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2013年6月28日 (金)

原子力発電の原価?

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『原発稼働との関連、明示を』『北電値上げの説明、消費者庁が要求』『消費者庁は25日、北海道電力の家庭向け電気料金の引き上げ申請に関し、確認項目を公表した。原価のうち、・・・原子力発電所(泊村)の減価償却費などが増えているため、値上げと原発稼働の関連性を分りやすく説明するよう求めた。』(日本経済新聞・北海道経済 2013年6月26日)

上に引用した部分以外の記述を含めると原子力発電関連の記事に少なからずあることですが、内容がよく理解できません。記者がよく理解せずに書いたのか、あるいはもともと曖昧なものを曖昧なままにまとめたのか。要は、値上げ申請の根拠となっている「原価」の中身を消費者庁は精査したいということらしい。原子力発電に関して電力会社の発表する原価と云うのは実際のところよくわからない。

火力発電や原子力発電といった電源別の発電コストの分析や比較に関する資料で、僕が今まででもっとも納得できるのが「内閣府 第48回原子力委員会定例会議」(平成22年9月7日)の配布資料のひとつである「原子力政策大綱見直しの必要について-費用論から見た問題提起-」(立命館大学・大島堅一教授)です。平成22年9月7日は、平成23年3月11日の福島第一原子力発電所の爆発事故の半年前。そういう時期に提出された資料なので、福島原発事故へのバイアス(どちらの方向へのバイアスかは別にして)には影響されておらず、冷静な評価になっています。

まず、「電力各社の有価証券報告書総覧」という市場公開データから作成した「電源ごとの発電単価(発電コスト)」です(当該資料の7ページ)。揚水(ようすい)発電などというものを気にしなければ、火力よりは原子力が有利というメッセージになっています。

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ちなみに、電力9社の中で原子力発電への依存度が高かった電力会社という意味で、北海道電力と関西電力の電源別の相対コストを比べてみます(北海道電力は僕にとって地元の電力会社という意味もある)。使った資料は平成21年度の両社の有価証券報告書。その中に、電源別発電費や電源別電力量が記載されています。北海道電力に関しては、平成21年度でも原子力発電はとくに有利な選択肢ではなかったようです(わずかな違いが重要と云われたらその通りですが)。

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さきほどは揚水発電などというものは気にしなかったのですが、水力発電の一部である揚水(ようすい)発電に関する建設費用や運用費用を原子力発電の付帯設備費用・付帯運営費用とすると、(なぜなら、原子力発電の安定運用を支援することが揚水発電の主たる目的なので)、つまり、「広義の原子力発電」=「狭義の原子力発電」+「揚水発電」と考えると、原子力発電は必ずしもコストの安い選択肢ではないと云うことになります。というか、最もコストの高い発電方式だということがわかります。

さて、電気料金のコスト(原価)の内訳は以下のようになっています(当該資料の4ページ)。

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電源別の原価というものを、平成22年の時点で、国民の税金が投入されていることが明瞭な項目、上の図でいうと「③国家からの資金投入(財政支出:開発費用、立地費用)<一般会計、エネルギー特別会計から>」を加えて再計算すると以下の図のようになります。つまり、算出プロセスが「広義の原価」というよりフェアな方向に変化すると、原子力発電のコストの高さ(単独でも揚水発電と組み合わせた場合でも)がますます目立ちます(当該資料の15ページ)。

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基本的な問題は、「①発電に直接要する費用(燃料費、減価償却費、保守費用等)」にもあります。以下はある新聞記事の引用です。

『原発廃炉費用、電気料金に上乗せ検討』『経済産業省は原子力発電所の廃炉を進めやすくするため、電力会社の会計規則を見直す方針を固めた。いまは原発を40年超運転するのが前提で、途中で廃炉にすると巨額の損失が出るうえ電気料金で回収できない。損失を複数年に分けて計上することを認め、料金で回収できるように改める。原発の安全規制の強化で廃炉を迫られる原発が相次ぐことに備える。』(2013/6/1 日本経済新聞)

コストのかからないと電源だと主張してきた原子力発電が、仮説と違った事態に遭遇したので、今後は電気料金を押し上げることになるという意味の記事です。

しかし、もっとも大きな問題は、上図の「④ 事故に伴う被害と被害補償費用」で、これを福島原発の事故という経験値をふまえて「まじめに」考えると原子力発電というプロジェクトは、投資収益という観点では成立しません。だから、日本で今まで原子力発電所が稼働していた、今でも一部で稼働していると云うことは、あいかわらず「まじめに」とは云いがたい形で収益算定が行われていると云うことです。

今後のやっかいというか常に不透明さがつきまとう問題は、「エネルギー政策の費用の考え方」における赤線で囲った部分です(赤線は「高いお米、安いご飯」)。

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政府や電力会社の話では、バックエンド費用(使用済燃料再処理費用や放射性廃棄物処分費用など)をどこまで「まじめに」原価に反映して、あいかわらず原子力発電が安いと云っているのかよくわかりません。放射性廃棄物の処理というのは超長期の未来からの視点が必要とされるプロジェクトで、日本においてその方針や計画は、僕の知る範囲では、明確ではありません。そういう状況でどんな数字が、現在、各項目に代入されているのか。

我が家では北海道電力から毎月「電気ご使用量のお知らせ」が届きますが、そのお知らせの下の方に次のような、火力発電や再生可能エネルギー関連の(追加)請求項目と金額が丁寧に記載されています。たとえば2013年6月分(5月8日から6月4日)の場合は、

・燃料費調整単価(1kWhにつき)  当月 0円43銭  翌月 0円58銭
・太陽光発電促進付加単価(1kWhにつき)      当月 0円02銭
・再エネ発電賦課金単価(1kWhにつき)         当月 0円35銭

となっています。

北海道電力は原子力発電にこだわりが強いようですが(「脱原発提案を否決 北海道電力株主総会 社長『再稼働不可欠』」 北海道新聞 2013年6月26日)、原子力発電と他の電源をフェアに扱うなら、上記項目のすぐ下に、たとえば次のような項目が記載されていないとおかしい。そうすれば、電力消費者は原子力発電のコストを他の電源コストとより客観的に比較できるようになります。

・原子力発電・使用済燃料再処理費用(1kWhにつき)  当月 ◇円◇◇銭
・原子力発電・放射性廃棄物処分費用(1kWhにつき)  当月 ◇円◇◇銭
・原子力発電・廃炉費用(1kWhにつき)           当月 ◇円◇◇銭

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