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2013年4月 1日 (月)

強い品目は自由化推進、弱い品目は保護政策: 米国の乳製品の場合

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農業関係の新聞に次のような記事が掲載されていました。一部を引用します。

<「TPPでご都合主義」「米国乳製品輸出協会 輸出は増 輸入『ノー』」「乳製品の輸出は増やしたいが、自国の市場は開きたくない。・・(中略)・・ワシントンに本部を置く米国乳製品輸出協会のハイメ・カスタンダ副会長は本紙の取材に対して、日本には一層の市場開放に期待する一方で、競争力が高いニュージーランドの産に対しては生産・輸出の方式が『不公正』との理由で市場開放には繁多の方針を示した。」「同副会長は、米国政府で貿易交渉を担当する米通商代表部 (USTR) の出身だ。」(日本農業新聞 2013/03/28)>

「自国が強い品目は、弱い国に対しては自由化推進; 自国が弱い品目は、強い国に対しては保護政策」というのが米国(に限らず、たいていの貿易当事国)の考え方ですが、農畜産業界でもこのロジックが同じように展開するので「強い農畜産品は、それが弱い国に対しては自由化推進; 国際競争力が弱い農畜産品は、それが強い国に対しては保護政策」と、上に引用した記事のような内容になります。

米国の事情をもっと客観的に観察するには、農畜産物に関して米国と競合関係にある国、あるいは、米国の農畜産物の保護政策にイライラしている農畜産物輸出国の意見を拝聴するに限ります。

ABAREという、農業を中心としたオーストラリア政府の経済調査機関があり、そこがまとめた“US AGRICULTURE without farm support” (ABARE research report 06.10, September 2006) という米国の農畜産業についての2006年の調査レポートがあります。自由化指向と規制緩和指向の強いニュージーランドなどの農業政策を推奨モデルにした場合、米国政府による農業支援や農家補助・農家補償は、資源の最適配分や生産性上昇を中長期で阻害するのでやめた方がいいのではないか、という内容のレポートです。その骨子を下にまとめてみます(■印)。(下線は「高いお米、安いご飯」、関連ブログ記事は「農業の公的支援(その3)」。なお、この資料の参照や部分的な引用はその旨をお断りすれば自由です。)

■(米国における)農家に対する支援策には(1)価格に関しては最低価格の維持、(2)売上に関しては最低売上額の保障、そして(3)農家への直接支払いがあり、これらが組み合わさって農家への支援が提供されている。

■米農務省の予算のうち、上記の農業支援に向けられるのはその20%で金額的には1.8兆円(1ドル=90円の場合)。なお、一番大きな予算は食べもの全般や栄養に関するもので50%。

農業支援の恩恵をこうむっている主な農畜産物は、「小麦・米・飼料用穀物(トウモロコシ)・綿花・大豆」といった基礎農産物、および輸入品との競合の激しい「砂糖や乳製品」。一方、支援がないか、あってもわずかな農畜産物は、「牛肉・豚肉・鶏肉」と附加価値農産物の「果物・野菜」。

■「小麦・米・飼料用穀物(トウモロコシ)・綿花・大豆」は3層構造の支援プログラムで、いわば支援の層を積み重ねるようにサポートされており、「市場価格」(農家の実際の販売価格)が「目標価格」(これくらいで売りたい価格)を下回った場合には、その差額がきちんと生産者に補填されるようになっている。「砂糖や乳製品」は輸入障壁で保護し、また同時に輸出の際には輸出助成金で支援

つまり、米国では「強い品目は自由化推進、弱い品目は保護政策」という基本姿勢は連続して堅固に保持されており、新しく登場してきたTPPというパラメーターなんぞによって揺らぐはずもないのだ、と「米国乳製品輸出協会」はおっしゃっているようです。

ルールは自分が決めるものではなくて「外」から来るものというのが長い間に培われた日本人の感性のようです。人知を超えた自然も「外」だし、外国も「外」ですが、ルールがそこからやってくる「外」とは、遠い以前は日本を東夷と呼んだ中華思想の国、そして今から150年ほど前からは帝国主義の欧米列強をさしたようです。国を跨ぐルールや国際プロトコルは「外」からやってきて我々はそれに巧みに順応するというのが、いい悪いは別にして、日本人の習いになっているようです。

「外」からやってくるルールに関して僕がよく覚えている比較的最近の例は、ノルディックスキーにおける採点ルール変更。そのチャンピオンが「キング・オブ・スキー」と呼ばれている「ジャンプと距離の複合競技」における評価ルール変更です。90年代の前半はこの競技で日本がとても強かった。距離はそれほどでもないがジャンプが非常に強い。だから得意のジャンプで圧倒的なリードを奪い、後半の距離競技で何とかリードを保って逃げ切るというのが日本の作戦で、これがはまった。しかし、チャンピオンの座を追われたスキー王国のヨーロッパにとってはこれがいらだたしいことこの上ない。この小癪な日本を弱くするには 採点の方法を変えればいい。ジャンプの採点比重を軽く距離のそれを重くすれば、日本を簡単に「合法的」に表彰台から排除できる。

つまり、ルールというのは、とくに自国の利害と外国の利害とがぶつかり合う国際ルールというのはスポーツでもTPPでも「自国に甘く、外国に辛く」というのが基本原則なので、その意味では「米国乳製品輸出協会」はその原則通りのことを主張していると言えます。だから、ルール作り競争で自信がなくて相手に負けそうなら、「堂々の退場」ではありませんが参加しないという「不参加オプション」も、当該分野で日本が存在感をもち、複数の他者に対して十分に強い影響力を持つ場合は有効です。

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