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2013年3月18日 (月)

素材のカットのしかたや味付け方法の事例研究(TPPの経済効果報道に関して)

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食べ物における「自由からの逃走」』という記事の最後に『「アナウンサーの実況なし・解説者の解説なしのスポーツのライブ中継」などを別にすれば、たいていの新聞記事やテレビのニュース番組などは、読者や視聴者が消化しやすい大きさにカットされ、メディアの好む味に味付けされています。そういう編集済みの結果がわれわれに向けて報道されるので、われわれがそれを読んだり見たりするというのは、われわれが「カット野菜+カット肉+合わせ調味料」の組み合わせをスーパーで買ってきてそのままフライパンで炒めて食べているのと、大差ないのかもしれません。』と書きましたが、メディアがどういう具合に素材をカットしどういう風に味付けをしているかを、例えば「TPP参加による経済効果試算」に関する報道記事からも確かめられます。

政府が発表した「TPP参加に伴う経済効果試算」の骨子は以下のようです(ただし、下線は「高いお米、安いご飯」)。

◇ 関税をすべて撤廃すると仮定してTPPに参加した場合、農林水産物の生産は、米が1兆円減るなど、33品目で3兆円のマイナスになるが、他の産業の生産の伸びや消費の拡大があるので、全体としては、10年後に国内総生産 (GDP) を実質で3兆2000億円 (0.66%) 押し上げる効果がある。

いくつかの新聞記事を拝見すると、農業関連の新聞が大きな活字で「農林水産3兆円減」と見出しをつけるのは当然として、経済が専門とされる新聞や発行部数の多い全国紙で共通するのは、「TPP参加でGDP 3.2兆円拡大」の部分がポイントの大きな活字で強調されていることです。

政府発表の同じ試算数字を用いても、メディアのそれぞれの意思でデザインされた「選択と集中」というフィルターを通すと以下の(その1)や(その2)といった具合になります。

【註】ちなみに日本のGDPは、2011年の実質GDPが509兆円、2012年の実質GDPが520兆円、2011年の名目GDPは471兆円、2012年の名目GDPは476兆円(内閣府GDP統計)。3兆2000億円は、たとえば509兆円の0.63%ですが、今後のGDPの伸びやGDPデフレータの推移が関係するので、ここでは0.66%という政府の数字を使います。

(その1)『TPPに参加すると、なんと、GDPが3兆2000億円も拡大する。』 TPPへの参加を強く支援するタイプの報道で、ここでのポイントはプラス3兆2000億円という数字を強調すること。しかし、3.2兆円はGDPのわずか0.66%の増加に過ぎないということや、その増加分が期待できるのは来年や再来年ではなく10年後であることにはとくには言及しない。かりに言及したとしても目立たないように記事の後半部分に本文活字で。

(その2)『TPPに参加しても、GDPの増加分は10年後にわずか0.66%でありほとんど意味のない数字である。』 投資効果が悪すぎる。(若い女の子なら「ひどいコスパね」。)わずかに円高になればそんなもの (0.66%) はすぐに吹き飛んでしまうし、日本の農業・金融・医療などの基盤がこうむる悪影響を考えると(たとえば、農業の3兆円のマイナスとは8兆5000億円の農産物生産額から3兆円が奪われるということなのでその被害は壊滅的である)、TPPに参加する意義など何もない。TPP参加に反対する立場の報道(【註】農業と林業と水産業を合わせた農林水産業全体の生産額は10兆円)

こういった感じで、「読者や視聴者が消化しやすい大きさにカットされ、メディアの好む味に味付けされた新聞記事やテレビのニュース番組など」を拝見しています。

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