利益の拡大のために使いたいので何とかしろ、つまり政府はグローバル企業(ないしはその予備軍)向けの即戦力教育をやれ、国はグローバル企業(ないしはその予備軍)のビジネスにそのまま役に立つような内容に英語教育を変更せよと主張し、それに賛同する議員や、「英語の公用語化」といったもっと先鋭的なところまで踏み出してもいいのではないかいう意見も見られた。

「国民国家の一員として生き続けるための知恵と知識の教育」と「グローバル企業で即戦力になるための実務知識の教育」は、教育対象項目が一部は重なるにしても、目的や方向は相当に違います。この会議に出席された方たちは、前者のタイプの教育については関心がないのかもしれません。(国語との関連でいえば、前者のタイプの教育の中には、「日本語という漢字・ひらがな・カタカナからなる国語は、どこの伝統的な国語もそうだが、過去との連続性を維持しようとすると適当に身につけられるほど甘いものではない」という認識にもとづいた長期の日本語教育プログラムが含まれます。)

グローバル企業の目的ないしビジネス・モチベーションは特定の国家の枠にとらわれない短期の利潤追求なので(だから、法人税や労働者賃金の安い国、カントリーリスクの少ない国へと資本投下先を、四半期ベースでどんどんと移していく)、国民経済や国民福祉の長期の増大や維持という国民国家の目的とは一致しません。

TPP論争などにもこの二つの考え方の戦いがきれいに反映されています。TPPの場合には、米国系のグローバル企業が、米国以外の参加各国の社会資本を食いつぶすという側面が大きいのですが(日本の場合だと、農業・金融・医療といった分野の社会資本がその対象となっている)、ここで取り上げた新聞記事での英語教育に関して云えば、日本のグローバル企業(ないしはその予備軍)が、教育という日本の社会資本投資を自分の都合の良い方向に誘導して活用しようとしていることになります。

本籍地の意味が徐々に希薄になるのがグローバル企業共通の特質ですが、この新聞記事で登場した企業にも米国系グローバル企業と同質の体質(自国ないし他国の社会資本を、国や政府に同意・承認された形で私企業として活用する、そういう方向に国や政府を仕向ける、という体質)が現れているようです。

関連記事は、「グローバリゼーション: その意味の私的な利用の仕方」。

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